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LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

食、仕事、出産、アイデンティティ。専門家たちが予想する本当の未来とは?

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2045年頃に迎えるというシンギュラリティ(技術的特異点)について各界の有識者と検証し、次世代の未来に遺すべき価値観を探る連続インタビュー。文化・教育アドバイザーの下村今日子さんとITジャーナリスト林信行さんと、“シンギュラリティと私たちの未来”を振り返ります。

──前回は、下村さん、林さんのシンギュラリティ観を伺いました。今回はVol.2 菊池紳さんの回から順番にトークを振り返りつつ、重要なキーワードを拾っていきたいと思います。

未来の「食」はどうなる?(菊池紳さん)

下村◇2つのポイントがあって、ひとつはフードロスや飢餓問題は食品の分配に問題があるので、AIがそれを是正してくれるだろう、という話。もうひとつはAIやロボットが社会実装されるようになると余暇が増え、結果、料理をする人も時間も増えるだろう、という話。

林◆さらには料理のみならず、作物を栽培する人も増えてくる。そうやって「全員参加型の食生活」が実現するだろうという展望が興味深かったですね。

下村◇忙しい時はオートメーションで作られたものを食べるけれど、ご馳走は自分の手で調理したり、どんなに小さくても畑を持っていて、自分の手で耕したりする。

つまり面倒な労働はAIやロボットに全部任せて、一番クリエイティブでおいしいところだけ、人間が引き受ける。普段の食事は外食だけど、特別な時だけ「私が栽培した野菜をお料理するから、みんな来て!」というのは、アリだと思います。

林◆調理の自動化に関連しては、たしかに日本の外食産業でも調理ロボットの導入がめざましい。だけど、たいていは「舞台裏」の存在です。アメリカは逆で、ロボットが料理を作る現場をショーアップして見せて、それ自体をウリにしている側面もある。その違いも興味深いですね。

私たちの意思で食の未来はポジティブになる/菊池紳さん[前編]

近い将来にシンギュラリティを迎えたら、私たちの食の未来はどう変わる? 食の流通とAIの関係をプラネット・テーブル菊池紳さんに聞きました。

https://www.mashingup.jp/2018/12/singularity2_1.html

AIやロボティクスは、食べ物と相性がいい/菊池紳さん[中編]

プラネット・テーブル菊池紳さんが考える「未来の食のあり方」は?FOOD5.0の概念も教えてもらいました。

https://www.mashingup.jp/2018/12/singularity2_2.html

2045年、食料危機は来ない。/菊池紳さん[後編]

食糧危機が来ない未来は実現可能? プラネット・テーブル菊池紳さんが説く、先入観や固定観念にとらわれない方法とは。

https://www.mashingup.jp/2018/12/singularity2_3.html

「仕事」はほんとうになくなるの?(林千晶さん)

林◆「コンバージェンス(統一化)とダイバージェンス(多様化)が並行して発生している社会の流れの中で、転職ならぬ「点職(個人がひとつの職種に縛られず、様々な仕事をプロジェクト単位で並行的に手がけるような働き方)」を奨励する……そんな千晶さんの視点が、とても面白い。

下村◇「ひとつの会社に就職して一生勤めあげる」なんて、もう誰も考えていませんよね。ついには日本政府も先日、兼業を認めるような声明を出しました(※)。

※ 2019年3月、日本政府が発表した「働き方改革実行計画」の中に「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」という項目があり、「副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」と述べている。

同じ職場でずっと同じ仕事を続けるよりも、キャリアの途中で大学に入り直して勉強して、また違う仕事に就いたり、あるいはさまざまな職種のなかに同時に在籍しながら、ひとつのビジネスに多面的に取り組んでゆくほうが、より発展的な世の中になるでしょう。

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林◆ちなみにこの「シンギュラリティと私の未来」に登場されたゲスト・スピーカーのほとんどが、すでに「点職」を実践されています(笑)。

われわれのように転職を繰り返してきた人も、だからといって、散漫なことをバラバラにやってきたわけではなくて、多業種に携わっていくなかで「人生において本当に大事にすべき価値観とは何か?」が見えてきたような気がする。これは、Vol.5 石川善樹さんの回の話題にもつながってきます。

ダイバージェンスの先に広がる新しい働き方/林千晶さん[前編]

シンギュラリティを迎えると、私たちの仕事/働き方はどう変わるのでしょう? ロフトワーク林千晶さんに聞きました。

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity3_1.html

きっかけを運んでくれるAIだったらウェルカム!/林千晶さん[中編]

シンギュラリティをひかえて、AIの進化と台頭によって“なくなる仕事”とそれ以上の脅威について、林千晶さんにインタビュー。

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity3_2.html

2045年は「知縁」 で結ばれてゆく /林千晶さん[後編]

明るい未来を切り拓くためには? より理想的で開かれた未来の「働き方」と「生き方」を林千晶さんに伺いました。

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity3_3.html

リアルとバーチャルの「私」とは?(久保友香さん)

下村◇日本の女の子の「盛り」を研究している久保さんによるとバーチャルな世界におけるアイデンティティのほうが“自分らしく”て、リアルな世界の自分はそうじゃない。林さんは、そんな実感がありますか?

林◆たぶんそれは、バーチャルな世界でどれだけ発信しているかによって、認識も変わってくるでしょう。たとえば僕は、バーチャルとリアルのアイデンティティがあまり乖離していないけれど、普通の会社員は、会社の看板を背負っているがゆえに自由に発信できないので、匿名化してゆく。つまり「バーチャルは本音で、リアルは建前」みたいになりがちです。

一方で、久保さんの研究対象である女子高生などは、LINEやInstagramで「いい恰好を見せたい」という願望がある。ネット上ならわりと自由がきくけれど、リアルな世界では経済的制約や容姿のギャップが払拭できない。「理想の私」と「現実の私」にはどうしても乖離がある。でもそれって、女性のみならず男性も、そして性的マイノリティの方々も、同時に抱えられている悩みでしょうね。

下村◇ただその一方で、今まさしくInstagramで「こんなにたくさんの友達とパーティやってるの!」って、その友達を有料レンタルしてくるサービスすらあるらしい。行きすぎたアイデンティの形成を支援した結果、それこそリアルな恋愛や結婚に将来的に収束していけるのか? そこは少し危うい感じもします。

日本の伝統美と「盛り」の共通点とは?/久保友香さん[前編]

日本女子の「盛り」カルチャーと「シンデレラ・テクノロジー」を研究する久保友香さんが語る、AI時代のアイデンティティとは?

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity4_1.html

出自ではなく「道具を使いこなせる人」が評価される時代へ/久保友香さん[中編]

シンデレラ・テクノロジー研究者 久保友香さんが解説する、世界的にも代わりつつある女性のアイデンティティって?

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity4_2.html

未来のアイデンティティは、今よりずっと人為的になる/久保友香さん[後編]

リアルな自分よりバーチャルな方が自分らしくなる時代が来る!? シンデレラ・テクノロジー研究者の久保友香さんに聞きました。

https://www.mashingup.jp/2019/01/singularity4_3.html

人生100年時代、どう生きる?(石川善樹さん)

下村◇「人生100年時代が到来して、われわれは退屈とどう向き合うのか?」ある意味これは、私たちにとって最大の課題ですね。

林◆一連のゲストの方たちみなさんが「この(シンギュラリティを目前にした)タイミングでもう一度、様々なことがらを考え直す局面に人類が来たのでは?」みたいな見解を示す一方、石川善樹さんだけが「未来の心配とか、別にどうでもいい」と(笑)。

でも結局、最後の最後には「死ぬ瞬間、自分の人生にとって何が一番大事だったか、その問いや課題や価値観を見つけることが大切だ」と話していた。それはVol.1で僕が話した「後世に何のミームを残したいか?」という問題意識にもつながります。

下村◇「自分の中にある“小さな問い”を大事にせよ」ともありますね。これからは問題発見能力がカギになってきます。「小さな問い」をずっと持つことによって、自分の使命に気づき、それを追求しつづけることによって(自分にとってポジティブな)ミームが残せる。

林◆AIが発達すれば「問いに対する解答」は機械が全部出してくれる。だけど「問いそのものを作ること」は、依然として人間に残された課題です。それでいうと、本連載に3人もアーティストが登場したことは象徴的。アーティストは、まさしく「問いを作る人たち」ですからね。

人は創造性を発揮しているときが一番楽しい!/石川善樹さん[前編]

「人生100年時代」と言われ長寿が現実になりつつある今、単に長生きできることは幸福なのでしょうか? 石川善樹さんに聞きました。

https://www.mashingup.jp/2019/02/singularity5_1.html

女性が不調になりがちなのは、生物としての宿命なのかも/石川善樹さん[中編]

2045年、人工知能(AI)と人間の能力が逆転する「シンギュラリティ(技術的特異点)」を迎えたら、私たちの仕事や暮らしはどう変わる? 石川善樹さんイ...

https://www.mashingup.jp/2019/02/singularity5_2.html

自分と真摯に向きあえば、2045年は自ずとやってくる/石川善樹さん[後編]

予防医学研究者・石川善樹さんに「ウェルビーイング(人がより良く生きるとは何か)」の気づきを得られるヒントを教えてもらいました。

https://www.mashingup.jp/2019/02/singularity5_3-html.html

「出産」の新しいカタチ?(長谷川愛さん)

下村◇長谷川さんの作品や発想は、世間一般への問題提起の力がすごく大きい。とくに「2045年には生殖の手段が多様になる」という指摘は衝撃的です。

林◆養子縁組から代理出産まで、生殖以外も含めた「子供を持つ」手段の多様化は、すでに始まっています。地球レベルでは人口爆発が恐れられている一方、日本みたいに少子高齢化を迎えた社会では、さまざまケースに対応せざるを得ないでしょう。

下村◇実話のアメリカ映画に興味深い事例があって、白血病に罹っていた子どものために、きょうだいが必要だった。そこで親は妹を産みました。だけどその妹は、2歳からずっと姉のために何度も手術台にのぼっている。彼女が11歳になったとき、自分から弁護士のところに行って、「親の都合で私が苦しみをずっと耐えているのはどうなの?」って裁判を起こしたのです。

そこでも「生みたい」のは親の都合。イルカと人間の子どもを「生みたい」のも親の都合だけど、そこで生まれてきれた子どもは本当に幸せなのか? つまり、次世代に対する責任まで考えないと、単に「子供を持つ手段の多様化」を称揚するだけでは、まずいでしょうね。<後編に続きます>

「子どもを持つこと」の新しい可能性/長谷川 愛さん[前編]

2045年の暮らしを考える人気連載。アーティスト/デザイナーの長谷川愛さんが描く、未来の性と生殖、パートナーシップとは?

https://www.mashingup.jp/2019/03/singularity6_1.html

出産のタイムリミットは無くなるかもしれない/長谷川 愛さん[中編]

2045年、人工知能(AI)と人間の能力が逆転する「シンギュラリティ(技術的特異点)」を迎えたら?長谷川愛さんインタビュー中編です。

https://www.mashingup.jp/2019/03/singularity6_2.html

データから子どもが生まれる未来がくる?/長谷川愛さん[後編]

アーティスト/デザイナーの長谷川愛さんが語る「性とジェンダー」のこと。そして、他者やマイノリティに対するバイアスの問題について。LIFE after...

https://www.mashingup.jp/2019/03/singularity6_3.html

下村今日子(しもむら きょうこ)さん/文化・教育アドバイザー
早稲田大学大学院公共経営研究科修士課程修了。教育や文化関連団体から、伝統工芸士からアーティスト、クリエーターまで幅広くサポートを行っている。創造の育成塾顧問、グローバルクラスメートアドバイザー、カルチャービジョンジャパン顧問、シンギュラリティナイト主催、他多数。アイスランド氷河クライミングなど、冒険家としての顔も持つ。

林信行(はやし のぶゆき)さん/ITジャーナリスト
1967年生。テクノロジーやデザイン、アートにファッション、教育や医療まで幅広い領域をカバーし取材、記事やTwitter、FBで発信。欧米やアジアのメディアで日本のテクノロジー文化を紹介するなど、海外でも幅広く活動している。ifs未来研所員/JDPデザインアンバサダー、著書多数。

聞き手/MASHING UP編集部、撮影/中山実華、構成/木村重樹

▶前編はこちら

「シンギュラリティ」って結局なに? ……で、人類はどう生きる?

文化・教育アドバイザーの下村今日子さんとITジャーナリスト林信行さんに聞いた、“シンギュラリティと私たちの未来”について。

https://www.mashingup.jp/2019/07/singularity12_1.html

▶後編はこちら

AIやロボットと暮らす未来。創造的に生き、幸せに人生をまっとうするヒント

各界の有識者が語るシンギュラリティとは?MASHING UPの連載を下村今日子さんと林信行さんが振り返ります。

https://www.mashingup.jp/2019/08/singularity12_3.html

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MASHING UP編集部

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