去る3月8日の国際女性デーにLUX、MASHING UP 、WeWorkがコラボして、女性の生き方を考える大規模なトークイベントを華やかに開催しました。会場は、東京・渋谷のコミュニティ型ワークスペースとして脚光を浴びる、「WeWorkアイスバーグ」です。平日の午後にもかかわらず多くの方々が駆けつけ、熱気に包まれました。
今回のテーマは「I choose How I Shine-女性の輝きに、限界なんてない」。社会で活躍する女性たちの背中を力強く押してくれるテーマが詰まったトークイベントの魅力を、ピックアップしてリポートします!
まず、OECD(経済協力開発機構)東京センター所長の村上由美子さんが、「日本女性の現状を客観的に見る」というテーマで、さまざまなデータをもとに、日本女性の世界的な立ち位置をレクチャーしてくれました。
男女の賃金格差や雇用形態の差などから、日本の女性たちの役割は多様化したものの、世界に比べれば男女平等への意識は立ち遅れているという現状をわかりやすく教えてくれました。
※村上さんのトークセッションの様子は、後日、別途レポート記事でご紹介します。
OECDの村上由美子さん。
職場でのジェンダーバイアスの“根底”にあるもの
続いて注目されたのが「職場でのジェンダーバイアスを知る」と題して行われたパネルセッション。進行役はWeWorkの日高久美子さんです。
スピーカーは、ヤフー株式会社執行役員会長室長兼コーポレートグループ事業推進室長の志立正嗣さん、Vivid Dream CEO&プロデューサーの黒田三雅さん、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社ヒューマンリソース人事マネジャーの福井茂貴さん。三人とも、それぞれの立場で職場でのジェンダーバイアスの問題に直面した経験を持っているそうです。
ユニリーバの福井さんは「ユニリーバに転職する前は航空会社に勤務していましたが、そこがまさに男性中心の企業体質。しかしグランドスタッフは女性が中心なわけです。組織における男女不平等の“ひずみ”を、一番体感した時代だったかもしれませんね」
黒田さんは子どもを出産後、さまざまな仕事を経験。「専業主婦を経て再び社会へ出る際に驚いたのは、女性の正社員求人がものすごく限られていたこと」と話します。また、現在は働きながら育児にも奮闘するシングルマザーだそうですが、「働くうえで女性への無理解から生まれる言動を耳にするたび、社会は変わらないのではないかと絶望した」と、時おり目を潤ませる場面もありました。
ではなぜ、日本の企業では男女の不平等が改善しにくいのか? それについて、ヤフーの志立さんは「モノ・カルチャー」から生まれた企業体質が原因のひとつだと指摘します。「高度経済成長期、日本はものづくりにおいて男性たちが、同じ時間に同じ条件で同じだけ働き、よいものを作ることで世界に評価されてきたんです」
「そういう中では多様性よりも均質的なものがよしとされていた。そのため、新しい価値観が根付きにくいという現実があるんです。僕はヤフーの“女性活躍担当スポンサー”なのですが、他企業のトップの方と懇談すると“女性活躍なんて国が旗振りをするから仕方なくやっている”という声が聞こえることも少なくない」という驚きの現状が明るみに。
志立さんは「だからこそ、女性活躍とかダイバーシティとか言葉の押し付けだけでは何も変わらない。女性活躍のイノベーションを起こすには、まずプロジェクトなどを立ち上げ、現場の声を上に吸い上げてもらい、社内全体に伝えていくシステム作りなども必要なのではないでしょうか」という提案も。
ユニリーバの福井さんも、「相手を知る前にまず自分をよく知るということも大事かもしれませんね。女性だから、男性だからという枠組みではなく、“自分”のことを深めておくことが相手の立場に立って、理解をしてあげられる近道につながると思うのです」
さらに黒田さんは、「男女不平等の価値観は企業の体質だけでなく、私たちの両親世代の“女性は良妻賢母になるべき”という教育にも起因している気がします。日本の中に根強く存在するのは、そういう社会全体の既成の価値観なのかもしれませんね」
これには会場の女性たちが深くうなずいていました。そしてやはり、皆さんが共通して語るのは、「女性活躍への意識改革のない会社に未来はない」という点でもありました。
左から、ユニリーバの福井茂貴さん、Vivid Dreamの黒田三雅さん、ヤフーの志立正嗣さん、WeWorkの日高久美子さん。
なりたい自分になれているのかという問いかけを
続いて、女性たちがいつまでも自分らしくあるため、「なりたい自分になる」をテーマに、ミス・ユニバースジャパンナショナルディレクターの美馬寛子さん、スノーピーク代表取締役副社長CDO山井梨沙さん、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長島田由香さんが語り合うトークセッションもご紹介。
日本人は恵まれた社会に生まれながらも、自己肯定感や幸福感が低い国民性であることはよく知られています。女性がなりたい自分に近づき、より輝いて生きていくためには何が必要なのでしょう?
すると冒頭から島田さんによる、「お二人はなりたい自分になれていますか?」という質問が!
美馬さんは「私は幼いころには活発すぎて(笑)、ずっと体育の先生になりたいと思っていました。完全になりたかったものと一致しているわけではないのですが、今、ディレクターとして候補生のトレーニングや、日本の美しい文化を広める活動ができているので、“何かを教える人”という意味では“先生”に近い。だから、なりたい自分になれていると思います」
山井さんも「私も美馬さんと一緒で、小さいころから絵を描くのが大好きでファッションデザイナーになりたいなと思っていたんです。ですから、家業のスノーピークを通じて、アパレル事業を立ち上げられたことは、結果的に自分が小さいころに思い描いていた理想に近いのだと思います」
左上から時計回りで、美馬寛子さん、スノーピークの山井梨沙さん、ユニリーバの島田由香さん。
ただ、そんな順風満帆に見える二人にも、人生の葛藤があったそう。
美馬さんは、別のミスコンテストで“日本女性らしくない”と指摘され悩んだり、山井さんも学生時代は校則にしばられたり、会社員時代は組織との価値観が合わず苦しんだりと、鬱々とする日々もあったとか。
そういう中で二人が自信を持って意志を貫き、未来を切り開けたのには、すてきな人生のサポーターがいたからだそうです。
それは、個性を尊重してくれる“母親”の存在だそう。これには島田さんも共感し、「私も母親から◯◯しなさいとか、◯◯みたいになりなさい、と言われたことは一度もないんです。つまり、自分は受け入れられている、という自己肯定感が、社会で自分らしく生き抜く力を育てる、大きな源になっているのかもしれません」との答えを導き出します。
美馬さんは「自分の努力だけでなく、やはり母をはじめ、自分を認めてサポートしてくれる人を得ることは、“なりたい自分になる”うえで大事なのだと思います」と続けます。
また、山井さんも「私も、学生時代に母を突き飛ばして家を出た以外は(笑)、本当に怒られずにいましたね。明らかに悪いことをしないかぎり、基本は私のことを信じてくれていたと思います。親の価値観を押し付けられることなく育ててもらえたことは、今も“自分らしく”いられるベースにつながっているのでしょうね」
3人のストレートなトークに会場からは笑いが起き、“自分らしさ”についての質問が次々と飛ぶなど会場はとても和気あいあいとしたムードに。女性が自分らしく輝くためには、まず個人がそれぞれ自分を信じて幸せに生きることが大切なのかもしれません。
自分でも知らない間に抱いていた「ジェンダーバイアス」を見つけるワークショップや、エネルギッシュなスピーカーの皆さんとフランクに語り合えるネットワーキングパーティもあり、トータルで6時間近いイベントは大盛況のまま幕に。
少しずつでも女性が輝ける社会を目指して、私たち一人ひとり、できることから始めよう——そんな前向きなパワーをもらえるひとときでした!
会場には、女性シェフや女性杜氏が手がけたフードやドリンクも並んだ。
[LUX]
取材・文/齋藤規子、撮影/キム・アルム
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