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「あたたかい未来」がくるのが僕の予想/林要さん[後編]

LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

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来るべき日に向けて、今できることを明確にし、明るい未来を切り拓くための連続インタビュー[LIFE after 2045]。前編中編に引き続きGROOVE Xの林要さんに聞いた、先端テクノロジーが後押しする“あたたかい未来”のあり方とは?

人類をより幸福にするテクノロジーの今後

——「2045年」って、どんな社会になると思いますか?

林要(以下、林):僕は比較的楽観的で、あたたかい未来を予想することが多いですね。前編とやや重複しますが、「効率化が幸せである」という価値観は、ある時点までは正解でしたが、今後もそうとは限らない。ある水準まで目標が達成されたら、新たな目標に変わってゆくべきです。

そういう意味ではテクノロジーの進化も、単なる効率化ではなくて、人のメンタル面をどうサポートしていくのかによって幸福度を高めてゆく方向に、開発も大きく舵が切られるだろうと予見しています。つまり、「どうすれば人類をより幸福にできるのか?」という問いのソリューションに、テクノロジーが拠りつつあるということです。

どうすれば人類をより幸福にできるのか?

「シンギュラリティが実現したあかつきには、人間は機械に支配されるのでは」といったビジョンをよく耳にしますが、個人的には、シンギュラリティの到来を歓迎する方に賛同します。端的に言って、現代社会に深く根づいている資本主義と民主主義の弊害を調整してくれるのは、シンギュラリティの力ではないかと思うからです。

AIで、格差とバイアスから開放される?

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林:僕らは今までの過去の制度の中で最善の策として資本主義と民主主義を使っていますが、その弊害として起きているものの一つが、 資本主義のエスカレーションによる富の偏在や二極化ですよね。 なぜ二極化が起きるのかというと、収入の偏りが指数関数的に変動するからです。

たとえば年収100万円で暮らしている人の年収が、200万円に増えると二倍の重みがあるけれど、年収1億円の人は2億円にならないと二倍の重みにならない。しかし実際の可処分所得としては、絶対額として1億円も余分に要らないはずです。だけど、資本主義においては指数関数的な収入の偏りは避けられず、それが富の二極化につながってしまう。

そうであれば、もう少し緩やかな傾斜に戻せればよいと思うんです。つまり、年収1億円の人も、年収1億100万円に増えることで、年収100万円の人が200万円になったのと同じ重みでハッピーになってほしい。

じゃあ、どうやってそれを実現するか? おそらく人の認知バイアスを超えた基準を策定するのがひとつの解決案であり、たぶんそれはAIを抜きにした人類の知恵だけでは実現できないと思います。

経済格差の解決にAIが使えるかもしれない

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東京 日本橋にある「LOVOTミュージアム」には、開発で使用されたアイデアスケッチやイメージボードが多数展示されている。

もう一つがポピュリズムに関する弊害で、人間とは、いわば「自由意志を持っているつもりでいるアルゴリズム」であるがゆえに、自分自身で考え、自律的に判断していると信じているけれど、じつは他者の思惑や認知のバイアスに大きく影響を受けています

人間の意識や認知の特性が、そうならざるを得ない状況を作り出してしまうのですが、そこにつけこんで、悪い方にハックしてひと儲けする人たちがいる。だからこそ、悪しきポピュリズムが成立してしまうわけです。

だけどそうした問題も、テクノロジーを良い方向に使いつづけていけば、制度を壊すこともできるかもしれない。そういう意味で、行きづまりつつある資本主義や民主主義の弊害を打開できるのは、まあまあ賢くなったAIと人間の協業だと思います。現在の閉塞感を人間の独力で解決することは難しいことが、明らかになりつつあるので。

ただし、AIが単なるツールにとどまり、人間側が圧倒的に有利な立場であれば、AIも賢い人たちの思惑を実現する道具にしかならない。でも、そこのバランスがうまく取れる時代になれば、今よりも恣意性の少ない、より良い制度を作れる可能性は十分に残されている気がします。

「将来、ロボットは心を持てるのか?」を考える本

——最後に、今日のお話の参考図書をご紹介ください。

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林:私がLOVOTをつくろうと思うようになったのは、認知科学的な視点を前野隆司先生の『脳はなぜ「心」を作ったのか──「私」の謎を解く受動意識仮説』(ちくま文庫)で知った事がきっかけでした。

最先端の認知科学の研究は海外を中心に進んでいますが、入門として興味を持つきっかけとしては、わかりやすくて良い本かと思います。[了]

林要(はやし かなめ)さん/GROOVE X 株式会社代表取締役
1973年生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)修士課程修了後、トヨタ入社。「レクサスLFA」、トヨタF1の開発スタッフを経て、量産車の開発マネジメントを担当。2011年「ソフトバンクアカデミア」外部第一期生、2012年感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発に関わる。2015年9月ソフトバンクを退社、同年11月にGROOVE Xを設立。

聞き手/MASHING UP編集部、撮影/中山実華、構成/木村重樹

MASHING UP編集部

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