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「ぶかぶかの仕事着」はもういらない。女性シェフたちの小さな革命

The New York Times

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パティシエのナターシャ・ピッコウィッツさん。2018年12月6日、ニューヨークのFlora Barで。(Nicole Craine/The New York Times)

パティシエのナターシャ・ピッコウィッツさんはいつも仕事着にイライラさせられていました。ぶかぶかの上着とズボンを制服とするレストランが多かったからです。「ユニセックスなんてウソばっかり。男性用に仕立ててあるんだから」とピッコウィッツさん。

だぶついた仕事着はみっともないだけでなく、作業の邪魔にもなりました。「シャツがずり落ちて作業中の皿についてしまったり、長い裾を引きずって転んでしまったり」したとピッコウィッツさんは言います。

「コックコート」は時代遅れ?

料理人の仕事着といえば、19世紀のフランスで定着して以来、縦二列のボタンがついた白い上衣の「コックコート」です。料理人という職業に性別は関係ないはずですが、コックコートはもともと男性用の上衣として作られました

しかし、近年では、上下関係を意識した制服よりも、体型、サイズ、性別を問わない着心地に優れた仕事着を採用する経営者やシェフが増えてきました。

着心地とファッション性を重視したブランド誕生

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Hedley & Bennettの創業者のエレン・ベネットさん。2019年1月7日。(Lisa Corson/The New York Times)

最近の#Me Too運動などの影響もあり、料理界には男性中心主義から脱しようとする動きがあります。飲食店の制服を専門とするアパレル・ブランドのHedley & BennettTilitPolka Pantsもそんな風潮を反映して、着心地とファッション性の両条件を備えた仕事着を提案します。

三社に共通するのは、いずれも業界経験者が「厨房の仕事着の悩みを解消する」ことを使命に、約6年前に創業した点です。ロサンゼルス発のHedley & Bennettと、ニューヨーク・シティ発のTilitは、全デザインについてレディースとメンズのサイズを複数用意し、多様な体型に対応しています。

ありそうでなかった「サイズの充実」がようやく実現

Tilitの創業者のアレックス・マッククレリーさんは、妻のジェニー・グッドマンさんと起業しました。「レディースのXSからメンズの4XLまで、サイズを充実させるのは簡単なことだった」とマッククレリーさんは言います。また、Hedley & Bennettの創業者のエレン・ベネットさんは、色々な体型に合うように、「Big」シリーズを始めとするエプロン商品をデザインしたと言います。

料理人が支持する洗い場係のシャツ

冒頭に紹介したピッコウィッツさんがマンハッタンのCafé Altro ParadisoとFlora Barに勤めていた際に見出した解決策は、スナップボタンが縦一列についた「ディッシュウォッシャー・シャツ」でした。このゆったりした白い半袖シャツが、掃除や運搬、皿洗いといったレストランの汚れ仕事を引き受ける洗い場係の専用ユニフォームだったのは昔の話。

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パティシエのナターシャ・ピッコウィッツさん。2018年12月6日、ニューヨークのFlora Barで。(Nicole Craine/The New York Times)

マンハッタンとブルックリンに店舗を置くMission Chinese Foodの有名シェフ、ダニー・ボーウィエンさんも、このディッシュウォッシャー・シャツを10年前から着るようになりました。ロサンゼルスのレストランKismetでも、スタッフの大半は涼しくて動きやすいこのシャツを愛用しています。オーナーシェフのセーラ・クレイマーさんも、このシャツの費用対効果の高さを評価しています。

活躍する女性シェフの仕事着は……

クレイマーさんは、その他にも白地と黒地のTシャツとジーンズも仕事着としてローテーションに入れています。「オーバーオールみたいなシェフらしくない格好をすることもある」とクレイマーさんは言います。

サンフランシスコのAtelier CrennとBar Crennを経営するドミニク・クレンさんは、アメリカ人女性として初めてミシュランの三つ星を最近授与されたシェフです。そんな彼女も慣習をしばしば無視し、普段着にエプロンという姿で厨房に立っています。

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ドミニク・クレンさん。アメリカ人女性として初めてミシュランの三つ星を授与された。2017年2月4日、サンフランシスコで。(Matt Edge/The New York Times)

歴史だけは長いコックコート

料理人の制服である「コックコート」の起源は定かではありません。バーモント大学教授で『Haute Cuisine: How the French Invented the Culinary Profession』の著者であるエイミー・トゥルーベックさんによると、1800年代の他業種の制服の多くと同様、料理界でも白いユニフォームが生まれたのは「白=純潔、衛生、清潔」という19世紀的な考えが背景にあったからだとか。今では硬くて吸水性の低いポリエステル生地が一般的なコックコートですが、着心地や実用性はいまひとつ。それにもかかわらず、200年近くも標準的なユニフォームとして存在してきました。

女性シェフ待望のPolka Pants

不恰好で体に合わない仕事着を変えたいという思いから、調理師をしていたマキシーン・トンプソンさんはPolka Pantsというブランドを立ち上げました。女性調理師のために、丈夫でスタイリッシュなズボンを提供しています。「ユニセックスのズボンはどれもバカみたいにぶかぶかで、丈の半分をまくるか、ウエストを引っ張り上げて、胸の下で結びでもしなければ履けなかった。『なんでこんなぶざまな恰好をしないといけないの?』と思っていた」とトンプソンさんは過去を振り返ります。

服飾の学位を持っていたこともあり、トンプソンさんは体のラインを綺麗に見せるハイウエストのパンツを自分のために縫い始めました。今では背丈の異なる女性のために、デザインごとに二つの丈を用意して販売しています。

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【写真左】調理師をしていた経験から、Polka Pantsを立ち上げたマキシーン・トンプソンさん(Handout via The New York Times)【同右】ロンドンのThe River CaféでPolka Pantsに身を包むシェフたち(Lydia Garnett via The New York Times)

レトロなデザインが新しいHer-loomエプロン

トンプソンさんが「これからの女性料理人」をイメージしてデザインしたのとは対照的に、エプロン・ブランドAOSbySosaの代表を務めるシェフのアンジェロ・ソーサさんは昔のデザインを参考にして初の女性用エプロンを創作しました。1930年代のデザインにヒントを得たHer-loomというエプロンは、昔ながらのフィット感で、女性のために胸当て部分を広く取ってあります。「太めの肩ひもを背中で交差させることで、しっかり上体を包み込み、身体に馴染む程良いストレッチ素材を使っている」とソーサさんは言います。

なぜ今になってコックコート離れが?

それにしても、格式張った白いコックコートからの転換がなぜもっと早く、例えば20年前にも起きなかったのでしょう?「オープンキッチンの普及に負うところが大きい」と指摘するのはトンプソンさん。もはや料理人は「縁の下の力持ち」的な存在ではありません。近年、調理スタッフも給仕スタッフ並みに人目にさらされるレイアウトのレストランが多くなりました。料理人が自ら客席に料理を運ぶことすらあります。

それから、カリスマ・シェフやインスタグラム、料理番組などの影響で料理人の存在感が高まった、とグッドマンさんは指摘します。また、厨房で働く人たちの重要性が見直されるようになり、働き手側に自負心が生まれ、仕事着の改革につながった、というのはベネットさんの弁。

トゥルーベックさんは「フランス至上主義の終わりが来た」と分析します。フレンチ・レストランをモデルとする厨房のあり方を改めるレストランが増えたために、伝統的な仕事着も廃れたというのです。

快適な仕事着は、新しい職場文化の象徴

ピッコウィッツさんにとって、よりカジュアルな仕事着は、これまでの男性社会的な職場体質の終わりを意味しています。「そういった伝統にこだわる人はずっといると思う。でも慣習にとらわれない人が出てきているのを見ると、とても力づけられる」

© 2019 The New York Times News Service[原文:Kitchen Couture Gets an Update/執筆:Khushbu Shah](翻訳:Ikuyo.W)

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渡邉育代

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