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自分を更新し、クリエイティビティを発揮する/ジャック・シムさん[後編]

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2018年のMASHING UPでキーノート・スピーカーとして登壇した社会起業家のジャック・シムさんの本が日本で出版されました。

『トイレは世界を救う——ミスター・トイレが語る貧困と世界ウンコ情勢』
(PHP新書/訳:近藤奈香)

出版記念インタビューの後編では、新しいことに挑戦し続けてきたシムさんの生き方にスポットを当てます(前編はこちらから)。

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ジャック・シム(Jack Sim)さん
シンガポールの社会起業家。不動産業などで成功を収めた後、40歳の時に社会起業家に転身。WTO(世界貿易機関)を意識したネーミングのWorld Toilet Organization(世界トイレ機関)を創設し、トイレの普及を訴えてきた。2013年の国連総会で11月19日を「世界トイレデー」に制定するよう提唱、満場一致で認められた。他にも貧困撲滅を目指すBoPハブなど多くの社会貢献事業を手がける。『TIME』誌が選ぶ環境ヒーロー賞など受賞歴多数。

不況がきっかけで人生の目的を見直した

発展途上国でトイレを普及させる活動を始める前は、不動産業や建設業などいくつもの会社を起こし、成功をおさめていたシムさん。90年代末の不況を機に、人生を見つめ直したことが今の活動につながっているそうです。

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「仕事が減り、ひまになったのがとにかく苦しかった。それまでの16年間、常に知恵を絞り、何かを作ることに生きがいを感じてきましたから。クリエイティビティを発揮できず、窒息しそうでした。

トイレの普及という課題が見つかって救われました。これでまた思う存分、自分の力を試せるし、人の役に立つことができると思ったのです。

不況で財産を失って自殺をした人もいて、お金って命を捨てるほど大事なのかと考えさせられました。お金は家族が暮らしていける分があれば十分です。死の間際に人生を振り返った時、稼いだ額より、どれだけ人の役に立ったかが納得の基準になると思います。限りある人生の時間を有効に使いたいと強く願うようになりました」

50を過ぎて大学院へ

若い頃は学業が向いていないと感じ、職業訓練校を経て社会に出たシムさん。起業家として、また社会貢献事業でも成功を収めた後、シンガポール国立大学のリー・クアンユー公共政策大学院とシリコンバレーにあるシンギュラリティ大学で学んでいます。50歳を過ぎて大学に行こうと思った理由とは?

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「社会課題解決に向けた良い提案を出しても、いつも官僚に反対されてきたからというのが1つ目の理由です。きちんと公共政策を学び、政策立案の過程を理解したかった。卒業後も相変わらず反対されていますが、学んだことは貧困撲滅を目指すBoP Hubの活動に役立っています。また、シンギュラリティ大学では最新技術について学び、専門家と議論もできるようになりました。

2つ目の理由は、母に喜んでもらいたかったからです。母は「3人の子供たちの誰も大学に行かなかった」と嘆いていましたので。卒業式で一緒に写真を撮ろうと言って喜ばせてあげたかった。

あと、ビジネスの世界や社会貢献事業で成果を出していたものの、どこか引け目を感じていたのもあります。そうした自信のなさを払拭したかったのです。

人は皆、あるサイクルで自分を更新し続ける必要があるんじゃないかと思うんです。私も10年後は社会貢献事業は若い人たちに任せて、アーティストになろうと考えています。歳をとって手が震えるから、個性的な線が描けるはずで、新しいスタイルを生み出せるんじゃないかな」

AI時代に必要とされる教育とは

ユーモアを交え、柔らかな語り口で大胆なビジョンを語るシムさん。次世代に期待を寄せる一方で、教育のあり方を憂え、改革を訴えています。

ものを覚えるだけの教育では、これからの時代に必要なスキルを身につけられません。ルーチンワークはAIがやってくれるようになります。

これからは、自分なりに考える力がますます重要になるでしょう。また、上に従うばかりでなく、時には反論する勇気も必要です。既存の考え方を打ち破ることで世界は変わります

幸せに生きる秘訣

先日、シンガポール国立大学の学長と話したのですが、優秀なのに胆力がない学生が多いそうで、困難に直面するとすぐにあきらめてしまうと言っていました。そして人間力を育むプログラムを一緒に作らないかとの打診をいただきました。

これまで私は長いこと教育庁に働きかけて新しい教育プログラムの導入を訴えていたのですが、一向に話が進みませんでした。お役所とは違い、大学は直接学生と向き合う機関です。問題の切実さを理解しているので、話が早いのです。

片思いを引きずるよりは、自分を好きになってくれる人とハッピーな時間を過ごしたい。十代の頃から、そんな風に考えてきました。人生は短いですからね!」

トイレ問題をユーモアと独自の交渉術で広く認知させていくまでの波乱万丈の物語が痛快。逆境に負けず、飄々と前向きに進むシムさんの人生哲学もたくさん詰まった本です。

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トイレは世界を救う——ミスター・トイレが語る貧困と世界ウンコ情勢

著者:ジャック・シム/訳:近藤奈香
発行:PHP新書

取材・撮影/野澤朋代

▼ 前編はこちら

勝者独り占めにNO! 世界が認める「ミスター・トイレ」が考える本物の成長経済/ジャック・シムさん[前編]

「ミスター・トイレ」が考える本物の成長経済とは? 世界中でトイレを普及させる活動に取り組んでいるジャック・シムさんにお話を伺いました。

https://www.mashingup.jp/2019/12/jack_sim_interview_1.html

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野澤朋代

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