医師、板前、パイロット、鳶職……。
近年、職業における性別の垣根もだんだんなくなってきています。MASHING UPは、「男性の仕事」とされてきた業界への扉を叩き、誇りを持って仕事に日々情熱をそそぐ女性の働き手たちを「飛びこんだひと」として紹介します。
第一弾は、女性従事者の割合はわずか6%(平成27年総務省「国勢調査」より)という林業を仕事に選んだ女性です。
会社の仲間たちと森で間伐作業。中央が飯塚潤子さん。
飯塚潤子さん(株式会社東京チェンソーズ)
Q:職業を教えてください。
A:林業に従事しています。
苗木の植え付け、間伐などの森林整備・管理のほか、森林に関するイベントの企画、木材販売、会員制の森林育成体験プロジェクトなども手がける「東京チェンソーズ」(東京都檜原村)という会社で働いています。
Q:なぜその職業を選んだの?
A:日本の森林の現状に憤りを感じたから!
子どもの頃から、砂漠問題や酸性雨など環境問題に興味がありました。東京大学農学部に在籍中、教養の授業で、日本の森林は手入れが行き届いておらず、使われどきなのに利用されていないという現状を知って。海外で違法伐採するくらいなら日本の木を使えばいいのに!と憤り、いつか環境や森林に携わる仕事に就いて、国内の森林問題に取り組もうと決めました。
大学卒業後、まずは一般的な社会人の感覚やスキルを身に着けようと、国際見本市を主催する会社で4年間勤務。たまたま2011年に出版された『今日も森にいます。東京チェンソーズ』(徳間書店)を読んで今の会社の活動を知って感銘を受け、職務経歴書と履歴書を送りつけて面談してもらったんです。森林関連イベントなども開催している会社なので、ここなら自分でも活躍できるのではと思いました。
日本の森林は間伐などの手入れが行き届いておらず、上手に活用されていない。(Image via Shutterstock)
Q:その業界に飛びこむのに恐怖心はありませんでしたか?
A:まったくありませんでした。
第六感でピーンと来たものについては躊躇しない性格なので、怖いとは思いませんでした。
Q:周囲の反応はどんなものでしたか?
A:みんな応援してくれました。
家族も友達も、反対する人はまったくいませんでしたよ。村のおじさんや前職のおじさんなどに「(東大卒なのに)もったいない~」と言われることはあります。
Q:性別による壁を感じたことは?
A:力仕事ではかないませんが、活躍できる場面があります。
重い荷を運ぶなどの力作業では、男性と比べると圧倒的に弱い。でもまわりが優しい先輩ばかりでフォローしてくれました。わたしは違う場面で活躍できればいいと思っています。
あとは妊娠・出産・子育てに時間をとられること。パートナーが同じ職場なので、理解があるのはメリットですが、夫が現場仕事で時間の融通が利かないため、必然的にわたしが短時間勤務になります。妊娠や育児から学ぶこと、仕事に活かせることもあるので、女性にしかできない仕事、と思って割り切っています。
背負いかごは、村のおじいちゃんがつるで編んだもの。結婚祝いに会社の先輩方がプレゼントしてくれた。
Q:仕事のやりがいはどんなことですか?
A:働いた分だけ、景色が変わります。
現場仕事でいえば、その日作業した分だけ目の前の景色・風景が変わるということ。具体的には、植えた苗木が並んでいたり、下草を刈ることで山がスッキリしたり、間伐をして林内に光が差すようになったり。
今は第二子を出産し、育休中。第一子を妊娠してからは、労務などの事務や広報、森林関連イベントの調整、営業企画のようなこともしています。また、最近では、小売企業への木材提供や木のおもちゃの製造販売といった「木を街に届ける」取り組みに力を入れています。社員が汗を流して伐採、搬出して製材したものが、人の手に渡っていく。小さくても確実な取り組みに関われることがやりがいです。
Q:この職業を目指す人にアドバイスをするとしたら?
A:たくさんの可能性を秘めた業界です。
林業は、まだまだ旧態依然の業界ですが、逆にその分いろいろな可能性があると思っています。
よく地方を変えるのは若者、よそ者、馬鹿者の「3モノ」といいますが、林業も同じようなところがあるのではないでしょうか(林業の場合、40代も若者の部類に入ります)。
また、現場に直接は関係なくても労務、総務、広報など、一般企業の経験を活かして改善できる余地がたくさんあるので、興味があればぜひ飛びこんでみてください。
写真/飯塚さん提供

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