去る3月23日・24日、都内のホテルニューオータニで、「第5回国際女性会議WAW!/W20」が開かれました。開催1日目につづく2日目にも、世界中から集まったリーダーたちによる活発な議論が交わされました。※1日目のレポートはこちらから⇛
平等な男女役割分担は家族から
24日午前のパネル・ディスカッション「家族の未来:頼る・活かす・分かち合う」のモデレーターは大和総研研究員の是枝俊悟さん。税制や社会保障制度を研究する仕事を通じて、家族形態の変化を感じているそうです。多様化していく社会での問題点と解決策を探りました。
「私は娘の名前によって有名になった父親です。そしてそれを誇りに思っています」と自己紹介をしたのは、ノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさんの父親で、マララ財団共同設立者兼理事のジアウッディン・ユスフザイさんです。「家族の中の平等がなければ幸せはありません。家族という小さい単位を大事にすることから変革は始まり、育まれます」と力強く語りました。
マララ・ユスフザイさんの父親で、マララ財団共同設立者兼理事のジアウッディン・ユスフザイさん(写真はすべて第5回国際女性会議準備事務局提供)。
家事は「手伝い」ではなく「分担」して
参議院議員の松川るいさんは、2人の子どもを育てており、夫は単身赴任中。実は、2人目の子どもを持つことにはためらいがあったそうです。なぜなら、夫は男子厨房に入らずのタイプ。日本の女性は男性の7倍の時間を家事関連に当てているとのデータを挙げ、「男性の育児休暇義務化によって家事や育児の分担が当たり前になるかもしれない」とコメント。「手伝い」ではなく、「分担」を強調しました。
松川さんの話を受けて、男性学を研究する大正大准教授の田中俊之さんは、賃金格差を挙げました。例えば、日本男性が30万円の賃金ならば、女性は20万円です。育児休暇中は66.7%の給付。「これでは男性が取ろうとはならない」と説明しました。
そして、結婚後の男女役割分担の問題について、「恋愛と結婚ともに男がリードするものという不平等な前提がある。恋愛ではスパイスなのに、結婚では面白みにならないからでは」と投げかけました。「恋愛相手と結婚相手は、ある意味区別しなければなりません。これを分かってないと悲劇は繰り返されます。おすすめは頑丈な人です」と独身女性に向けてアドバイス。会場の笑いを誘いました。
可視化されてきた差別や貧困 求められる法整備
ようやく目を向けられるようになった「LGBT」が抱える問題。「性は本来二極化したものではなく、グラデーションです」と話すのは、一般社団法人fair代表理事(ユース代表)松岡宗嗣さん。同性愛者であることを公表し、講演活動などをしています。同性愛者が受けるいじめ被害、就職面接での差別などに触れて、理解を深める教育や法整備の必要性を訴えました。
アメリカのシングルマザーにおける貧困について語るジョージタウン大のメラニー・バービアさん。
シングルマザーの抱える貧困問題については、アメリカとフランスの例が挙がりました。
ジョージタウン大、女性・平和・安全保障研究所長のメラニー・バービアさんによると、アメリカのシングルマザーは1200万人で、そのうち25%は貧困家庭。公的な補助金の額が州によって開きがある、低価格で利用しやすい保育を得られにくい点などの課題があります。
女子差別撤廃委員会(CEDAW)副委員長のニコル・アムリーヌさんは、フランスでもシングルマザーは低い賃金で働くケースが多く、トレーニングも受けられず、良いキャリアを築けないと説明。有効な取り組みもされているが、まだまだ十分ではないと述べました。
ウーマンエンパワーメントの次はマンエンパワーメント
続いてのパネル・ディスカッションは、「労働におけるジェンダーギャップを解消する:ハッピーなワークとライフの実現へ」です。日本のジェンダーギャップ指数は、2018年は110位。2010年は94位でした。
モデレーターで東京芸術大理事の国谷裕子さんは、「他国が積極的に取り組んでいるからではなく、社会規範、男女役割分担意識などにあるのではないか」と日本の問題点を指摘。NHK「クローズアップ現代」のキャスター時代を彷彿とさせるテンポのいい仕切りで、グローバル企業の代表者らと克服例や課題点について意見を交換しました。
固定化されたリーダー像はいらない
まず、KPMGインターナショナル・グローバル人事統括者のスーザン・フェリエーさんは、長時間労働問題を取り上げました。顧客要求が厳しく、明朝9時までにと言われれば、徹夜の仕事を強いられる現状を述べ、改善点として顧客と対話すること、社内トレーニングなどを挙げました。
男女の賃金格差是正に成功したフィリップモリス インターナショナルのステイシー・ケネディさん。
男女の賃金格差是正については、フィリップモリス インターナショナル南アジア&東南アジア・リージョン担当社長のステイシー・ケネディさんが、成功事例を紹介。同社は、2018年の男女賃金格差が0.4%だそうです。容易な道のりではありませんでしたが、全てのチャンスを女性に与えられるよう評価基準を見直したと発表しました。
無意識の偏見をなくす例として、さまざまな女性リーダーの存在が果たす役割を挙げたのは、外資系ベンチャー企業のUber Eats日本代表執行役員の武藤友木子さんです。固定化されたリーダー像が女性の中にあると、「自分には無理」と思ってしまいがちです。しかし、「働き虫がいたり、定時に上がるリーダーがいたりと多様であれば、自分に合うロールモデルを見つけることができます」と話しました。
Uber Eatsの武藤友木子さん(写真中央)と資生堂の山本尚美さん(同右)。
「名もなき家事」に目を向けて
いわゆる「名もなき家事」については、株式会社資生堂執行役員、クリエイティブ本部長兼社会価値創造副本部長の山本尚美さんが言及。「夫が家事を半々で分担している認識でも、妻の評価では2割」という調査結果を例に取り、「男性の認識、意識を変えなければ。ウーマンエンパワーメントの次は、マンエンパワーメントです」と語りました。
これを受けて、「ありがとうございます。ここにいる意味がようやく分かりました」と応じたのは、損保ジャパン日本興亜株式会社取締役、専務執行役員の伊東正仁さん。最初の自己紹介では、「男性1人で座っていることで、勇気のある人だと思っていただけたのでは」と言い、会場からクスクスと笑い声があがっていました。伊東さんは、男女間のギャップに限らず、世代間でもコミュニケーションを取ることが大事だと発言しました。
男女間、世代間コミュニケーションの大切さを述べる損保ジャパン日本興亜株式会社の伊東正仁さん。
最後に、「幸せな生活の実現に必要なこととは何か」という国谷さんの問いに、伊東さんから「成功例を積むこと」、ケネディさんから「自分のアイデンティティを見失わないこと」などが出され、ディスカッションタイムが終了となりました。
取材・文/土田ゆかり

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