AIの登場と浸透により、わたしたちの仕事はどう変わっていくのでしょうか?
Business Insider Japanの統括編集長・浜田敬子さんをモデレーターに、ヤフージャパン Yahoo!アカデミア学長/ウェイウェイ 代表取締役CEOの伊藤羊一さん、VISITS Technologies 代表取締役CEOの松本勝さん、CAMPFIREでコミュニティマネージャーとセールス&プロモーションを担当する山中ファンキー直子さんが、「消える仕事、残る仕事」をテーマにトーク。
セッションには、これから仕事をしていくうえでのヒントが散りばめられていました。
※セッションは2018年11月29日・30日に、ビジネスカンファレンス「MASHING UP」にて行われました。
電卓が登場したときも、すべての仕事が奪われたわけではない
セッションの冒頭、浜田さんは、学生の就職先として、銀行の人気が下がったという話を紹介します。「AIの台頭で、ホワイトカラーの仕事がなくなると考える人が増える一方、人工知能の専門家でも意見が分かれている」としたうえで、「かなりの仕事がなくなりますか」と登壇者に問いかけました。
これに対し、人材業界におけるデジタルシフトを背景に、採用マーケティング・分析サービスなどを展開している松本さんは、「ルーティンワークはなくなり、仕事の内容は変わるでしょう」と返答。しかし、「見方を変えればポジティブに捉えられる」とも続けました。
VISITS Technologiesの松本 勝さん。
「AIはすごいもののように思えますが、ざっくり言えば、膨大な連立方程式を解いているだけです。電卓が出てきて、困る人はほとんどいなかったように、機械が仕事の一部を代わりにやってくれるようになる。つまり、ルーティンワーク以外の仕事をする時間が今より確保できるようになる、ともいえます」(松本さん)
また、AIは感情的なことは苦手なので、他者への配慮や、数式化できないクリエイティブな仕事は人間ならではの強みになるといいます。
パスをまわす者にこそ、パスはまわる
フリーランスの活動を経て、CAMPFIREに入社した山中さんは、クリエイティブなキャリアを踏み出す一歩として、大学卒業後は企業のサイトなどを作って報酬をもらいながら、海外放浪をしていたといいます。その後、Webマガジンの編集や企画店舗のコンテンツプロデュースを経験。
CAMPFIREの山中 ファンキー 直子さん。
そんな自身の経歴を「自らフリーランスになろうと思ったというより、 所属していた会社が突然倒産したことが転じて、自然とそうなりました。個人で色々な 仕事を受けはじめたら自分の好奇心を追求するようになって、フリーランスの働き方をしていた」と振り返ります。
そして現在は、その頃の取り引き先のひとつである、CAMPFIREの社員に。山中さんは、クラウドファンディングという土俵で働く人として、またフリーランス経験者として、「パスをまわす者にこそ、パスがまわってくる」と語ります。仕事が舞い込んだり、資金調達に成功する人は、 何かをもらおうとする前に、まず自分ができることや価値をだれかに提供している、 そういう人ではないかと分析しました。
これまで社会へ与えてきたことが、これからの人生を切り拓くチャンスをもたらす。つまり、誰かに力を貸すことを通して社会と関わることは、やがて自分が挑戦する際に協力者が集まったり、才能を見つけたりしてくれる人との出会いにもつながっていくと会場へ呼びかけました。
過去を振り返り未来を見つめる
伊藤さんは、AIが浸透しつつある社会に対応するために、誰もが実践できることについて言及。まずは「まわってきた仕事を全部受けること」。そしてそのうえで、「自分はどういう人生を送ると幸せなのか」を理解し、「自分の軸を考えること」が大切だといいます。
ヤフージャパン / ウェイウェイの伊藤羊一さん。
大学卒業後に銀行に入行した伊藤さんは、そこで融資などを経験。その後、流通の会社に転職し、今は Yahoo!アカデミア で学長をしながら、自身で会社を運営し、事業開発や起業サポート、リーダー育成などをしています。
「わたしのキャリアに一貫性はないですね。自分で自分のキャリアを選んでいない。足元に落ちてきた仕事を全部ひろってきたんです」と語ります。
そんな中で、“自分の軸”を知るにはどうしたらいいのかという問いに、伊藤さんは「過去を振り返ること」を提案。その理由は、これまで歩いてきた道を理解することは、いま大切にしている思いを発見することであり、そこから、未来にどうしていくべきかという方針が見えるといいます。
まずは、飲み会の幹事から
Business Insider Japanの浜田敬子さん。
最後に、「それでも何をやればいいのか分からない」という人のために、浜田さんは、すぐに実践できる方法として「飲み会の幹事をやりましょう」と提案しました。
参加者のスケジュール調整など多方面に配慮する必要があるので、意外とスキルが必要だそう。
自分が何をすべきかわからない、まだ足元にも仕事が落ちていない、という人はまず、人のために何かをしてみる。その経験からコミュニケーションが生まれ、新しい仕事につながることもあるかもしれません。
伊藤 羊一さん(ヤフージャパン Yahoo!アカデミア 学長 / ウェイウェイ 代表取締役CEO)
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月ヤフーへ。 企業内大学Yahoo!アカデミアの学長としてヤフーの次世代リーダー育成を行う。 グロービス客員教授、ウェイウエイ代表として、ヤフー以外でも活動。
松本 勝さん(VISITS Technologies 代表取締役CEO)
東京大学大学院修了後、ゴールドマンサックス入社。金利オプショントレーディングの責任者を経て、2010年人工知能を用いた投資ファンド設立。2014年には、VISITS Technologies設立し、人のアイデア創造力、目利き力、アイデアの価値を独自の合意形成アルゴリズムにより定量化する特許技術「ideagram」を開発。世界中の社会課題とそのソリューションの可視化を、独自のマイニング技術とブロックチェーンによりリアルタイムに実現する研究を行っている。元文部科学省委員、早稲田大学講師。
山中 ファンキー 直子さん(CAMPFIRE コミュニティマネージャー、セールス&プロモーション)
日本最大級のクラウドファンディングCAMPFIRE・コミュニティマネージャー兼法人担当。 挑戦者のコミュニティづくりと、法人の資金調達とPR活用を推進する。渋谷をつなげる30人メンバー。 東京生まれ。大学卒業後海外を放浪、帰国後アート×ファッションを横断するクリエイターメディアに参画。WEBデザイン・店舗企画・ムック本編集・SNS動画制作などコンテンツを生かしたコミュニティづくりを行う。2016年から現職。社外活動ではGIRL'S MeeTALKを主宰し、女性起業家・クリエイターのプロジェクト実現を後押しする。
浜田敬子さん(Business Insider Japan 統括編集長)
1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集部。女性の働き方雇用問題、国際ニュースを中心に取材。副編集長、編集長代理を経て2014年から編集長。ネット媒体とのコラボや外部プロデューサーによる1号限りの「特別編集長号」など新企画を連発。16年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。「働くと子育てを考えるWORKO!」「Change Working Style」などのプロジェクトを立ち上げる。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の水曜コメンテーターなども務める。
MASHING UP
消える仕事、残る仕事
11月30日@TRUNK(HOTEL)
撮影/酒 航太

この記事に関連する人
イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。