去る3月23日・24日、都内のホテルニューオータニで、「第5回国際女性会議WAW!/W20」が開かれました。今回は、2014年に日本主導で始めた国際女性会議「WAW!」と、女性の経済的活躍を目的にG20に提言する団体「W20(Women20)」との同時開催。世界の色々な分野で活躍するリーダーたちが参加し、活発な議論を交わしました。
マララさん、女子教育の大切さを訴える
女子教育への投資を訴えるマララ・ユスフザイさん(写真はすべて第5回国際女性会議準備事務局提供)。
1日目の23日には、初来日となるノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんの基調講演がありました。詰め掛けた人は1000人を超え、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。マララさんが登壇すると、拍手とともに、スマートフォンで撮影しようと構える手がどんどん観客席から伸びます。
1億3000万人の女の子のために
冒頭、マララさんは、「昨夜の安倍首相とのディナーで、アボカドと間違えて大量のワサビを口に入れてしまいました。初めての味で、平静を保つのが大変でした」というエピソードで会場を和ませます。
2012年、過激派に至近距離から銃で撃たれ、生死をさまよったマララさん。友達と楽しく遊び、勉強が好きだった彼女の毎日を変えたのは過激派の支配でした。女の子は学校に行けなくなり、教育の権利を訴えた15歳のマララさんは撃たれました。
「しかし、彼らは失敗しました。わたしの声を大きくしただけなのです。そして今日、まだ学校に通っていない1億3000万人の女の子のために、わたしはここにいます。彼女たちが学校に行き、教育を受けることで未来を選ぶことができるようになります」と話しました。
続けて、「この会場にいるわたしたちは、人生の先輩である女性たちに触発されました」と、日本人女性初の宇宙飛行士の向井千秋さん、パキスタン初の女性首相のベナジル・ブットさんらにも触れました。「女子教育に投資をしなければなりません」と語り、「そうすれば想像を超える未来が可能になります」と終えると、観客席からは彼女の言葉に深くうなずくかのような熱い拍手が送られました。
男女ともにWIN-WINの関係を築く
午後のパネル・ディスカッション「ジェンダーギャップの解消を通じた新しい成長のカタチ:女性のエンパワーメントを実現するガバナンスとは」では、企業や個人の役割、課題について話し合われました。
2014年に開かれたG20のサミットでは、2025年までに男女の労働力率の差を25%に縮小する公約がされました。そして、世界でこの目標が達成された場合には世界経済は約6兆ドル膨らむとの推計もあります。しかし、現状はなかなか進展していません。
モデレーターのFT Live発行、Financial Timesアジア地域マネージング・ディレクターのアンジェラ・マッカイさんは、この現状に「失望を感じます。公平な男女役割負担や法的な規則を設けて差別を撤廃するなど、解決策は分かっているのに実現できていません」と述べ、各パネリストに意見を求めました。
格差解消は女性のためだけではない
女性だけでなく男性の意識改革も不可欠と訴える国際貿易センター事務局長のアランチャ・ゴンザレスさん(写真右)。
女性の観客が8〜9割を占める会場。拍手を集めた発言は、国際貿易センター(ITC)事務局長のアランチャ・ゴンザレスさんの「女性が女性のために話しても仕方ない」でした。
祖国スペインのラジオインタビューで女性のエンパワーメントについて話したあと、ツイッターに「何でそんなことを気にかけなければならないのか」という男性からのコメントがあったそうです。そのとき、現状は「枠から外れていない」と感じたとのこと。持続可能な社会にするためにも、女性の活躍が男女両方にWIN-WINであることを理解する重要性を求めました。
「育児休暇など女性のために整えたものが、意外と男性にも評判が良かった」と、結果としてみんなのためになった実例を挙げたのは、このパネル・ディスカッションでただ1人の男性パネリスト、三井物産株式会社代表取締役副社長執行役員の田中聡さん。開口一番、「今、マイノリティの気持ちを味わっています」と会場の笑いを誘っていました。1990年代から男女格差の解消に取り組んだ同社。今は、先輩女性社員に相談しながらキャリア形成を考えることができる「女性メンター制度」に期待しているそうです。
メンターシップの重要性について語る三井物産株式会社の田中聡さん(写真中央)。
無意識の偏見はトップダウンで改善を
そして、男女平等を妨げる一要因になっている無意識の差別や偏見についても意見が交わされました。ボストンコンサルティンググループ、シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの津坂美樹さんは、「トップダウンが必要。男女に限らず、色々なダイバーシティがないと、企業は勝てません」と発言。
パナマ副大統領兼外務大臣のイサベル・デ・サイン・マロ・デ・アルバラードさんは、「自分の夫は協力的ですが」と前置きして、「チームワークとして男性と家事を共有しないといけません。女性だけが毎日家事も仕事もするのは、あまりに負担が大き過ぎます」と話しました。
最後に、「男女の格差はすぐに解決することは出来ないが、優先順位を決めて、男女ともに関わって解決することが必要」という再認識をして終了となりました。
※WAW!/W20レポート(2日目)は4月8日に公開予定!
取材・文/土田ゆかり

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