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女性と仕事

怖いのは、挑戦している証拠。あなた自身の価値に気づいて!/吉田晴乃さん

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これからの日本や世界にとって、ジェンダーギャップの解消は大きなテーマのひとつ。その流れをリードする「W20(Women20)」でJapan 2019運営委員会の共同代表を務めるのが、吉田晴乃さんだ。W20とは、G7各国をはじめとする20か国が参加するG20のエンゲージメント・グループとして、G20に対して女性に関する政策を提言する組織。

吉田さんは、海外でシングルマザーとして働きながら、「女性」「東洋人」という逆境に立ち向かってきた。インタビューでは気さくに冗談を言いながらその場を和ませる。それでいて、優美でピリッとした緊張感も併せ持つ。これまでのキャリアや生きる上の軸とともに、次世代を担う女性たちへのメッセージを語ってもらった。

吉田晴乃(よしだ・はるの)さん
慶應義塾大学卒業後、カナダに移住し、その後アメリカ、日本、イギリスと4か国5社の情報通信技術系企業に従事。2012年、BT社の日本法人初の女性CEOに就任(2018年まで)。2015年に日本経済団体連合会(経団連)の審議員会副議長に就任。同時に初の女性役員、女性活躍推進委員会委員長を務めた。2016年、総理大臣の諮問機関、内閣府の規制改革推進会議委員。2017年米国のフォーチュン誌のWorld's Greatest Leader50 の一人に選出される。現在、W20の共同代表として活動するかたわら、英国オックスフォード大学院にて経営学を研究。慶応義塾大学評議委員。シングルワーキングマザーでもあり、国境を越え、幅広い人脈をもつ。

海外でシングルマザーに。「生きるため」に働いた

——わたくしは男女雇用機会均等法の1年生だったの。女性の募集要項には「容姿端麗」「頭脳明晰」くらいしか書かれていない時代。大学在籍中に就職は決まったけれど、大病をして卒業が遅れ、内定もお断りすることになったんです。

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バイリンガルではあったから、病気を治してから外資系の通信会社で仕事が見つかったのね。当時では珍しく、ひとり1台のアップルコンピューターが支給される最先端の仕事。アメリカ人の幹部はわたくしを活用してくれた。そこで見るアメリカのトップエグゼクティブの女性たちは、当時日本では見当たらなかったパイオニアだと感じた。そこで、わたくしの生きる道は海外にありそうだと直感しました。

結婚と共にカナダに移住して、ローカルの通信会社で働いた。そこのマーケットで業績を上げて、社長賞などもいただいて。経済界が素晴らしいのは、「女性」「東洋人」というバイアスがかかっても、数字には勝てないところ。営業成績という数値で自分の価値を示せること。

のちに離婚してシングルマザーになったから、娘と生きるために必死だった。知恵を絞り、激しい競争の中で勝ち抜いていかなくてはならない。逆に道はまっすぐに見えた。まっしぐらに突き進むしかなかったから。

当時のことを思い返すと、「あそこに地雷があるよ」「大丈夫、正しい選択よ」と教えてくれるような、女性の先輩がいたらどんなに楽だったかと思う。自ら道を切り拓くしかなかったんです。だから今こうしていろいろなところで話すようにしているんです。

ライフラインを提供するミッションと、日本への想い

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その後、娘とアメリカに渡り、それまでと同じ通信事業の会社に勤めたの。生きるのに必死だったわたくしが、生きるミッションを感じたのは、9.11の事件。NYPD(ニューヨーク市警察)が、「携帯電話を使わないで」「通信の帯域を空けて」と絶叫している。わたくしたちが扱っているのは、ライフラインなんだと実感した。そこで大きな使命感にかられたの。

同じ時期、グローバルに身を置きながら故郷の日本を見るに、「日本にはいいものがあるのになぜ世界に出ないのか」「国際社会のエコシステム(業界の枠および国境を超えて、国や企業同士が共存していく仕組み)に日本が入らないのか」という気持ちも持っていた。わたくしなりに日本に向けていろいろなメッセージを送っているつもりでいたけれど、なかなか届かない。テクノロジーの世界にいて、日本のモノが世界に刺さっていない現状を見て、日本が離れ小島になってはいけないと感じていたんです。

日本に戻ってきたのはやはりDNAに刻まれているものがあるのね。わたくしがこれまでしてきた経験はとても過酷ではあったけれど、それを伝えたい。新しい生き方を提示していきたいのね。

怖くてたまらないのは、勇気を振り絞って挑んでいる証拠

日本で働きながら、女性では初めて経団連(日本経済団体連合会)の役員に選ばれたの。メンバーはもう、そうそうたる面々よ。日経新聞に出ている人、テレビのニュースに出ている人、そんな人ばかりが目の前にいる。この人たちが世の中を変えていく。その一人として座っているんだと思うと、とても怖かったわ。

初めて手をあげたとき、きっとその場にいる方たちは「女性が何を発言するのか」と耳をそばだてていたと思う。素知らぬ顔をしているけれど、その気配を強く感じた。怖気づきそうになったけれど、わたくしは世界の何十億人の女性を代表しているんだと感じたの。「がんばれ」という声が聞こえるようだった。

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ジェット機も、抵抗する空気圧がないと飛べないでしょう。わたくしたちも同じ。抵抗がない時、怖れがない時は、前に進んでいないのよ。怖い時こそ、正しいことをしている。つまり、勇気と無鉄砲は紙一重だということ。無鉄砲なときは怖くないけど、勇気っていうのはリスクを覚悟で、それでも前に進む決意。だからとても怖いものなのよ。

人生の美意識はひとことでは語れない。自分に問うことで答えがわかる

仕事で大切にしていることは、人生における美意識みたいなもの。どんなに得をすることでも、醜いことはしないわ。だけど、迷うことはあります。経営者として、消えてしまいたくなるような決断をすることも……。日々、矛盾することに立ち向かわなくてはならないの。そんなときには、「これは吉田かな?」と自分に聞く。「吉田らしくない」と思ったら、それは私の美意識にそぐわないってことよ。そうしたら考えなおさなくてはならない。そうやって、自分の美意識にそぐった生をデザインすることが大切だと思っています。

これからの時代を担う女性には、自分の価値に気づいてほしいと思う。「あなたがそのままでそこにいるだけで、実はどれだけ人のためになっているか」と伝えたい。自分の価値に気が付いた時に初めて、隣の人が輝いていると気が付くの。だから、誰かの価値を見つけるために、まずは自分の価値を見出さなくてはなりません。まず、自分が幸せになってから、人を幸せにしてあげられるということね。

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人は誰しも、思い込みやバイアスの呪縛に生きている。脳の活動を知るとね、まずは「Belief(信念)」が自分の根幹としてある。その周囲に「Perception(認知)」があり、さらに外側に「Behavior(行動)」があるの。ボールが飛んできたら避ける、という動物的反応は、Beliefがそうさせている。でも、もし自分をキャッチャーだというInputがあれば、野球のボールが飛んできてもキャッチするでしょう。そうしてBeliefを変えれば、Behaviorが変わるの

これからもっと女性が自分自身の価値に気が付き、社会で輝いていくためには、Beliefを変えていく必要があるはず。「Reshape the Belief」という言葉を、これを読んでいる方々に贈りたいと思います。

撮影/柳原久子


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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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