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- 自分と真摯に向きあえば、2045年は自ずとやってくる/石川善樹さん[後編]
来るべき日に向けて、今できることを明確にし、明るい未来を切り拓くための連続インタビュー[LIFE after 2045]。前編、中編に続いて石川善樹さんに「ウェルビーイング(人がより良く生きるとは何か)」の気づきを得られるヒントを教えてもらいました。
人が“生きる”とは何なのか?
——今後をよりよく生きるために、カフェグローブ読者へすすめたい作品はありますか?
石川:ひとつは映画作品で、是枝裕和監督の『ワンダフル・ライフ』(1998年)です。
様々な理由で亡くなった“死者”たちが死後の世界へと旅立つまでの間に、ある場所に集められて「あなたの一番大切な思い出をひとつだけ選んでください」と言われます。その思い出のひとつひとつが映像として再現され、その記憶が“死者”たちの脳裏に鮮明に蘇った瞬間、彼らはその「一番大切な思い出」だけを胸に、死後の世界へと旅立ってゆく……という話です。
——「あなた自身の問題は何ですか?」という、石川さんの問いに近いものがありますね。
石川:普段はどうしても目先のことで精一杯になりがちですが、人生という長い目で自分のことを考える、良いきっかけになります。良いことも悪いことも含めて、自分の人生をしみじみと振り返らせてくれると思います。
もうひとつは、ノンフィクション作家の上原隆さんの著書『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫/1999年)です。短めのノンフィクションがいくつか収録されています。
「普通の生活を送っていた人が、ある日大事故に遭って障害を背負ってしまう」とか、「その人の出自からくる境遇によって、深く傷つけられてしまった」とき、彼/彼女はどのようにして自尊心を取り戻すのか? 自分自身のことをこれっぽっちも肯定できない状態に陥った人たちが、どうやってそこから立ち直っていったかが、描かれています。
たとえば本の中には、自分の容姿に自信がないことで、45年間一度も男性と付き合ったことのない女性が出てきます。 その状況と向き合っていった結果、最終的に彼女が取った行動が、とても興味深かったです。
こうやって「苦しんでも立ち直れるんだ」というエピソードを読んでゆくと、今の自分が抱えている悩みなんて些細なことというか……仮に何か最悪と思われるような事態に見舞われても、きっとそこから立ち直れるんだと思わせてくれます。
映画『ワンダフル・ライフ』も、書籍『友がみな我よりえらく見える日は』も、「人が“生きる”とは何なのか?」をしみじみと体感させてくれる作品なので、どちらも超おすすめです。
——最後に、シンギュラリティを迎えるといわれる2045年に向けて、読者へアドバイスを。
石川:しいて言えば「2045年のあなたは、あなたにしか決められないのだ」ということでしょうね。“自分の問題”を見つけて、それに無我夢中に取り組んでいたら、気づけば2045年になっていると思います。
そして、日々の体験や作業におけるやりがいの有無で、それらを簡単に切り捨てるのではなく、そうした些細な日々の体験を通してこそ、“自分の問題”が初めて浮かび上がってくるのではないでしょうか。なので整理すると、与えられた自分と向き合って生きていく、それしかないような気がします。
石川善樹(いしかわ よしき)さん/予防医学研究者
1981年生。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か(ウェルビーイング:Well-being)」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。
聞き手/カフェグローブ編集部、撮影/中山実華、構成/木村重樹

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