人生には思いもかけないトラブルに、突然見舞われることがあります。努力だけでは補いきれない不意の出来事が起きたとき、人はどんなことを気づき、生き方を見直していけば良いのでしょうか。
ジュリアン・サンドレル著『ルーム・オブ・ワンダー』は、刊行前に世界20カ国以上で出版が決定したという話題作。デビュー作にしてフランスでベストセラーとなった現代小説です。
著者は、パリ在住の二児の父。子どものころから文学の世界に惹かれながらも理系に進学し、アグロ・パリ大学で工学の学位を取得。その後、パリ第9大学でマーケティング戦略の博士号を取得して、多国籍企業を転々としつつビジネス経験を積んでいきます。
文学に染まった形跡がない、新しいタイプの書き手であるといえるでしょう。
シングルマザーである主人公の生きがいは、息子と仕事
本著の主人公テルマは、一流企業においてマーケティング・デイレクターとして働く30代後半のシングルマザーで、息子のルイは12歳。彼女の生きがいは、いうまでもなく息子と仕事です。
キャリアを高めることと息子のために、取り巻くセクハラやパワハラにも負けずに励み続けます。夢中で働く彼女は、息子との時間を削ってしまうこともありました。
そんな彼女の生活を一変させたのは、目の前で起きた息子の交通事故だったのです。
不慮の出来事で生活が一変。それから彼女は……
シリアスな題材を扱ってはいるものの、それだけが本著の魅力ではありません。
主人公は、はめを外して、ときには危うい橋を渡りつつも、じつに躍動的。息子の目線で綴られた言葉や風景もまた、ウイットに富んでいます。
主人公は、昏睡状態に陥った息子を前に、仕事を優先してきたこれまでの人生を大いに悔やみます。そんなある日、彼女は息子が書いていたA5版の小さなノート「僕の不思議な手帳」を部屋で見つけて……。それを読んだ瞬間から、彼女の人生は少しずつ変わっていくのです。
仕事に振り回される毎日を送っているとしたら、本当に大事なことが何なのかわからなくなってしまうことも。海外で話題の小説を通して、改めて生き方を見直してみるのも良いのではないでしょうか。
ルーム・オブ・ワンダー
著者:ジュリアン・サンドレル
発行:NHK出版
定価:1,500円(税別)

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