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LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

「未来に対する不安」を払拭するには/谷川じゅんじさん[前編]

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2045年頃に迎えるというシンギュラリティ(技術的特異点)について各界の有識者と検証し、次世代の未来に遺すべき価値観を探る連続インタビュー。第7回目は、スペースコンポーザーの谷川じゅんじさんをお招きし、シンギュラリティのマイナスイメージとしての「灰色の未来像」を払拭するためのヒントについて、あれこれ伺ってみました(全3回掲載)。

谷川じゅんじ(たにがわ じゅんじ)さん/スペースコンポーザー
JTQ Inc.代表。「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマに、GINZA SIXやLEXUS店舗リニューアルのマスターデザインなど、様々な商空間の開発や企業ブランディングを手掛ける。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」を提唱し、環境と状況の組み合わせによって感動体験をさせるデザインは多方面から注目を集めている。

——谷川さんは、さまざまな商空間の開発や企業ブランディングを手がけていらっしゃいます。今日は“スペースコンポーザー”としての立場から、来るべき未来についてどのような展望をお持ちなのかを伺わせてください。

シンギュラリティの深層は……「よくわからない」

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谷川じゅんじ(以下、谷川):まず今回のテーマである「シンギュラリティ」ですが、その正体を一言で説明しようとすると……正直“よくわからない”ところが多いですよね(笑)。でも、言葉の響き自体はキャッチーなので、みんな“よくわからない”ながらも、各自が自分なりに解釈した独自のシンギュラリティ観を、いろんな方々がいろんな立場から口にされます(もちろんこれは、一連の[LIFE after 2045]に登場された皆さんの話ではなくて、一般社会のレベルでの話です)。

だから言葉としてはヒットするけれど、その真意は、掘れば掘るほど拡散気味になる。10人いたら十人十色の「シンギュラリティ」があって、みんながそれらしいストーリーを提示してくるけれど……一歩間違えると霊感ビジネスじみた、あやしい世界に足を踏み入れかねないとも限らない。

と同時に、「シンギュラリティ」についての情報や評判を主に伝えてくれる媒体であるインターネットで興味深いのは、よりネガティブだったりセンセーショナルな情報のほうが、検索結果の上位に表示されるじゃないですか。

冷静に調査やマーケット分析をすれば、真実はもっとポジティブな結果だったとしても、ネット検索の結果を安易に鵜呑みにすると、アジテーション気味のワードだけが目につきがちです。「それで全部だ」というコンビニエンスな思考に捉われないように、常日頃から注意を払うべきでしょう。

コンビニエンスな思考に捉われないで

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「探究心」は、モノの見方の“枠組み”を拡張する

谷川:余談ですが、私には幼児教育・保育の実践研究をやっている友人がいるのですが、彼が「子どもの新しい情操教育」を提案しました。特に「脳が発育する時期」にあたる0歳〜6歳の情操教育が、とても大切だというのです。

ある日彼が私に、こう聞いてきました。「4歳の女の子(仮に私の娘)が虹を見て『なんで虹は7色なの?』と訊かれたら、谷川さんはどう答えますか?」と。そこで、私なりに考えて「プリズム効果が云々……」と説明したら「それは間違ってはいないけれど、松・竹・梅で言うと、“梅”の回答ですね」と言われました(笑)。

——どういうことですか?

谷川:つまり、それは「調べればわかることを説明している」から、回答としては“梅”だというわけです。今は情報化社会なので、ある年齢になって調べる方法さえ分かれば、自然とそれは解決します。だから「今4歳の女の子の頭の中に、そんなことを覚させる必要はない」というわけです。

じゃあその時期、彼女に何をしてあげるのが良策なのか? 次の“竹”にあたる回答が、「◯◯ちゃんはどうしてそう思ったの?」と聞いてあげることだそうです。たとえばフィンランドの教育方法は、まさに「あなたはどう思う?」という問いがキーワードなんですね。「聞くこと」によって、彼女は考えて、答えようと頭を巡らせる。

——最後の“松”の回答は、何でしたか?

谷川:「どうしてそう思ったの?」までは一緒ですが、それに「その理由を教えてくれたら、パパすごく嬉しいんだけど」と、つけ加えてあげることだそうです。

そうすると、子どもが疑問や不思議に思ったことを頭の中で考えることで、自分が愛するお父さんやお母さんが喜んでくれるという仕組みが刷り込まれます。すると「考えること」自体にポジティブになるんですね。

疑問を掘り下げ、探求するきっかけを6歳までに植えつけられれば、あとはその子に見合った栄養分を情報化社会からどんどん取り込めます。子どもの頃にそういう訓練ができていれば、あとは放っておいてもどんどん育つというわけです。

——そういう探究心を持った子どもが育ってゆけば、杓子定規の丸暗記なお勉強に縛りつけられた子どもとは、また違った人格形成がなされるかもしれませんね。

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谷川:プログラマーや哲学者が生まれるかもしれないし、そういう思考を持った人が増えてゆき、集まった場合、そこからデザインされる未来もまた、とても明るい気がしませんか?

さらに、それは子どもたちに限らず、私たち大人もまた「なぜそうなるのだろう?」という探求癖をつけることは大事です。そうすれば、自分が自分に設定した枠組み(制約)や既存の知識内ではわからなかったり不安に思うことを解決する糸口を見つける努力をします。

なぜそうなるのだろう?と考えることが大事

“Think outside the box”という英語の格言のように「箱の外側から考えて」みようとすると、その箱のサイズ自体が変化します。知識はひとつのフレームになるけれど、探究心はその「箱のサイズ」そのものを拡大してくれる

そうやってフィールドを広げていって、足りないところは、自分よりも詳しく知っている人に補ってもらえばいい。別に自分ひとりで完結する必要はなくて。そのために人と人がつながって、社会を形成しているわけです。

そうやって、これまでになかった価値やフロンティアを見つけてゆけば、みんなでエンジョイできる未来を築くことは十分可能だと思います。

たとえば「テクノロジーの発展によって、人間の仕事がなくなる」というビジョンも、ある一面だけを見ればありうることだけど、その仕事から解放されることで、人間が別の取り組みに割ける時間が捻出されたのだと思えば、あながち悪い話ばかりでもないですからね。<中編に続く>

聞き手/カフェグローブ編集部、撮影/中山実華、構成/木村重樹

先端テクノロジーを享受して、何を生み出せる?/谷川じゅんじさん[中編]

スペースコンポーザーの谷川じゅんじさんを迎え、「物質から心へ」「都市から地方へ」といった、昨今のカウンター的なムーブメントの背景に迫ります。

https://www.cafeglobe.com/2019/03/singularity7_2.html

怪しい情報に踊らされない人生を歩むには?/谷川じゅんじさん[後編]

未来を切り拓くための連続インタビュー[LIFE after 2045]。スペースコンポーザー谷川じゅんじさんが考える、「ポジティブな未来像」を思い描...

https://www.cafeglobe.com/2019/03/singularity7_3.html

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