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映画のサントラを任されるのは男性ばかり? ハリウッドに変化の兆し

The New York Times

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『マッドバウンド 哀しき友情』の女性作曲家タマール・カリ・ブラウン。2018年12月20日、マンハッタンのスタジオで。(Dana Scruggs/The New York Times)

女性の戦士を主人公にした大作映画が2本、公開を控えている。『ワンダー・ウーマン1984(原題:Wonder Woman 1984)』とディズニーの実写版『ムーラン(原題:Mulan)』。前者の監督・脚本はパティ・ジェンキンス、後者の監督はニキ・カーロ、脚本家は女性3人と、製作陣には女性が集まっている。だが、音楽を担当したのはハンス・ジマーとハリー・グレグソン・ウィリアムズ。いずれも男性だ。

映画興収トップ250本の作曲家は94%が男性

映画音楽業界に女性が少ないのは今に始まったことではない。南カリフォルニア大学の2018年の調査によれば、2007〜2017年で年間興行収入上位100本のフィクション映画に関わった作曲家は、男性は1200人以上。女性はわずか16人しかいない。テレビ・映画業界における女性の研究センターによる調査報告では、2018年の米国内の興行収入上位250本の映画の音楽を作曲したのは、94%が男性だった。

しかし、「数字だけ見ると厳しいが、全体で見ると違う動きが起きている」と話すのは、『ボンジュール、アン』の映画音楽を担当したベテランの作曲家で、映画芸術科学アカデミーの音楽部門の責任者を務めるローラ・カープマンだ。「私のこれまでのキャリアでも前例を見たことがないような方法でチャンスをつかむ人が増えてきているんです」

カープマンは、アカデミーの音楽部門の多様性を拡大するために尽力している。同部門の会員には現在、ロシア人作曲者のソフィア・グバイドゥーリナなどがいる。カープマンは一方で、アカデミー賞の音楽部門の候補者リストの作成でも陣頭指揮を執った。「去年も候補者リストに基づいて投票していたら、もっと多様性が生まれていたはず」

そうして例に挙げた作曲家は、『ゲット・アウト』のアフリカ系アメリカ人の作曲家マイケル・エイベルズと、『マッドバウンド 哀しき友情』の女性作曲家タマール・カリ・ブラウンだ。カープマンがインタビューに応じたのは今年のアカデミー賞のノミネートが発表される前の12月だが、今年の作曲賞部門には『ブラック・クランズマン』でアフリカ系アメリカ人のトランペット奏者で作曲家のテレンス・ブランチャードも初めてノミネートされた。だが作曲賞部門では女性はゼロだった

パンクロック界出身のタマール・カリ・ブラウン

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『マッドバウンド 哀しき友情』の女性作曲家タマール・カリ・ブラウン。2018年12月20日、マンハッタンのスタジオで。(Dana Scruggs/The New York Times)

ブルックリン出身のタマール・カリ・ブラウンは、白人男性が多数を占める環境に新風を吹き込んでいる一人だ。ディー・リース監督のNetflix配信映画『マッドバウンド』でタマール・カリは初の映画音楽を手掛け、その後、Netflixドラマ「神の日曜日/ Come Sunday」でも作曲を担当。さらに、ジョーン・ディディオンの小説「マクマホン・ファイル」を脚色した『The Last Thing He Wanted.』でも再びリース監督とタッグを組む。

ニューヨークのパンクロックシーンで黒人女性アーティストとして活躍したタマール・カリは、「アウトサイダーの中のアウトサイダー」であることには慣れっこになっていると話す。

「それが燃料になって創造性がかき立てられる」「この精神は、自分にとっても大切です。常にこの精神を実践することになるのだから」

一握り存在する他の女性アーティストと異なり、タマール・カリは最初から映画音楽の作曲を志していたわけではないが、彼女の作品を聴いたある監督から声をかけられ、映画音楽のオファーを受けるようになった。

独創的な音楽にニーズとオファーが

一方、ミカチュー&ザ・シェイプスというバンドで活躍していたイギリス人女性ロッカー、ミカ・レヴィの場合は、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』でアカデミー賞の作曲賞にノミネートされ、その次に『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』の映画音楽を手掛けた。

アイスランド人のチェロ奏者で作曲家のヒルドゥル・グーナドッティルは、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』と、ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー(Joker)』に起用されているが、その理由は主に——2本とも「男くさい」大作映画——実験的な電子音楽を評価されたためだ。

「私にオファーが来るのは、独特なサウンドやフィーリングが求められているからだと思います」とグーナドッティルは言う。「私のドアをノックする人たちは、ジョン・ウィリアムズのような映画音楽を私に求めてはいない。そのおかげで私もすごくいい立場にいられる。自分らしくいることを認めてもらえるから」

マーベル作品初の女性作曲家

『ジョーカー』は、スーパーヒーロー物の映画音楽が男性の作曲家ばかりに偏る風潮に風穴を開けた。ブリー・ラーソンが主演する『キャプテン・マーベル』もそうだ。同作で映画音楽を担当したトルコ人のパイナー・トプラクは昨年、『ジャスティス・リーグ』でダニー・エルフマン率いる作曲チームに参加し、マーベル作品として初の女性作曲家となった。

「音楽、アートはジェンダーレス」

「音楽、アートは一般にジェンダーレス」だとトプラクは昨年のインタビューで答えている。「感情には男女の差がありませんから」

2018年に大手映画会社が製作した映画の音楽を担当した女性数人のうちの一人が、メキシコ系アメリカ人のジャーメイン・フランコだ(R指定のコメディ『TAG タグ』)。フランコは、アカデミー賞のノミネート歴もあるジョン・パウエルを何年もアシストした後、『リメンバー・ミー』でマイケル・ジアッキノの音楽を編曲。また自身でも数曲を作曲し、注目を集めるようになった。現在はティナ・ゴードン・キスムの監督作品で、ドラマ「Black-ish」で知られるマルセイ・マーティン主演の『Little(Little)』の映画音楽を制作中だ。

女性作曲家のパイオニア

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マンハッタンのスタジオで作曲に勤しむ『マッドバウンド 哀しき友情』の女性作曲家タマール・カリ・ブラウン。2018年12月20日。(Dana Scruggs/The New York Times)

ここで改めて、なぜ大手映画会社が手掛ける多くの作品は、男性の作曲家ばかりなのかという疑問が生じてくる。『ゴーストバスターズ』のリブート作品や『オーシャンズ8』のように女性が主要キャストを務める映画でさえそうだった。

女性が映画音楽を担当するようになった歴史は長くはない。パイオニアはおそらく、1926年に紀行映画の音楽を共同で作曲したフランス人作曲家のジェルメーヌ・タイユフェールだろう。それから30年後の1956年、アメリカ人のベベ・バロンが夫ルイスと『禁じられた惑星』で前衛的な電子音楽を手掛けた。

ウェンディ・カーロスは、バッハの音楽をシンセサイザーで独創的に演奏したアルバム「Switched-On Bach」が評価され、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』と『シャイニング』の音楽に協力した。アンジェラ・モーレイは『シンデレラ』と『星の王子さま』でアカデミー賞にノミネートされ、アニメ『ウォーターシップダウンのうさぎたち』とドラマ「ダイナスティ」と「ダラス」の音楽も担当した。

ピアニストのシャーリー・ウォーカーは、『地獄の黙示録』で作曲家のカーマイン・コッポラに協力し、80〜90年代にはエルフマンやジマーの音楽を編曲した。クラシックに関する素養がなかった2人にとってウォーカーは教師となる存在だった。 2006年に亡くなったウォーカーは、テレビアニメシリーズの「バットマン」や映画『ファイナル・デスティネーション』『ウィラード』のオリジナルサウンドトラックも手掛けている。だが、大作映画では男性作曲家たちに協力するだけの形で終わった。

男性たちの会議に参加させてもらえなかった

ウォーカーの教えを受けていた作曲家のロリータ・リトマニスは、男性たちが参加していた会議には参加させてもらえなかったと思うと話す。「そのことをただ悔しがっていたかというと、違うでしょうね。彼女は最後まで闘っていました」。女性初のアカデミー賞作曲賞を受賞したのは、1996年の『Emma エマ』のレイチェル・ポートマンだ(翌年『フル・モンティ』でアン・ダッドリーが同賞を受賞し、これが今のところ最後)。

映画業界は「冒険をしない」とポートマンは言う。監督たちが好むのは「以前に聞いたことがあるような音楽を作る」作曲家だという。「そうした状況に入り込むのはとても難しい。それに、映画音楽を初めて手掛ける作曲家を選ぶより、誰かと以前に仕事をした作曲家を起用する方が無難だという空気もある。そうなると、特に女性の場合は難しいと思う」

女性にアクションシーンの音楽は書けない? 冗談じゃない

仕事をした中でミソジニー的な考えを公然と示した男性監督は2人だけいた、と話すポートマン。そうして、時折「おいしいチャレンジ」があると説明した。監督は、女性である自分には「タフな音楽」、つまり「女性らしくない」アクションシーンの曲は書けないと思っている。そこで「冗談じゃない。と、私にもそういう曲が書けることを証明するんです」。

この2年間、ジェンダーパリティ(男女の機会平等)を実現したサンダンス・インスティテュート映画音楽プログラムや米国作曲家作詞家出版者協会(ASCAP)のワークショップなど、より多くの女性に現場での経験と業界への参入の機会を提供する試みもいくつか行われている。ユニヴァーサル・ピクチャーズは、女性や有色人種の才能ある作曲家を発掘するため、映画音楽作曲家支援プログラムをスタート。ここで選ばれた作曲家は、ドリームワークス・アニメーションのショートムービー用にオーケストラ編成の作曲を担当し、アビーロード・スタジオで録音に勤しんでいる。

ノラ・クロールローゼンバウムは、同プログラムで初めて制作されたショートムービー「バードカルマ(Bird Karma)」の音楽を作曲した。機会を提供してくれるこのプログラムを評価し、「多くの人にとって扉は閉ざされていますから」と話した。

「ライバルであり、互いのチアリーダー」

支援のためのリソースも増えてきた。2014年には、女性映画音楽作曲家連合が設立され、現在400人近い会員が加入している。同連合は、コンサートや支援活動を通じて女性作曲家の認知度を高め、公式の組合がなく、一人で活動している人々に連帯の場を提供している。

「女性団体でもあり、リソースでもある」と、代表のリトマニスは同連合について説明する。「私たちはライバルでもありますけど、互いを励まし合うチアリーダーでもあるんです」

作曲という仕事に本来、女性は向いている

「女性の権利に対して世界的に意識が高まったことや、#MeToo運動、タイムズアップ運動などの影響もあるでしょうね」とリトマニスは続けた。映画会社や上層部にも「現状に対する関心や、行動を起こそうとする動き」が起きてきているという。「自分に何ができるかを知るために会って話がしたいと連絡する人が増えてきました」。大作映画のオーディションに女性が参加できる機会も、以前よりはずっと増えてきたと思うとリトマニスは話した。

ハリウッドの映画業界で活躍する作曲家の著作権を管理しているBMIの映画音楽部門の役員ドリーン・リンガーロスは、女性の作曲家たちの才能を考えれば、そうした機会はもっとあっていいはずだと主張する。「作曲家の仕事はとても繊細で、物事の感情を音楽的に解釈しなければなりません。そして女性は元来、そうしたことに非常に長けています」

© 2019 The New York Times News Service[原文:Female Composers Are Trying to Break Film’s Sound Barrier/執筆:Tim Greiving](抄訳:Misako N)

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