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女性と仕事

世界一寝ていない女性と、働きすぎる男性と/OECDデータに見る奇妙な国・日本

OECD_top

グローバルな視点からは、日本女性ってどんな風に見えるんでしょう?

日本、アメリカ、欧米など先進国36か国が加盟している「世界最大のシンクタンク」、経済協力開発機構(OECD)の東京センター所長・村上由美子さんに、データをもとに解説していただきました。

村上由美子さん(以下、村上):肌感覚でなんとなく感じていたことを数字やデータで見てみると、「やっぱりそうだったのか」なんて「腹落ち」すること、よくありますよね。今日はOECDの様々なデータを見ながら、日本の「女性×仕事」の現状をおさらいしたいと思います。

※この記事は、2019年3月8日に行われたイベントをもとに再構成したものです。

就職率とパートタイム率から見えてくること

村上:まず、どれくらいの女性が働いているのか見てみましょう。日本女性って、 社会進出が進んでない、というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、なんと就職率(15〜64歳)は69.8%と、結構働いているんですよ。これは、OECD加盟国平均である61%をしっかり上回っています。

就職率

【女性(15〜64歳)の就職率】黃色のグラフが日本。(クリックするとリンクに飛びます)

Employment rate Women, % of working age population, Q3 2018 :Interactive charts by the OECD

——ひとまず安心、というところでしょうか。

村上:そうですね。ただ、働く女性は増えたといっても、パートタイマー率がとっても高いのが日本の特徴。男性が11.5%なのに対し、女性は36.7%。実に働く女性の3人に1人以上がパートタイマーなんですよ。

パートタイム

【女性のパートタイム就職率】緑色のグラフが日本。(クリックするとグラフのリンクに飛びます)

Part-time employment rate, Women, % of employment, 2017 : Interactive charts by the OECD

——なるほど。さきほど女性の就業率は上がっているというお話がありましたが、ちょっとずつ掘り下げると色々なものが見えてきますね。

村上:そうですね。また、雇用形態の違いから、男女の賃金格差という問題も出てきます。日本の男女の賃金格差は24.5%。韓国、エストニアに続いてOECD加盟国でワースト3なのです。

賃金格差

【男女の賃金格差】黄色のグラフが日本。(クリックするとグラフのリンクに飛びます)

Gender wage gap, Employees, Percentage, 2017 or latest available : Interactive charts by the OECD

——賃金のギャップが3番目に大きいというのは、ショッキングですね。

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OECD東京センター所長の村上由美子さん。3月8日に行われた国際女性デーイベントで。

村上:あわせて、男性の長時間労働も問題になっています。日本の男性は、労働時間の調査でも常に上位にランクインしています。

ここで、家の中の様子も見てみましょうか。日本人が家事に費やす時間は、平均男性40.8分、女性224.3分、その差は183.5分。この男女差は、メキシコ、トルコ、ポルトガルに続いて加盟国の中で4番目に大きい仕事ばかりで家事は女性に任せっきりなんて、日本の男性、国際的には少し恥ずかしいぞ、というデータです。

——女性の方が1日3時間も多く家事をしている、と。男性がもう少し仕事を減らして、その分もうちょっと分担できるようになるといいですね。

村上:そうですね。家庭と仕事を両立しやすくする制度を会社が取り入れれば、その会社の価値が高まって、より有能な人材を引きつけることもできるはず。

余談ですが、OECDでは睡眠時間についても調査を実施していて、日本の女性は世界で一番寝ていないということが分かっています。睡眠を削って仕事して家事をして。わたしたちって働き者だなぁ、と思いませんか?

リーダー的立場における女性の割合

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村上:女性の声を社会や組織に反映させるには、やはり決定権のある地位に女性が就くことが必要です。そのようなリーダー的ポスト(管理職)や取締役に就いている女性の比率は、韓国に次いで下から2番目。

管理職

【管理職における女性比率】赤色のグラフが日本。

A. Female share of managerial employment, Percentage, 2019 : Interactive charts by the OECD

では、政治の世界ではどうでしょう? 国会議員における女性比率は9.3%。なんと加盟国で最下位=ビリなのです。

この数字には、危機感を持たなければ、と思っています。2018年5月に、政治分野における男女共同参画法案が通ったので、今後、各政党がどれだけやる気を見せるのか、有権者としてしっかり見守りたいですね。

——ありがとうございました。今回、様々なデータから、日本の女性の立ち位置が見えました。正直、まだまだ立ち遅れているんだな、という現実も分かってきました。

村上:でもね、教育という観点で見ると、日本の女性はトップレベルなんですよ。これを宝の持ち腐れといわずなんと言いましょう。とても優秀な、磨けば光る原石がこの国にはゴロゴロ転がっている。この原石を持った女性たちをいかに輝かせることだと思うんですね。

輝きやすい社会環境を作り、輝きたいという女性のマインドを育て、一緒に輝こうという男性も増やす。これが大切だと思います。

murakami_yumiko

村上由美子 (むらかみ・ゆみこ)さん
OECD東京センター所長。上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。その後約20年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックス及びクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。OECDの日本およびアジア地域における活動の管理、責任者。政府、民間企業、研究機関及びメディアなどに対しOECDの調査や研究、及び経済政策提言を行う。ビジネススクール入学前は国連開発計画や国連平和維持軍での職務経験も持つ。ハーバード・ビジネススクールの日本アドバイザリーボードメンバーを務めるほか、外務省、内閣府、経済産業省はじめ、政府の委員会で委員を歴任している。著書に「武器としての人口減社会」がある。

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MASHING UP編集部
MASHING UP=インクルーシブな未来を拓く、メディア&コミュニティ。イベントやメディアを通じ、性別、業種、世代、国籍を超え多彩な人々と対話を深め、これからの社会や組織のかたち、未来のビジネスを考えていきます。

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