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勝者独り占めにNO! 世界が認める「ミスター・トイレ」が考える本物の成長経済/ジャック・シムさん[前編]

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2018年のMASHING UPでキーノート・スピーカーとして登壇した社会起業家のジャック・シムさんの本が日本で出版されました。

『トイレは世界を救う——ミスター・トイレが語る貧困と世界ウンコ情勢』
(PHP新書/訳:近藤奈香)

自らをミスター・トイレと呼び、世界中でトイレを普及させる活動に取り組んでいるシムさん。

トイレがないと人々は野外で排泄せざるを得ず、ここから様々な問題が生まれています。水資源の汚染、病気の蔓延、人目につかない所に排泄に行く女性たちへのハラスメントやレイプ。これらを解決するためトイレの普及が重要だとシムさんは言います。

シンガポールの貧しい家庭に生まれ、建設業などビジネスの世界で成功したシムさん。不況がきっかけで人生を見つめ直し、40歳の時に社会貢献事業に活動の場を移します。

たった一人で始めた活動は次第に大きなムーブメントに拡大。2013年には国連で「世界トイレの日」が制定され、インドのモディ首相、中国の習近平主席、米国のクリントン元大統領などの政治家やビル・ゲイツなどのビジネスリーダーの賛同を得るようになります。著書の出版を期に来日されたシムさんにお話を伺いました。

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ジャック・シム(Jack Sim)さん
シンガポールの社会起業家。不動産業などで成功を収めた後、40歳の時に社会起業家に転身。WTO(世界貿易機関)を意識したネーミングのWorld Toilet Organization(世界トイレ機関)を創設し、トイレの普及を訴えてきた。2013年の国連総会で11月19日を「世界トイレデー」に制定するよう提唱、満場一致で認められた。他にも貧困撲滅を目指すBoPハブなど多くの社会貢献事業を手がける。『TIME』誌が選ぶ環境ヒーロー賞など受賞歴多数。

社会課題解決のためのエコシステムをつくる

社会貢献事業の経験がなかったにもかかわらず、なぜこれほど大きく成長できたのでしょう?

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ものごとは、とりあえず始めることが肝心だと思っています。やってみなければ、何が分からないのかも分かりません。

私の場合、メディアに取り上げてもらうことからスタートしました。タブーだったトイレの問題をユーモアを交えて語ることで注目が集まり、やがて影響力を持つ政治家にも問題意識を共有してもらえるようになりました。

一人でできることには限界があるけれど、多分野の人々が協力しあえるエコシステムを作れば、大きな問題も解決できます。けれども、人の善意をあてにしてはいけません。アクションを起こせば自分の利益にもなると、それぞれの人に納得してもらわないと」

みんなが誇りを持って働ける世界を目指す

トイレ普及の活動が軌道に乗ると、シムさんは貧困撲滅を目指す新規事業を立ち上げます。経済ピラミッドの底辺(Base of the Pyramid)にいる人々が安定した収入を得て市場に参加できるようにする、BoP ハブ(https://bophub.org)という活動です。さらにスケールの大きい取り組みを始めたのはなぜでしょう?

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40億もの人が1日8ドル以下で生活している現実を見過ごせないからです。これは寄付では解決しません。投資を促し、持たざる人々がスキル、テクノロジー、資金、顧客などへアクセスできるようにしたいんです。日本、シンガポール、韓国、中国などもビジネスを通して豊かになりました。

底辺にいる人を安い労働力とみなすのは非人道的なだけでなく、長い目で見れば経済的にも非効率です。労働に対し正当な対価を支払えば、その人たちは物やサービスを買うようになる。納税額も増えて国にとってもメリットがあります。

テクノロジーの進歩で、中間マージンを取られずに収入を得られるようになりました。インターネットを通して直接顧客に商品を届けることができるし、電子マネーの発達で決済も簡単になりました。太陽光発電など、辺鄙な土地でエネルギーを生み出せる方法も増えています。様々な技術を組み合わせれば、搾取のない世界を作れるはずです」

いまは勝者総取りの残酷な世界

現在の社会は、競争に勝つことが善とされる「男性型」モデルで、これが苦しみの源だと指摘するシムさん。個人のエゴよりも思いやりと協調を優先させる、フェミニン・フィロソフィーを提唱しています。

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「来年はオリンピックの年で、また勝者に大きな注目が集まるでしょう。そんななか、表彰台に立てなかった人にスポットを当てた『LOSER敗者』という映画を作りたいと考えているんです。一人の勝者の裏に何千何万という敗者が生まれてしまう。こんなシステムは虚しくないですか、と訴えるためにね。

自然界はいろんな要素が支えあって成り立っています。「母なる自然」という時に、ある一箇所を指差すことはできません。

一握りの人が全てを手にする世の中は、不平等で残酷です。オキュパイ・ウォール・ストリート、アラブの春、香港のデモ等々、世界中で権力に立ち向かう様々な運動が起きています。賛同してくれる人は多いはずです」

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トイレは世界を救う——ミスター・トイレが語る貧困と世界ウンコ情勢

著者:ジャック・シム/訳:近藤奈香
発行:PHP新書

取材・撮影/野澤朋代

後編はこちらから

自分を更新し、クリエイティビティを発揮する/ジャック・シムさん[後編]

社会起業家のジャック・シムさんが考える「幸せに生きる秘訣」とは? 出版記念インタビュー後編です。

https://www.mashingup.jp/2019/12/jack_sim_interview_2.html

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野澤朋代

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