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じゅんびはいいかい? 末吉里花さんと始めるエシカルな冒険

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「見えない世界のことだけど ほんとうのはなし。
きみたちとぼくが生きる地球のはなし」

末吉里花さんがエシカルをテーマに作った初めての絵本『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』(山川出版社)には、このフレーズが繰り返し登場する。

「ずっとエシカルの理念を普及させる活動に関わってきて、小さな子どもたちにもこの考えを知ってもらいたいと思うようになった。それには絵本しかない、と。構想は2年前くらいから持っていて、書きはじめていた」という末吉さん。2019年9月に行われた出版記念イベントで、末吉さんの思いをうかがった。

末吉里花(すえよし りか)さん
一般社団法人エシカル協会代表理事、日本ユネスコ国内委員会広報大使。慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。著書に『祈る子どもたち』(太田出版)、『はじめてのエシカル』(山川出版社)、新刊『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』(山川出版社)。消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員(2015.5〜2017.3)、東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、NPO法人FTSN(Fair Trade Students Network)関東顧問、1%for the Planetアンバサダー、ピープルツリーアンバサダー。

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旅するなかで見えてきた世界の問題

『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を訪れた後、2015年に「一般社団法人エシカル協会」を立ち上げた末吉里花さん。プライベート、仕事を含めて75か国以上を旅するなかで、ひとつの共通点が見えてきたという。

「それは、この世界っていうのは一部の利益とか権力のために、美しい自然や弱い立場の人が犠牲になっているなと。一番のターニングポイントは、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロに登頂したこと。6000メートルの頂上には氷河が横たわっているのですが、もともとあったものが大きく減退して、1割から2割しか残っていなかったんです」

1900メートル地点にあった小学校では、子どもたちが「どうか再び氷河が大きくなりますように」と祈りながら植林活動をしていた。氷河の雪解け水は彼らの生活用水でもある。そこに住む人はほとんど地球温暖化の原因になるような生活をしていないのに、先進国の暮らしの影響が被害を及ぼしている……。そう思ったら、いてもたってもいられなくなったと話す。

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ここ半年で時代が変わった

帰国後、環境問題との関わり方を手探りするなかで末吉さんが出会ったのがフェアトレードだった。2010年にイギリスからもたらされた「エシカル消費」の理念に共感し、2015年に「一般社団法人エシカル協会」を発足。2015年はSDGsが国連サミットで採択された年でもある。

「設立当初は仕事があまりなくて。今4年経って、ここ半年でガラリと時代が変わったと感じます。一般の消費者から現場の人たち、自治体、企業、学校、教育関係者まで、色々な方からエシカルな考えやエシカル消費について教えてほしいと依頼されるようになりました」

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よく問い合わせを受けるのは、SDGsとエシカル消費の関係だ。SDGsでいうと、エシカル消費は12番目の目標「つくる責任・つかう責任」と直接関わっているように思えるが、じつは17個すべての目標に関連していると話す。

「SDGsって、相互に関係してるんですよね。今までは個別の課題として解決に導かれつつあったものが、一緒くたに同じテーブルに乗った、というのがSDGsの最大の魅力。SDGsを個人がどうしたら目標達成に寄与できるのかというところで、エシカル消費はもっとも身近な手段だと考えています」

トークショーで考えるエシカル

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インタビュー当日に行われた出版記念イベントでは、絵本のイラストレーションを担当した中川学さん、イベント会場となった「森岡書店 銀座店」代表の森岡督行さんもまじえたトークショーが行われた。

絵本を通してエシカルの理念が多くの子どもたちに広がっていき、それがマジョリティになることが末吉さんの願いだ。ストーリーのなかで子どもたちを導くのは、名もない森からやってきた名もないこざる。広い世界をすみずみまで見渡せる特別な力で、フィリピンのバナナ農園や、クロマグロ漁が行われている太平洋、バングラデシュの縫製工場へと子どもたちを連れて行く。

「このこざる、父親猿に『地球のピンチを知らせてこい』といわれて子どもたちのところに来るけど、最初はちょっとイヤそうでしょ。あとで気づいたんですけど、このこざるって僕のことなんじゃないかって。最初はいやいやだったのに、だんだん気持ちが高揚していって……」と笑うのは中川学さんだ。

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京都・瑞泉寺の住職でイラストレーターの中川学さん。

「お坊さん」としてもやるべき仕事かなと思った

中川さんは京都・瑞泉寺の住職とイラストレーターという、二足のわらじを履くお坊さん。代表作のひとつである絵本『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ(汐文社)』を読んだ末吉さんが中川さんに声をかけ、今回のコラボレーションが実現した。

中川さん「あれは1年前くらいですか、僕が“仏教界になくてはならない”と尊敬している、あるお坊さんから紹介をいただいて。エシカルという言葉も知らないくらいだったから、メールで依頼がきたら断ったかもしれない、忙しいし(笑)。

でも依頼の文面をよく読んだら、人間の欲望を抑えて、自然や弱い者たちのことを考えながら生きるというエシカルな理念は、とても仏教的な考え方だなと。イラストレーターとしてだけでなく、お坊さんとしてやらなければいけない仕事なのかなと思って、お受けしました」

最初に末吉さんから届けられたのは、熱い思いのこもった膨大な量のテキストと資料。「ウソの絵は子どもにばれる」という思いから資料を読み込み、ショッキングなシーンも描き込んだ。それは、「見えない世界のことだけど、ほんとうのはなし」だから。

「使い手」が世界を広げる絵本

この日のトークショーの場となった「森岡書店 銀座店」のコンセプトは、「一冊の本を売る本屋」。代表の森岡督行さんは、この絵本を読んで「初心を思い出した」と話す。

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「森岡書店 銀座店」代表の森岡督行さん。

森岡さん「本屋になって25年くらい経つんですけど、もともとは大量生産・大量消費でないものに惹かれて、神田の古書店に就職したんです。今は社員の給料とか、消費税とかいろんな大変なことがあるけど(笑)、そういえば、そういうことから僕は始まったんだということを思い出させてくれました。

工芸の考え方に『作り手半分、使い手半分』というのがあるんですが、そんなことも考えました。それを使うことによって、私たちが個人的な思い入れを抱き、家族のアルバムのように大切なものになっていく。この絵本も、ある種そういう使われ方をされるんだろうなと」

実は「エシカル」という概念は、古くから日本人が大切にしてきた「おたがいさま」「足るを知る」といった精神と親和性が高いと末吉さんは語る。

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トークショーの会場となった「森岡書店 銀座店」。

末吉さん「SDGsは“持続可能な開発目標”ですが、仏教用語にも“開発(かいほつ)”という言葉があるんですよね。それは内なる心を耕す、ということ。もともと、私たちの足元にあった考え方なんです」

エシカルなものを選んでと言っているけれど、本当に伝えたいのは、“それぞれの心や暮らしをもう一度見つめ直して”ということ。生活のすべてをSDGsに叶う形にできなくても、小さな良心の呵責を無視せずに、一人ひとりがなにか「エシカル(倫理的)」なことをしていけたらいい——。

「本当にそこからしか、世界は変わっていかない」と末吉さん。絵本を通して大人と子どもの間に生まれる対話が、その一歩になるはずだ。

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このトピックと特にかかわりのあるSDGsゴールは?

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撮影/中山実華


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田邉愛理
学習院大学で日本美術史を学び、卒業後、日本の書・古美術をあつかうセンチュリーミュージアム学芸員として勤務。2004年~2012年まで展覧会音声ガイドの制作・運営に携わり、現在フリーランスライター。展覧会に行くこと、そのあとの寄り道が何より好きです。素敵なイベントやショップ、気になるいろいろをアート情報とあわせてご紹介します。

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