コラムニストで作詞家のジェーン・スーさんに、自身が体感した「平成」を、流行語とともに振り返ってもらった前編。対する後編はスーさんのキャリアや仕事観にフォーカスします。その過程でスーさんが提案した「社会と自分の因数分解」の真意とは?
ジェーン・スーさん
1973年、東京生まれ。コラムニスト・作詞家。著書に『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(講談社エッセイ賞受賞)、『生きるとか死ぬとか父親とか』などがある。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のパーソナリティを務める。
「ワークワークノーバランス」の仕事好き
——2019年春、スーさんは社会人として24年目を迎えられました。これまで仕事に対してどのように向き合ってこられましたか?
ジェーン・スー(以下ジェーン):私は仕事がすごく好きなんです。今も平日はTBSラジオに毎日出演していますし、週末は最新作『私がオバさんになったよ』の宣伝で日本全国をまわらせてもらっています。合間に連載コラムを執筆して。
——休みがない! ワークライフバランスを整えたい、みたいな思いは芽生えませんか?
ジェーン:それが……働いておきたいんですよね。どちらかと言えば、自分で自分を律して休ませなきゃマズいと思っていて。だって「ワークワークノーバランス」ですもん。ブラック企業ならぬブラック“個人”だなって我ながら思うほど(笑)。
——スーさんをそこまで仕事に駆り立てるものって?
ジェーン:創意工夫して成果を出すのが楽しいんですよね。自由に動きながら、自分でアイディアを出して決断して。その効果を検証するような仕事が、単純に向いているんだと思います。
レコード会社では所属アーティストの宣伝を担当し、次に入社したメガネのベンチャー企業では、流通の川上から川下まで一貫して見ることができました。与えられた枠組みの中で「どうやってインパクトを与えるか」を考えるのが楽しくて。
——スーさんの仕事が印象に残れば、CDやメガネの売上に直結すると実感できた。
ジェーン:はい。特に小売業は格別です。自分たちが考え抜いた努力の結晶に、人様がお財布を開いてくださる。商品を手に取ったお客さんや関係者のうれしそうな顔を眺めていたら病みつきになりました!
いつのまにか、“好き”から“得意”へキャリアシフト
——その後はコラムニスト、ラジオパーソナリティとして広く世に知られるようになります。社会人1年目と現在で、スーさんの仕事観に変化は生じましたか?
ジェーン:“好き”なことから“得意”なことに、キャリアをシフトしたことでしょうか。コラムもラジオも、生業にしたいと思っていたことはそれまで一度もなかったんですよね。好きが高じて、念願叶って……というわけではないので肩の力が抜けていて。
——執筆やトークが「人より得意かもしれない」と気づいたのは?
ジェーン:mixiが流行っていたころ、日記を毎日のように書いていました。それを読んだ友人から「一銭も入るわけじゃないのに、なんでこんな頻繁に更新してるの?」とよく言われて(笑)。当時は自覚がなかったんですけど、そのくらい私の中では書くことが自然な行為でした。そのうちに日記を読んだ編集者から、執筆依頼をいただくようになって。
ラジオも、友人の番組に「出演してみない?」と誘われてキャリアが始まりました。これはプロモーター時代の経験が活きているかもしれないですね。ラジオ局で担当アーティストの音源をかけてもらうために、うまく話してアピールしなければならなかったので。染みついた習性が出ていたのかも。
「全部私が悪い」でも、「すべて社会のせい」でもなく
——他人に指摘されて“得意”に目が向いたのですね。それ以外に「これからの時代、こうするともっと自由に・楽に生きやすくなるのでは」というヒントを教えてください。
ジェーン:抱えている悩みの原因が、社会のシステムと自分のどちらにあるのか……という“因数分解”を冷静にすることでしょうか。そうすると、起こっている事態への攻略方法が増えるんじゃないかと思います。
「子どもを保育園に入れるのが大変だから、認可園に入れるために次の子は◯月に産む」と言っていた友人がいました。厳しい現実にすさまじさを感じつつ、現状の不完全なシステムに対応する方法として編み出された案なんだなと感心もしました。
——でも因数分解の結果を都合よく解釈して、すべてを社会のせいにする人が現れそうです。
ジェーン:そうかもしれませんね。ただ、すべてをシステムのせいにしたって誰も助けてくれません。私は解決策を模索していくのと同時に、現実にもしたたかに対応していきたい。社会が間違っていると訴えることはとても大切ですが、残念ながら即座に対処されることはなかなかありませんし、解決までずっと待っているのは時間がもったいないと思ってしまうんです。
だとしたら、自分の特性を生かして現実とどう向き合うか……に頭を使った方が建設的だと私は思います。「万全の条件下でなくても、自分の活かし方を見つけられた!」となれば自信につながりますし。だから自分を消耗させる「全部私が悪い」でも、他力本願の「すべて社会のせい」でもなく、両方に対して“因数分解”を行って、対処していくようになりました。
——どうもありがとうございました![了]
撮影/キム・アルム、取材・文/岡山朋代
ジェーン・スーさんの最新作『私がオバさんになったよ』を3名様にプレゼント!
社会のシステムを冷静に見つめながらも、自分の能力を活かす。そんな生き方のヒントを与えてくれたスーさん。最新作『私がオバさんになったよ』では、光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さんというわが道を歩く8人と対談しています。この本を、3名様にプレゼントいたします。
応募締切:2019年5月19日(日)
提供:株式会社幻冬舎

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