2018年11月29日・30日に行われたMASHING UP。星野リゾートの星野佳路さんが『日本発ブランドを作りあげるためのビジョン、そして戦略』というテーマで、トークセッションを行いました。クリエイティブスタジオとして知られるSAMURAIの佐藤悦子さんが司会をつとめます。
人生には時間制限があるから
「スキーが自分にとって大事なアクティビティ」という星野さん。人生の残り時間を意識すると、今までもこれからも続けることのできる仕事に比べ、スキーは、より身体が若い今のうちに体験しておかないと後悔すると思ったそうです。それ以来、雪が降るシーズンにはできるだけ雪のある地域へ行けるかどうかを考え、年間60日は滑ることを目標にスケジュールの調整をしている、と話しました。
自分が現場を離れても、今は電話会議などで必要な会議には参加できる。仕事をしながらもスキーに行けるのは、インターネットの発展のおかげ、と星野さん。
そんな星野さんと話しながら、佐藤さんは「経営者は孤独で、自分の本当の思いを会社全体になかなか理解してもらえないことが多いですよね。“星野さんはスキーばっかりやっているから”と批判されそう、と思ったりされませんか」といいます。
たしかに、経営者がスキーを優先したスケジュール調整をしていることに対して、批判的な意見が出ることもある、と星野さん。
それでも星野リゾートらしさを維持できているのはなぜでしょうか? それは、フラットな組織作りにあるようです。
経営者も、現場のスタッフも。責任は半分ずつ
星野リゾートの星野佳路さん。
星野リゾートでは、ケン・ブランチャードの『エンパワーメント』という論文を基盤とした経営を行っています。「経営者が現場のすべてを理解してきれていないのは当然。それが問題になることが問題」としたうえで、「わかっていない人に決定権が集中しないために、会議で言いたいことをいえる環境を整備している」といいます。
星野さんは、「“偉い人信号”をなくしていこうとしています。私には個室オフィスもなければ決まったデスクも持っていません。現場の支配人も同様。集合写真の並ぶ順序もきまっていません」
ボトムダウンでもなく、ボトムアップでもない環境。つまり経営者も現場のスタッフもお互いに意見を述べることができる環境が、フラットな組織です。それは、妥協した権限委譲でもなく、現場の声を聞くということでもなく、経営者も現場のスタッフも責任を互いに受け持つ環境であるといいます。
環境さえ整えば、組織はフラット化する
SAMURAIの佐藤悦子さん。
「現場の声を聞いて意見を変えることもありますか?」と佐藤さんは聞きます。
「“聞く”というよりは、議論のなかで都度確認していきます。実行するなら自分で責任をとってもらいたいと思っているので……。私はフラットであることは、マネジメント側にとっても、議論する側にとっても、ストレスがなく良いことだと思っています」と星野さん。
このフラットな関係性は、スタッフだけでなく投資家に対しても同様で、自分たちにとってゆずれない線があれば、極端な話「これができないなら私はおります」という覚悟も時には必要だという。全てに対して対等な関係を築くことが大事だと、星野さんは考えているようです。
フラットな組織の環境を整えれば、「意見を言う人もいれば言わない人もいる。そこはあまり気にしないでいいと思っている」として、「誰かがキレて暴言を吐く、というようなことがきっかけとなり、意見が言いやすい組織になっていく」こともあると星野さんはいいます。
「“事件”が重なることで、組織はどんどんフラットになっていく。みんなフラットになりたいと思っているから、環境さえ整えればいい。それが私のメソッドだと思っています」という経営論を明かし、多くの参加者が納得しました。
星野 佳路(星野リゾート)
1960年、長野県軽井沢町生まれ。1983年、慶應義塾大学卒業。1986年、米国コーネル大学ホテル経営大学院にて修士号を取得後、1991年、星野温泉旅館(現星野リゾート)4代目社長に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業において、いち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。 現在の運営施設は「星のや」「界」「リゾナーレ「OMO」の4ブランドを中心に、国内外38カ所に及ぶ。2013年、観光に特化した不動産投資信託、星野リゾート・リートを立ち上げ、東京証券取引所に上場させた。
佐藤 悦子(SAMURAI)
1969年東京生。早稲田大学教育学部卒業後、広告代理店、外資系化粧品会社経て、2001年よりクリエイティブディレクター佐藤可士和率いる「SAMURAI」のマネージャーとして、数々の企業のブランド戦略、空間プロデュース等、時代の空気を表現しクリエイティブの新しい可能性を提示するプロジェクトに関わる。著書に『SAMURAI佐藤可士和のつくり方』(誠文堂新光社)、『佐藤悦子の幸せ習慣』(講談社)ほか。
MASHING UP
日本発ブランドを作りあげるためのビジョン、そして戦略
2018年11月30日@TRUNK(HOTEL)
撮影/酒 航太

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