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対等な関係でいたいから、私たちはペーパー離婚を選んだ/伊是名夏子さん #ふたりのはなし

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伊是名夏子さんとパートナーのAさん。結婚前の4年間を過ごした沖縄で。(撮影: 佐藤健介)

「好きな人と結婚して、相手の名字を名乗れるなんて、幸せ」
結婚をするとき、そう考える女性って、実際はどれくらいいるのでしょうか。

2019年3月、「ペーパー離婚」をしたカップルがいます。コラムニストの伊是名夏子さんとパートナーのAさん。当初は籍を入れない事実婚を選んだというお二人が、なぜ法律婚を選び、さらに再び事実婚に戻したのか。その経緯を伺いました。

伊是名夏子(いぜな・なつこ)さん
コラムニスト。1982年、沖縄県で生まれる。神奈川県在住。骨が折れやすい障害「骨形成不全症」のため、電動車いすを使用。身長100cm、体重20kg。パートナーと5歳、3歳の子どもの4人暮らし。家事や育児を10人のヘルパーと共に奮闘中。「助け合う」をテーマに、16歳から講演活動もしている。今年5月、著書「ママは身長100cm」 (ハフポストブックス/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓。

事実婚は自然の流れだった

——お二人の出会いは?

伊是名夏子さん(以下、伊是名):大学時代のサークルです。二人とも20歳くらいのときで、彼はキラキラしたさわやか青年。私が何回かアタックしたんです。断られ続けたけれど、最終的には、就活で悩む彼のエントリーシートを添削したり、アドバイスしたりしているうちに付き合うことになりました。

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沖縄に住んでいた頃。「休みの日は、海や山など、あちらこちらに遊びに行きました」(伊是名さん)。

——結婚を意識されるようになったのはいつ頃ですか?

伊是名:大学卒業後しばらくして、彼が仕事で沖縄に転勤になったんです。私も教員を目指して沖縄に戻ることになり、小学校の英語指導員をしながら半同棲を始めました。それから、彼が香川県に転勤になったのを機に、2010年に結婚しました。

——籍を入れない「事実婚」を選ばれました。

伊是名:小さいときから、好きな人の名字になりたい!という気持ちは全くありませんでした。自分の名前が大好きでしたし、この名前が私自身のアイデンティティを表すものだと思っています。周りにも事実婚の人たちが多かったので、自然の流れでした。

事実婚は、手続き自体は難しくありません。「未届けの妻」として住民票を出すだけ。ただ、生命保険や親権のことなど、色々と勉強する必要はありましたね。

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結婚式は、紅型をあしらったドレスとシャツをオーダーメイドした。

——ご長男の妊娠を機に、婚姻届を出されました。どうしてでしょうか。

伊是名:身長100cmの私の妊娠、出産はハイリスクでした。万が一のことを考えたときに、婚姻届を出しておいた方が手続き上便利だったからです。

例えば、事実婚のまま非嫡出子で出産した場合、親権は私が持ちます。もしも私が亡くなったら、パートナーに自動的に親権が渡らず、煩雑な手続きが必要になります。また、出生届も私が直接出す必要があり、彼に頼むとしても代理届が必要になるんです。

——なるほど。でも、大好きな名前を変えるのは、一大決心だったのでは?

伊是名:はじめは彼に名字を変えてほしいと頼んだのですが、絶対に「うん」と言ってくれなくて。結局私が折れました。

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「娘はパパっ子、息子はママっ子です」。子どもたちは車いすに乗るのも大好き。(撮影: 佐藤健介)

——名字を変えてみて、どうでしたか?

伊是名:ちょうど今住んでいる神奈川県に引っ越してきたところだったので、周りには私が「伊是名夏子」であることを知っている人がいません。病院などで夫の姓で呼ばれても、「あ、私のことか!」という感じ。自分が自分ではないような違和感がずっとありました。

名前という大事なアイデンティティを取り戻し、ようやく元の自分に!

——2013年に長男を、2015年に長女を出産されてから、今年(2019年)、ペーパー離婚をされました。

伊是名:ようやくです。もう子どもを持つことはないな、と思ったので、決めました。やっと大好きな名前の、元の自分に戻れた!と本当に嬉しくて。パートナーの名前でいることがいかに窮屈だったかを痛感しました。

—— Aさんはペーパー離婚についてはすぐ同意してくれたのでしょうか?

伊是名:周りの目が気になって、最初はためらいがあったみたいです。でも、実際に離婚した今は、家族4人で暮らす生活は全く変わらないので「実感がないくらい」だそう。「結婚は紙上の契約で、それ以上に気持ちのつながりがつくり上げるものだと改めて実感した」と言っていますよ。

——周りの反応はどんな感じでしたか?

伊是名:「ペーパー離婚をして、事実婚の夫婦別姓です」って言っても、ピンとこない人も多いみたい。市役所で離婚の手続きをしたときも、窓口の人がぽかんとしていました。夫婦別姓の裁判も起き、メディアでも取り上げられはじめているのだから、もう少し勉強してほしいですよね。でも名字が変わったから、病院などで誤解されたり、「離婚しちゃったの?」ってヒソヒソ囁かれたり、周囲に心配されたこともありました。

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ようやく出せた離婚届。住民票は「未届けの妻」という表記に。

戸籍制度に抱いている疑問

——たしかに、メディアでも取り上げられはじめています。

伊是名:夫婦別姓のポイントは、同姓か別姓か「選べるようにしよう」ということ。夫婦同姓を禁止するものではありません。自分らしく生きられるかたちのひとつとして、“選択的”夫婦別姓を求めているのです。

——夫婦別姓だけでなく、戸籍制度そのものを疑問視する声もありますね。

伊是名:私も戸籍制度には反対です。一人暮らしの独身の人が生活保護をはじめとする制度を使いたくても、戸籍に縛られ、個人としてのサービスを受けづらくなることがある。生まれた時の家族の戸籍に入ったままだからです。また私のような障害者がヘルパーを使いたくても、「家族が介護するのが当たり前」と思われてしまい、利用が難しいことがあります。

一人ひとりが必要なサポートを受けられるようになるため、戸籍制度そのものを考え直すべきなのではないでしょうか。

名前を変えるとしたら、次は彼の番

——婚姻届を出さないということは、法的に関係を縛るものがないことでもあります。法律婚と事実婚で、パートナーシップに違いはあるのでしょうか?

伊是名:子どもの頃、母に言われました。「子どもとは血の繋がりがあるけれど、夫婦にはない。お母さんはいざとなったら、いつでもどこにでも行っちゃうわよ」って。今、本当にそうだなと実感しています。

法律婚であれ事実婚であれ、パートナーとは、お互いに選んで一緒にいます。この関係を続けていけるかは、今をどうやって過ごすかにかかっている。良いときも悪いときもあって、変化していくけれど、それらが積み重なっていくのがパートナーシップというものですよね。

また、パートナーシップを良好に保つためには、周りに助けを求めることも大切。我が家は10人のヘルパーさんと子育てをしていますが、世の中には色々な人がいて、色々な家族のかたちがあるんだ、ということを子どもたちには学んでほしいなと思います。

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「5歳と3歳の子どもとの日々はにぎやかですが、毎日てんやわんやです」。(撮影: 佐藤健介)

——パートナーシップについて、お二人で話すことはありますか?

伊是名:彼は、パートナーとは対等でありたいという人。パートナーシップは、コミュニケーションと思いやりを大事にして、二人でつくりあげていくものだよねって話しています。そのためには、家庭での約束事を守ることも欠かせません。ゴミを捨てる、お風呂を洗う、シャンプーがなくなったら補充しておくなど、日常生活の些細なことですけれどね。彼は結構忘れがちなんですよ!

——そういった日々の不満はどのように伝えていますか?

伊是名:もうペーパー上は離婚したので、不満が溜まっても、「もう離婚する!」とは言えなくなっちゃいましたね(笑)。彼には私の好きなお菓子のお店リストを渡してあって、約束を忘れたときは、「お詫びの品」を買ってきてくれることになっています。でも、この前、私が事故に遭い10日間の緊急入院をしたときは、会社を数日休んで、初のワンオペ育児を頑張ってくれて、ちょっと見直しました。パートナーも、子どもとの距離を縮められてよかったみたい。

——今後は、どんな関係を築いていきたいですか?

伊是名:私とパートナーは真逆の性格。私は計画的でポジティブ、彼は瞬発力があるけど、時々悩みすぎる面も。お互いに補い合って、子どもが成長した後も一緒にいたいと思える関係を築いていきたいですね

それからいつでも対等な関係でありたいので、もしまた何らかの理由で法律婚をする、という状況になったら、今度は彼が名前を変える番だなと思っています。

パートナーシップとは、コミュニケーションと思いやりを大事にして、二人でつくりあげていくもの。
お互いに補い合って、いつまでも一緒にいたいと思える関係を築いていきたい。

写真/伊是名さん提供、取材・文/土田ゆかり

伊是名さん初めての本が出ました!

ママは身長100cm

伊是名夏子 「ママは身長100cm」
(ハフポストブックス/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

身長100cm、体重20kg、車いすユーザーの小さなママ。まわりを巻き込み、助け合う子育てのコツとは? パートナーシップに関しての伊是名さんの考えなども綴られています。


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土田 ゆかり
ライター。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。ジャンルは、ライフスタイル、医療など。趣味は色々で、ハマりやすく冷めやすい。でも、10年前に台湾でハマった中国茶は今も継続中。中国茶の魅力、おいしいものたくさんの台湾をみんなに知ってもらう!がテーマの料理会を今秋に開催予定。

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