- Home
- Social good
- 最先端のフード・シーンから見る日本の「たべる、つくる」の未来/菊池紳さん、コウ ノリさん、田村浩二さん、藤川真至さん
2019年9月21日・22日の2日間にわたって開催されたMASHING UPと青山ファーマーズマーケットのコラボイベント「みんなとわたしにちょっといいもの。街角のソーシャルグッド展-SDGs&Me-」。
そのなかで行われた「SDGsじゃ、もの足りない? 最先端のフード・シーンから見る『たべる、つくる』の未来」のトークセッションには、日本のフード・シーンを率いるメンバーが集結。食と人の関わりについてさまざまな話が繰り出しました。
最前線の4人が語る 、おいしくて新しい食のスタイル
今回セッションに登壇したのは、日本の食の未来をリードする4人。
「Mr. CHEESECAKE」 代表の田村浩二さん。
まずは、「人生最高のチーズケーキ」を目指す「Mr. CHEESECAKE」代表の田村浩二さん。複数の事業を手掛ける事業家、経営者として活動しています。パリのミシュラン3つ星店などで修行をつみ、シェフとして活躍したこともある異色の経歴の持ち主です。
「CHEESE STAND」代表取締役の藤川真至さん。
次に、「街に出来たてのチーズを」と東京・渋谷でモッツアレラチーズを作り始めたのが、「CHEESE STAND」代表取締役の藤川真至さん。クラフト×ビジネスの新機軸でチーズ作りとお店経営に携わっています。国内外のコンクールにおいて様々な賞の受賞経験も。チーズをより身近にするため、セミナーの開催や絵本の出版、オウンドメディアの運営も手がけています。
サンシャインジューズ代表のコウ ノリさん。
サンシャインジューズ代表のコウノリさんは、日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」を運営。全国各地の生産者を訪ね歩き、ていねいに育てられた規格外の野菜や果物を集めてしぼったコールドプレスジュースを提供しています。ジュースを通して、心身の健康や平和な社会、食を取り巻く課題を追求しています。
いきものCo./たべものCo.共同創業者の菊池紳さん。
そして、モデレーターを務めたのは、農作物を産地で買取・集荷するサービス「ハレルヤ」などを運営するたべものCo.と、いきものCo.共同創業者であり、食物・生物・生態系の領域を扱う起業家で研究者の菊池紳さん。作り手の視点を持ちながら金融やビジネスデザインにも長け、ポジティブにたのしく3人の話を引き出していました。
それぞれに違いがあった「価値の置き方」
トークは、お客さんにおいしく届けるための苦労話から。また大切にしていることや価値については、それぞれ興味深い答えが出てきました。
コウさん:お店でジュースを出していますが、「今日採れたものを提供し、今日飲む」のが絶対。今は「日持ちする」が価値になっていますが、「日持ちしない」ことに価値をおいていて、いい状態のものをいかに届けるかを常に考えています。
菊池さん:農作物は日によっても天候によっても変わりますよね。この日毎で変わるものに対してどのように考えていますか?
コウさん:僕は味が違うことをよしとしています。場所、シーズン、天候で、農作物の色やカタチ、糖度が変わるのは当然のこと。一般的には「規格外」という言葉で表現されていますが、「◯◯だから今日は甘いです」なども価値として、お客さんにお伝えしています。
菊池さん:藤川くんはチーズ作りですが、牛乳ってすごく難しい分野ですよね。
藤川さん:はい。まず難しいのが仕入れです。原料のミルクは輸送時間が長いと酸化してしまうので、東京でもなるべく近いところから仕入れるのが理想です。ただ、酪農家が減りメーカーも牛乳が足りずに困っている状態で、簡単には仕入れさせてはもらえず……。農協に通いつめ、やっと仕入れられるようになりました。
菊池さん:農作物のように、牛乳の味も変化があるもの?
藤川さん:季節で濃さが違います。夏は牛が水を多く飲むため薄くなり、冬は濃くなりますが、僕らの場合は「ぶれを少なくする」ようにしています。温度やチーズを練る時間など、一定にできるものは一定に、練り方を変えるなど調整できるものは感覚も大切にしながら行っています。
菊池さん:田村さんはどうでしょう?
田村さん: 料理人から独立後、自分がいちばんおいしいと思うチーズケーキを作り、SNSで発信していました。食べたいと言ってくれる方がいて売れていったという経緯です。レストランでは食べてもらったら完結しますが、いまは梱包して配送して、お客さんの元に届いて食べてもらうまで。梱包や配送、一緒に働くスタッフのことなど、考えることはたくさんありますね。
菊池さん:安定的につくる、届けるためになにかしていますか?
田村さん:チーズケーキはいつでも安定した味やクオリティで届けられるようにしています。たとえば材料にこだわったら世界一おいしいものを作れますが、安定的に手に入る材料で自分がいいなというクオリティで作りあげることが大切。焼く温度と時間を最適にし、あとは型に流し入れて焼くというシンプルなスタイルで続けています。
フードロスの課題は、出さない工夫や再利用の知恵がひかる
菊池さん:フードロスに対する取り組みはいかがですか?
藤川さん:「ロスが出ないように」しています。余った場合はピザなどのメニューに活用して使い切ります。ただ、チーズを作る際に出る「ホエイ」はなにかに活用できないか考えているところです。
田村さん:チーズケーキは、冷凍なのでロスが出にくいですね。製造数がみえているので全体数を把握しやすく、スタッフの休みなども見越して販売数を決めています。
コウさん:みなさんと違い、ジュースは絞りカス(残渣)などのロスが必ず出てしまいます。別のかたちで再利用できないかと考え、カレーにしたり、色素で染色したり。残渣を使って土を作る取り組みもはじめました。
菊池さん:たい肥を作るということですね。
コウさん:残渣などの生ゴミが土のなかの微生物のエサとなり、いい土となりいい作物を作るという循環。生ゴミはちゃんと価値があるということを多くの人に意識してほしいと思っています。ロスがたくさん出るジュースは、それも踏まえて発信していけたらと思っています。
自分や身近な人たちを大切にしながら、さまざまなことに向き合っていく
最後に、みなさんが大切にしていることについてうかがうと興味深い答えが……!
田村さんは「自分自身が心に余裕を持ち、精神的にハッピーであること」、藤川さんは「愛が大事」、コウさんは「まずは自分と身近な人の幸せから」。みなさん一様に、自分自身を含む身近な人たちを幸せにすることが大切とおっしゃっていたのが印象的でした。
菊池さんは、「この3人は、みなさん『好き』からはじめている人たち。自分自身や身近な人を大切にしていきながら、食や人、環境のことなどさまざまなテーマにアプローチされていることがわかりました。これからの進化や活躍が楽しみですね」とのこと。
チーズケーキやモッツァレラチーズ、コールドプレスジュースへの並々ならぬ思いが共有されたトークセッション。家やお店でおいしくいただきながら、日本の食の未来について考えてみませんか?
撮影/キム・アルム
▼ Sponsored
この記事に関連する人
イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。