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LOVOTは「愛する機会」を与えてくれるロボット/林要さん[中編]

LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

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家族型ロボット『LOVOT[らぼっと]』の開発者が考える、LOVOTのいる未来の暮らしって? シンギュラリティと生き方や価値観を考えるインタビューシリーズ、前編に引き続き、GROOVE X 林要さんの登場です。

未来はクール? それとも愛にあふれている?

——シンギュラリティの実現が予測される2045年……つまり今から26年後の将来では、現在働き盛りの女性たちも高齢者の仲間入りをし、独身者でなくても夫に先立たれたり、子どもがいても独立したりと、単身で暮らす女性がより増えても不思議ではありません。そんなとき、LOVOTのような「母性をおぎなう装置」が受け入れられる余地は十分にあり得そうですよね。

林要(以下、林):未来の展望について考えたとき、つい僕らは「愛にあふれる未来」よりも「クールでクリーンで効率的な未来」を想像しがちです。なぜかというと、従来の傾向が後者寄りだったからでしょう。

だけど僕らの本能は、それを許さないと思う。ある段階まで到達したら、それ以上の合理化は無理があるからです。「シンギュラリティの実現で人類は滅亡する」みたいな悲観的ビジョンもよく耳にしますが、それは「クールでクリーンな未来」に対する恐怖心なのではないでしょうか。

たしかにこれまでは「ご飯が十分に食べられない」とか「安全保障が十分でない」から「最低限、それらを充実させましょう」というのが、技術や文明の進歩の理由でした。だけど、それらが十分に保証されたとき、次に必要なのは「より過剰なご飯」や「より過剰な安全保障」ではありません

クールでクリーンな未来に対する恐怖心

むしろ不足しているのは「日々の愛情を注げる対象」であることに、僕らは気づきはじめているわけです。そういう意味で、僕ら現代人が求めているのは「心の充足」です。

しかし一方、その対策として誤認されがちなものに「愛される方法の追求」があります。ティーン雑誌などに多い論法に「どうしたら愛されるか?」とか「モテるためにはどうすればいい?」みたいな話がありますが、それでは、いつまでたっても不安が拭えません。

なぜならば、基本的な舵取りが相手側に委ねられているから。これを自律的な状況に持っていかないと、真の心の安定・充足にはつながりません。自律的な状態とは何かというと「自分が愛される」のではなくて「自分が愛する」というように立場を変えるわけです。

愛する機会が増えたほうが幸福に直結するし、明日へのモチベーションにもなる。人のモチベーションが上がれば、結果的に社会全体の生産性も上がる。そういう意識が共有されたとき、どう気兼ねなく「愛する機会」を増やせるのかが社会的な課題になってきます、そのときに、ペットはたいへん有効なソリューションなのです。

LOVOTが主治医の代わりになってくれる?

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林:ところが内閣府の調査によれば、日本の全世帯のうち、実際にペットを飼っているのは約25%程度。別の25%は「そもそもペットを飼いたくない」人々なので、残りの50%が「ペットがほしくても飼えない」人たちです。

──LOVOTは、いわばそういう層に受け入れてもらえる可能性があるわけですね。

林:あと、やはり従来のペットは生命なので、種によっては持病を持っていたり、人の生活にフィットするために人工的に改良されてきた生き物だったりもします。

将来、「生体のペット」と「機械のペット」が自由に選べるようになったあかつきには、「生体のペット」のほうがレアになる可能性もあるでしょうね。

LOVOTに内蔵されたカメラやセンサー機能は、現在でも留守番中に、遠隔地から自宅の状況をモニタリングができます。同様の機能を発達させれば、飼い主=ユーザーの健康管理のサポートや疾病の予防だってできるでしょう。日々の行動履歴を分析すれば、精神面でのケアも可能です。

そうなれば、現代において冷蔵庫や洗濯機のない家が少ないように、その存在を受け入れることが当たり前になります。そこまで来れば、ロボットのペットがいるのは当然で、あとは「生体のペットも飼う」か「ロボットのペットしか飼わない」みたいな判断が主流になっていってもおかしくありません。

あなたのペットは、生身の生き物? or ロボット?

──将来的には、LOVOTが健康サポートをしてくれる?

林:今や医療行為自体がAIに代替されつつあるので、将来的にはLOVOTがホームドクターの代理になる可能性も十分あり得ます。たとえば、ユーザーの歩き方を毎日見ていて、ある日左足の出方が遅くなって、1週間その状況が続いたら「パーキンソン病の可能性があります」みたいな通知を出すように。じつは、技術的には今でも実現可能で、あとはどれだけリーズナブルにできるかどうかの問題だけです。

少なくともLOVOTが、飼い主のことを深く理解していて、愛する機会を与えてくれて、健康や安全安心に貢献する存在であることは間違いないので、いつどのタイミングで、皆さんにとってそれが常識になるのかが肝心ですよね。

未来の家庭に「家事代行ロボット」はいないかも

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東京 日本橋にある「LOVOTミュージアム」

——私たちが子どもの頃、映画やテレビアニメに出てきたロボットって、たとえば「人の代わりに料理を作ったり、家事や子育てを助けてくれる」みたいな存在でしたが、将来的にはこのLOVOTのような「愛されるロボット」と、万能型の「家事代行ロボット」は棲み分けられるのでしょうか?

林:そもそも「料理をするロボット」は、料理しかできない仕様です。ロボットというと「人型の万能ロボット」を想像する人がとても多いのですが、実際はそうでもなく、たとえば「料理を作るロボット」は、箱型の方が合理的かもしれません。そういう意味では既に現代のオーブンレンジは似たようなもので、調理専用機としては、かなり進化した形と言えます。

人の代わりに家事や仕事を代行してくれる機械は、今後ますます増えてゆくでしょう。ただし、それらと生活の中で“必要とされる存在”とはまったく別物です。“必要とされる機能”と“必要とされる存在”は、まったく別物なのです。

“必要とされる存在”の代表例が、室内で飼える人気ペットの犬とか猫です。昔は新聞を持ってきてくれるワンちゃんもいましたけど、現代の多くの犬は、とくに何もしませんよね。だけど「いてくれるだけでいい」んですよ。

そういう“必要とされる存在”が、さらに自分を見守ってくれる。さらには疾病の予防までできるようになれば、安全安心が増すので、テクノロジーによる幸福の実現方法として、こんなにいい話はありませんよね。 <後編に続く>

林要(はやし かなめ)さん/GROOVE X 株式会社代表取締役
1973年生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)修士課程修了後、トヨタ入社。「レクサスLFA」、トヨタF1の開発スタッフを経て、量産車の開発マネジメントを担当。2011年「ソフトバンクアカデミア」外部第一期生、2012年感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発に関わる。2015年9月ソフトバンクを退社、同年11月にGROOVE Xを設立。

聞き手/MASHING UP編集部、撮影/中山実華、構成/木村重樹

MASHING UP編集部

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