「シャネル・ネクサス・ホール」で、ユニークな企画展が始まります。北斎漫画の世界一のコレクターとして知られる浦上満さんの珠玉の春画コレクションと、パフォーマンスアーティストであり写真家としても活躍中のピエール セルネの作品とが、一堂に会するのです。
ピエール セルネ「Synonyms(同義語)」シリーズから何を認識するかは、鑑賞者に委ねられている。Kaitlin & John, 2016 ©SP2X
普遍的な「生」を描いた春画
春画は江戸時代に浮世絵の1つのジャンルとして人気を博し、多くの絵師によって数千点を超える作品が制作されました。男女の区別なく愛されたのは、そこに描かれていたのが人間の普遍的な「生」だからだと言われます。
人間の性愛がユーモアたっぷりに描かれた春画は「笑い絵」とも呼ばれた。喜多川歌麿「歌まくら」天明8年(1788)浦上満氏蔵
春画の大胆な構図や色彩は、海を渡り、パブロ・ピカソや印象派画家にも影響を与えました。昨今では大英博物館で春画展が開かれるなど、世界的に注目を浴びているジャンル。本展では葛飾北斎のほか、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿らの作品が展示されるのだとか。
葛飾北斎「喜能会之故真通」(部分)文化11年(1814)浦上満氏蔵
抽象表現から垣間見える普遍的な「性」
一方、ピエール セルネ作品からは、写真作「Synonyms(同義語)」シリーズが並びます。「世界の人びとの間に存在する類似点の探求」を制作主題に掲げるセルネが本シリーズにおいて被写体としているのは、文化的・民族的に異なる背景を持つ、個人やカップルのヌード。といっても、生々しい肉体ではなく、モノクロのシルエットによる抽象形態によって表現されています。
Yumiko & Ana, 2017 ©SP2X
各作品タイトルが被写体の名前となっているため、被写体である彼や彼女の背景を推測することが可能。それぞれ性別も国籍も文化的背景も異なる人物たちのはずなのに、写真に切り取られているのは、性あるいは性行為という人類に共通するテーマ。なんとも不思議な作品です。
「わたしたちは、それぞれ他人とは異なる唯一無二な存在である一方で、普遍的な共通点を持っています。だからこそ、違う文化やライフスタイル、さまざまな人びとをもっと受け入れるべき」(ピエール セルネ)
生を描いた春画と、性を写し出したセルネ。時代も国も超えた作品ですが、両者の対話によって、人間が生きることとは? を考えるきっかけとなるはずです。
ピエール セルネ& 春画
会期:前期2019年3月13日(水)〜27日(水)、後期2019年3月29日(金)〜4月7日(日) / 会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F) / 時間:12:00〜19:30 ※3月28日(木)は展示替えのため休館 / 入場無料

Tag
イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。