会社員、社会人、妻、母、娘、恋人——。年齢を重ねるとともに、知らず知らずのうちに増えてくるさまざまな役割。理想とする人生を送るためには、自分というリソースをどう活用するべきなのでしょうか。2018年11月29日・30日に開催されたビジネスカンファレンスMASHING UPでは、「キャリアアップは『役割の棚卸し』から」というセッションが行われました。
役割は絡んだコンセント
今回のセッションは、オーガニックの食品会社 ブラウンシュガー1STを経営する荻野みどりさんの著書『こじらせママ 子育てしながら年商7億円』(集英社)にも登場する「役割」というキーワードから生まれました。
「役割というのは絡み合っていて、絡んだコンセントのよう。そこから不満やモヤモヤが出てくる」。それぞれの役割の棚卸しをすることによって、自分自身の人生を客観視でき、やるべきこと、やらないことが明確になると荻野さんは言います。
ブラウンシュガー1STの荻野みどりさん。
JapanTaxiで取締役常務執行役員CMOを務める金高恩さんは、高校生の時に韓国から来日し、IT業界で働くかたわら20代で結婚、35歳で出産を経験。30代前半までは男性と肩を並べて、プライベートも顧みないほど忙しく働いていましたが、今は子どもが大きくなったときの未来を考えるようになり、「社会のインフラを変えることで、よりよい未来をつくりたい」という目標に行き着きました。
JapanTaxiの金 高恩さん。
モデレーターを務める読売新聞の笹原明代さんは、セッションにあたって「棚卸し」の意味を改めて調べてみたそう。棚卸しとは、「手持ちの商品、原材料の種類、数量などを調査し、価格を評価すること」。
「棚卸しって在庫一掃セールだっけ?と思ってたけどそうではないんですね(笑)。原材料=自分、価格の評価=優先順位と捉えて、自分がどういう人間なのかをよく考えて、優先順位を決める、ということかもしれませんね」と述べました。
読売新聞東京本社の笹原明代さん。
役割と優先順位を書き出してみよう
登壇者3人が、現在までの年代ごとの優先順位を教えてくれました。荻野さんの現在の優先順位は、
1. 母親 2. 経営者 3. 女性
「20代の時は長男の嫁、母、娘、さらにさまざまな事業に手を出して、色々な看板(役割)を持っていてとっちらかっていた(笑)」と荻野さん。自分自身がどうしたいかというのは脇において、親や周囲の期待に答えようと、求められるままに多くの役割を手に入れていたそう。
そのうち役割に縛られて「自分で自分が何者なのか分からなく」なり、ある時点で「役割の棚卸し」をしてみてから、納得する役割分担を模索するようになった、と振り返ります。
子どもができてからは、子どもが生きる未来について考えるようになり、それが現在の仕事にもつながっているため、1位の「母親」と2位の「経営者」は密接に結びついているとか。また、3位の「女性」に関しては「外見重視よりも『内なる美しさ』を目指したいと思っています」と語りました。
金さんの現在の優先順位は、
1. 母親 2. 経営者 3. 妻
30代前半までは深夜まで働いて毎日タクシー帰り、というほど仕事に没頭していたのが、出産してからは「びっくりするくらい優先順位が変わってしまった」そう。「会社は私がいなくても回るけど、子供は私がいなったら死んでしまう」と肌で感じるようになったといいます。
自分の役割は常に変化するけれど、「今は妻としての役割が少々抜けているかも」と、子ども優先になったことを優しい笑顔で話します。
自分ファーストでいこう
今年勤続30年になる笹原さんは、50歳目前で突然、「私って空っぽじゃない?」と感じたといいます。
「今までは会社と家族が生活の中心だったけど、子どもも大きくなったし、これからは自分ファーストで生きてみよう」と決意し、社会人コミュニティに参加したり、大学院に入学したりと学びの時間を増やしているそう。以前は「会社員」や「母親」としての役割が最優先でしたが、現在は
1. 社会人 2. 母親 3. 女性
人生の持ち時間を意識することも、棚卸しの大事なポイントなのかもしれません。
さて、後半はワークショップ。参加者の皆さんも「役割の棚卸しワークシート」に役割を書き出し、それぞれ【求められてること】【現状】【本当はどうしたい?】【優先度】をひもといていきます。笹原さんは、役割が8個もあったそうですが、参加者の多くはだいたい3〜4個。ワークを通して気づいたことをテーブルごとにシェアします。
参加者のひとりで会社員の女性は「結婚が決まり、仕事をどうするか迷っていたところだったので、タイムリーないい話を聞けました」と何か吹っ切れたように話してくれました。
自分が抱えている役割を整理し、優先順位を考えるだけでも、自分にとって何が重要か見えてきます。役割ごとに周囲から求められているもの、自分が求めるものを知れば、行動にもきっと変化が訪れるはず。分かっているようで分かってない自分を見つめるきっかけになったセッションでした。
荻野みどりさん(ブラウンシュガー1ST 代表取締役社長)
2011年第一児出産後、「わが子に食べさせたかどうか?」を基準に食材を厳選するお菓子ブランド「BROWN SUGAR 1ST.」を立ち上げる。東京・青山の国連大学前のファーマーズマーケットにてお菓子を販売する中で、原材料としての油脂選びの大切さに気づき、ココナッツオイルに出合う。日本のココナッツオイルブームをけん引。現在、ココナッツオイルをはじめとした、有機食品を全国の百貨店、スーパーにて取扱い中。また、現在母乳をテクノロジーでアップデートする、BONYU事業をスタートしている。
金 高恩さん(JapanTaxi 取締役常務執行役員CMO)
父の仕事で日本に来て26年。Cyberagent、netprice、Yahoo!JAPAN、FashionWalkerで新規事業や会社の立ち上げ、プロデュース業務を担当。その後、独立して多業種の企業の事業立ち上げをお手伝いした後、ファウンダーとして会社を立ち上げる。2015年JapanTaxiへ入社。現在はJapanTaxiのCMOとして、プロモーション全般および新規事業の立ち上げを担当するほか、タクシー車両搭載の広告タブレットを展開する株式会社IRISの代表取締役社長を兼務。
笹原明代さん(読売新聞東京本社 メディア局編集部次長・OTEKOMACHIビジネスプロデューサー)
1989年読売新聞東京本社入社。広告営業、イベント企画、映画出資事業などを経て、現在はデジタルメディア事業部門で、働く女性のための情報ウェブマガジン「OTEKOMACHI(大手小町)」編集部に所属。
MASHING UP
キャリアアップは「役割の棚卸し」から
11月30日 @TRUNK(HOTEL)
撮影/俵和彦

イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。