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テック業界をインクルーシブに。いいものを作るためのダイバーシティ/All Turtles フィル・リービン氏[前編]

ドキュメント管理クラウドサービスを提供するEvernoteの共同創業者として知られるフィル・リービン氏。

これまでベンチャーキャピタリストとしても多くの起業家を支援してきました。そうしたなか、従来のスタートアップモデルに限界を感じるようになっていったと言います。

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フィル・リービン(Phil Libin)さん/All Turtlesファウンダー・CEO
90年代より米国で複数の事業を立ち上げてきた連続起業家。2007年にドキュメント管理クラウドサービスを提供するEvernoteを創業しCEOに就任。2015年に同社のCEOを退任後、米ベンチャーキャピタルのゼネラル・カタリスト・パートナーズに参加。2017年5月、AI(人工知能)関連の自社プロダクトに加え、スタートアップや大企業の新規製品開発を支援する新会社 All Turtles(オール・タートルズ)を設立。

起業のあり方を見直し、テック業界をインクルーシブに

投資家から資金提供を受けた起業家は、短期間で結果を出すことを求められます。そうしたプレッシャーのなかでは、自分と似た人と仕事をするほうが話が早いという発想になってしまう。テック業界の人員構成が白人やアジア系の男性に偏っているのはそんな背景があります。

これでは、テック業界はなかなかインクルーシブにならないし、特定の人の視点しか反映されていなければ、本当に世の中の人に役立つ製品やサービスは生まれません。

アイディアを持った人が最初から「会社の成功」にこだわらなくても製品を世に問える環境をつくることで、これまで埋もれていた才能を掘り起こせるはず。多様な人々に、余裕をもったタイムスパンのなかで社会的に意義のあるプロダクトを生み出してほしい。そう考え、リービン氏は「All Turtles(オール・タートルズ)」という起業支援の会社をつくりました。

現在はサンフランシスコ、東京、パリの3拠点で「スタジオ・カンパニー」と社内で呼ばれている多数のプロジェクト・チームが稼働中。All Turtles (オール・タートルズ)からデザインや技術、営業、財務などプロダクトや経営面のサポートを受けながら、AIを活用した製品やサービスを開発しています。

ジェンダーギャップはなぜ生まれる?

ダイバーシティやインクルージョンの問題は、まさにMASHING UPのコアとなるテーマ。女性の起業についても、これまでのカンファレンスで度々議論が交わされてきました。リービン氏の経験やAll Turtles (オール・タートルズ)の取り組みから学べることは多いはず。MASHING UPコンテンツディレクターの中村寛子がリービン氏にお話を伺いました。

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中村:はじめに、日本の状況をシェアさせてください。起業家についての日本政府の統計によると、女性は男性の約半数以下(※1)。女性起業家の事業規模は小さく、個人所得も約7割が100万円以下と非常に少ないです(※2)。資金調達にも苦戦しています。

リービン氏:私がいる米国のテック産業でも女性起業家は少数派です。そもそもテック企業で働いている女性の絶対数が少ない。科学技術系の学位を取る女性が少ないことに始まり、あらゆる段階でふるいにかけられ、最終的に大きな差が生まれています。

バイアスを持たないだけではダメ

リービン氏:企業の採用担当者やベンチャーキャピタリストなど、女性やマイノリティに対し偏見を持たないよう心がける人は多いと思います。でも、それだけでは不十分で、プラスアルファの努力が必要です。

例えば、資金調達の面でジェンダーギャップが生まれてしまうのは投資家が男性の起業家とばかり会っているから。採用に関しても同じです。

中村:日本でも女性活躍が叫ばれるようになり、企業も女性の採用に積極的になっています。ただ残念なことに、数優先でスキルや経験が二の次になってしまうことも。男女比率のバランスを正しつつ、適任者を選ぶにはどうしたら良いと思いますか?

候補者選びの段階から偏りをなくす

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リービン氏:All Turtles (オール・タートルズ)では人材会社を活用しています。手数料を払ってでも、候補者のバランスをフェアにしたいからです。

自分たちのネットワークだけだと、どうしても白人男性ばかり集まってしまう。その偏りをなくすため、人材会社には女性とマイノリティの候補者を重点的に挙げてもらっています

選ぶプールの割合を50:50にすることから始めないと。数少ない女性のなかから選んでも、適任者である可能性は低いですからね。時間も資金も限られているスタートアップにとっては難しいかもしれませんが、ある程度余裕が出てきたら、そうした努力をすべきです。

人選そのものは重要じゃない?

リービン氏:人事に関して言うと、大きく分けて3つの段階があると思っています。採用のための候補者集めがステップ1、そこからの人選がステップ2採用後のキャリア形成がステップ3です。

ステップ1でいい候補者をたくさん揃える。そして、ステップ3では、社員に力を発揮してもらえる環境を整え、合わないと思った人には思い切って辞めてもらう判断をする。

それができれば大丈夫。私はステップ2はさほど重要ではないと考えていて、ステップ2では極端な話、誰を選んでも大差ないんです。面接で良さそうに思えた人が、本当にその仕事に合っているかは実際のところ分からないですし。ステップ2を重視する企業が多いようですが、ずっと継続するものだから、実はステップ3が一番難しく、かつ重要なんです。

良いものを作るためダイバーシティは不可欠

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中村:女性もそうですが、LGBTQや障害を持つ人を取り囲む環境はさらに厳しいです。障害者雇用に関しては、数合わせ重視でうまくいかないケースも多いですし。義務感からだけでインクルージョンに取り組むには、限界がありますよね。

リービン氏:まさにそうで、ダイバーシティやインクルージョンは良い製品を生み出すために不可欠です。特に、AIを扱った製品やサービスを提供する私たちの会社は、この問題には特に神経を使う必要があります。幅広い見方や経験が反映されないと、AIは偏った判断をしてしまい、もとからあるバイアスを助長しかねませんから。

一過性の流行には終わらない

リービン氏:All Turtles (オール・タートルズ)で動いている6つの主要プロジェクトのうち、3つは女性が率いています。また、私が投資家として資金を提供してきた起業家のうち、約半数は女性CEOです。

中村:素晴らしいですね。残念ながら、ダイバーシティ推進関連の活動は費用対効果が少ないので継続は難しいと考える企業が多く、単なる流行と捉えている人もいます。

リービン氏:すぐに利益に直結しなくても、長い目で見れば確実に結果は出ます。ダイバーシティは一過性の流行には終わらないでしょう。

古くから日本企業で共有されている考えだと思いますが、ビジネスのゴールは利益を上げることだけでなく、社会のなかで役に立つことです。フェアな環境を作って社会を良くすることも、そこに含まれるのではないでしょうか。

※1 2014 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

※2 女性起業の現状と課題

後編はこちら>>


All Turtles, Inc.

取材・文、撮影/野澤朋代

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