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- ビジネスと環境の関わり方で未来は変わる? ヒントは「サーキュラーエコノミー」にあり/530 conference 2019開催レポート
ここ数年、その深刻さに話題を集める海洋のごみ問題。プラスチックごみを誤食したり破片がカラダに巻き付いたりしている海洋生物の姿を見て、胸が痛むのと同時に、申し訳ない気持ちにさいなまれます。
2050年には、海洋にいるすべての魚と海洋プラスチックごみの量が同等になると予測されています。
しかし問題は海洋生物に限ったことではありません。そう遠くない、いえ、かなり近い将来に“全人類”の生活がおびやかされると予測されるほど、地球の健康状態は悪化しているのです。
2019年5月30日(木)、渋谷のTRUNK(HOTEL)とSHIBUYA CAST.のふたつの会場で、サスティナブル(持続可能)な社会の実現に向けて、個人だけでなく“ビジネスが環境とどう新しい関係を築くか”を考えるイベント「530 conference 2019」が開催されました。530は“ゴミゼロ”と読みます。
遠い未来の話じゃない。このままでは2030年にも大変なことになる?
WWF(世界自然保護基金)が警告するのは、急増する世界人口とそれに伴う過剰消費の悪循環によって、現在の生活水準のままでは2030年までに地球2個分以上の二酸化炭素吸収能力と天然資源が必要になるということ。
さらに、2050年までに多くの主要な物質資源は、いま現在ある埋蔵量をほぼ使い切る、または種類によっては埋蔵量の2倍以上の量が必要になることも発表されています。
渋谷のTRUNK(HOTEL)で行われた基調講演。
カンファレンスでは、戦略コンサルティングファームであるモニター デロイトで日本リーダーを務める藤井剛(たけし)さんが基調講演をおこない、「プラスチックごみ問題ばかりが声高に叫ばれていますが、地球の資源が足りなくなるということを忘れないでほしい。ごみと資源の2本の柱で考えなければいけない」と強調しました。
プラスチックのストローを使わない、ペットボトルではなくタンブラーを持ち歩く、といった個人のアクションももちろん大切なことですが、それだけではどうしても間に合わない状態です。
モニター デロイトの藤井剛さん。
「ヨーロッパを中心に、世界のさまざまな企業がサーキュラーエコノミー(循環経済)を経営の中核に据えています。日本はサーキュラーエコノミー先進国という見方もある一方で、企業が自ら主体的に動かなければ後進国化してしまうでしょう。企業が競合他社の垣根を取り払い、業界全体でサーキュラーエコノミーに取り組むこと、政府やNPOなどの団体も一緒に市場を作っていくことが大切です」(藤井さん)
では、どうしたら? 「サーキュラービジネスモデル」でヒントを探る
もちろん、日本でもさまざまな企業が環境問題に取り組み始めています。
基調講演後のワークショップでは、ワタミ(外食部門・宅配部門)、サントリー、花王、スターバックス、リコー、コロナ エキストラといった企業や複合施設であるSHIBUYA CAST.の担当者が参加者と同じテーブルを囲み、各社の取り組みを紹介。さらに、サーキュラービジネスモデルのアイデアを出し合いました。
参加者は、社会人、主婦、大学生などと立場は違いますが、環境のことを考える気持ちは同じ。それぞれの視点から積極的に意見を交換し、最後はグループごとにプレゼンテーションを行いました。
アイデアの一例は、余った食材を企業や大学生協などで販売して食品ロスを減らす、容器をコンポストできる素材でつくってリサイクル時に使うエネルギーを減らす、プラスチックのカップではなくマグカップやグラスを使う、業界で提供する容器を統一し、デポジット制にしてどこのコーヒーチェーンでもコンビニでも回収できるようなシステムをつくる、といったものでした。
実際に、もう取り組んでいる企業も。私たちがこれから考えるべきことは
SHIBUYA CAST.で行われたトークセッションの様子。
また、「再生型サプライ」「回収とリサイクル」「製品寿命の延長」「シェアリング・プラットフォーム」といった内容をテーマにしたトークセッションもおこなわれ、さまざまな業界の企業が取り組みや課題を語り合いました。
たとえばフリマアプリで人気の「メルカリ」は、じつは地球環境にも重きを置いている会社。地球資源を大切に使い、「捨てる」をなくすということも最終的なゴールのひとつとして掲げています。
左から、の〜ぷらのノイハウス 萌菜さん、メルカリの田原純香さん、FREITAG lab. Japanの脇野友輔さん、CIRCULAR ECONOMY JAPANの中石和良さん。
「いらないものを次の人に渡して新しい価値を生み出すことはサーキュラーエコノミーの理にかなっていますが、配送に伴うCO2の排出や梱包資材の使用で環境に負荷をかけるのも確かです。梱包資材を工夫したり、配送業者と連携したりして再配達の回数を減らすなどの取り組みをしていきたいと思います」(メルカリ・田原純香さん)
その言葉どおり、イベントの数日後には数百回も繰り返し利用できる梱包材『メルカリエコパック』の発表がありました。
また、トラックの廃材でつくるメッセンジャーバッグが人気のブランド「フライターグ」は、製品とともにブランドのフィロソフィーも一緒に受け入れられています。
「お役御免になったトラックの幌(ほろ)は、防水性がある点はいいのですが、汚いし、キズもにおいも残っています。これらは一見するとネガティブなことに思われがちですが、お客様は廃材ならではの特徴に新しい価値を見いだし、ブランドの思いに共感してくださる。とてもありがたいことだと思っています」(FREITAG lab.Japan・脇野友輔さん)
ヨーロッパの企業が牽引する企業のサーキュラーエコノミー。日本が乗り遅れて後進国化しないためにも、企業同士が手を取り合い、国や団体も巻き込んで本気で考えていかなければいけません。
そして個人も決して人任せにせず、社会の小さな単位である家庭でも、できることに取り組まなければと考えさせられるイベントでした。
[530 conference 2019]撮影/530 conference 2019公式

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