「ダイバーシティ時代」が始まった今、持続的で多様な社会を作るためには、企業は商品やサービス、そして街のシステムをどのように変化させるべきなのでしょうか? これからの時代に対応する都市・サービスを生みだすヒントについて、4人の登壇者がセッションを展開しました。
- 角谷真一郎(ヤフー ノーマライゼーションPJ プロジェクトマネージャー)
- 東浦亮典(東急 執行役員 渋谷開発事業部 フューチャー デザインラボ)
- 半澤絵里奈(電通 プロデューサー)
- 東由紀(Allies Connect 代表)
——このセッションは、2019年11月7日・8日に開催されたビジネスカンファレンスMASHING UPで行われました。
ダイバーシティを意識した都市・サービスの現場とは?
半澤:では、始めさせていただきます。まず4人がどういう人なのかということから、みなさんにご紹介したいと思います。 角谷さんから自己紹介をお願いします。
角谷:こんばんは! 私、ヤフー株式会社(以下、ヤフー)の「角」に「谷」と書いて「すみや」という珍しい名前です。よろしくお願いいたします。最初にちょっとお伺いしたいんですけど、「Yahoo!天気」を見たことある、使ったことある、という人どれぐらいいるでしょうか? 手をあげてください。ありがとうございます。こんなにいらっしゃるんですね。こんなに!と言いながら、私には、どれぐらいみなさんが手をあげてるか分らないんですけど(笑)。ありがとうございます。
私は新潟生まれで、2012年からヤフーに勤務しております。先天性の視覚障害を持っていまして、視力検査のいちばん上の部分がコンタクトをしても、かろうじて見えるか見えないかぐらいの視力で、視野も狭いです。ヤフーでは、障害者職員拡大の仕事とかパラスポーツ支援の仕事をしております。その傍ら、障害を持っている方がヤフーの中で生き生きと働けるようにするプロジェクトのリーダーもやっていて、今回は、その取り組みを持ってきました。今日はみなさんと素敵な時間を共有できることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。
半澤:ありがとうございます。今日のスライドは、背景を黒、文字を白で構成しています。
角谷:視覚障害者って、目の神経を伝える網膜に傷がある方がほとんどですが、特に白い光を浴びると、目がしみたり、痛みを感じたりするんです。なので、こういう黒バックだと目が楽なんです。
半澤:ありがとうございます。では、続きまして、東急の東浦さんお願いします。
東浦:みなさん、こんばんは。今ご紹介頂きました東急の東浦です。私は61年生まれで東急という会社に85年に入社して今日はいちばん年長だと思われます。東急電鉄という会社に入ったんですが、電車の仕事をしているわけじゃなく、一貫して都市開発の仕事をしています。東急沿線の街づくりに関わっていて、主に新規開発をやっていましたが、この春から開発の計画から実際の工事、ビルを作るということ、ヒカリエなどの運営、渋谷で起きていることは全て私の方に責任でやっています。下で「私鉄3.0」という本を紹介しまくりましたが、昨年出したこの本は「東急電鉄非公認本」ということで出しました。私の街づくりの持論を書いた本で、簡単で読みやすいので、もしご興味がありましたら。
半澤:すごく読みやすかったです。1時間で読むことができるくらい面白く、読みやすかったです。
東浦:それぐらい内容がないということで(笑)。東急は駅から半径2.5キロ超えた渋谷圏を「グレーター渋谷」と言って、ここを私の守備範囲にしているんで「渋谷にようこそ」って感じです。渋谷に絡む話をお話しできればと思います。よろしくお願いします。
半澤:よろしくお願いします。続きまして、Allies Connectの東さんです。
東:みなさん、こんばんは。私はアメリカの大学を卒業して日本に帰国してからずっと外資系企業で働いていましたが、リーマン・ブラザーズで働いていた時に、朝起きたら会社がなくなっていました。1週間後に買収先が決まったのですが、それが日系企業だったのです。
外資系企業で勤務している時は、女性が管理職で働くということにハードルを感じずにいたのですが、日系企業に来てからは、職場で自分が女性であるということがリマインドさせられることがある。課長会議に女性は私しかいなかったり、私が説明しているのになぜか男性上司に質問が行ったり、些細なことでも毎日続くと結構タフでした。その他にも、率直な意見を言うと浮いてしまったりと、フリーに発言することができない雰囲気を感じました。
そんな中で、ダイバーシティってすごく大事だなと思うようになりました。当時、人事からLGBTの社員ネットワークのリーダーをして欲しいと言われ、LGBTのことを理解しよう、差別を解消するために一緒に行動しようという仲間を意味する「アライ」を増やす活動を始め、今年で10年になります。今はITコンサルティング会社の人事部門で人材開発を統括しながら、企業のLGBT支援施策のアドバイザーを務めています。プライベートでは、去年「Allies Connect」という団体を立ち上げ、講演や執筆、調査研究、LGBT関連のNPO支援を通じて、実務とアカデミックと社会のアライを繋げる活動をしています。よろしくお願いいたします。
半澤:ありがとうございます。今日モデレーターを務めさせて頂きますのは、電通の半澤でございます。所属する部署の業務以外に電通ダイバーシティ・ラボというバーチャル組織に属し、ダイバーシティ&インクルージョンに関わることを業務として実施しております。今日はどうぞ宜しくお願い致します。
ソーシャルイシューをアクションにどう繋げる? 障壁は?
東急 執行役員 渋谷開発事業部 フューチャー デザインラボの東浦 亮典さん。
半澤:早速ですが、今日みなさんと一緒に考えたいことを具体的に共有したいと思います。ダイバーシティ&インクルージョンに関して、研修の機会やネット上にある情報の獲得も含めて、ものすごく色々なことをみなさんインプットしていると思います。
きっと会社のなかでもインストールされていて、意識自体はかなり変わってきているのではないでしょうか。一方で、アクションに繋げる、いわゆるソーシャルイシューをCSRのみならず、マーケティングの中にもアクションに繋げる時に、どうやったらアクションに繋がるんだろうだとか、何が障壁になってるんだろう、ということをみなさんと一緒に考えて生きたいなと思っています。
具体的に会場のみなさんに聞いてみたいなと思っています。それが例えば、組織やチーム、企業文化・風土といった環境の問題なのか、あるいは一人ひとりの知識や経験、学習に関わることなのか。あるいは、それ以外なのかどうでしょうか?
「環境の方が影響が大きいんじゃないか」と思う方、どれぐらいいらっしゃいますか? 半分ぐらいですかね。「一人ひとりの学習だって考える方は?」これも半分ぐらいですね。ありがとうございます。みなさんの意識がどれぐらいなのか聞いてから話をしようと思ったので、聞いてみました。
今日は大きく2〜3ほどのテーマを持ってきています。最初は、ダイバーシティについて何がアップデートされて、何がアップデートされてないのかを話していきたいと思います。今回、他のセッションでもOSのアップデートって話がありましたけど、そういうものを思い浮かべてください。まずは、都市開発に長く携わられている東浦さんに、街づくりのアップデートについて教えて頂きたいと思います。
東浦:先週、渋谷駅の真上230メートルもある高い渋谷スクランブルスクエアがオープンしたんですけど、ちょっと覗きに行ってきたよ、って人いますか?(パラパラと手が上がる) ありがとうございます。4割ぐらいの方に手を挙げていただきました。このビルはまだオープンして間もないんですけど、毎日9万人ぐらい来ています。ディズニーランドより多い数です。すごいよね。今はお買い物ができるような状況じゃないので、ちょっと落ち着いてからゆっくり来ていただければと思います。
我々はビルの開発をしているように見えますが、実際は地下を含めたインフラを整備しています。渋谷はすりばち状の谷地形になっていて、そこに自然発生的に街づくりをしてますが、非常に歩きにくかったり、わかりにくかったり不評なんです。そういうものがまだまだ解決はできてないんですが、「アーバンコア」という地下鉄からエスカレーターやエレベーターを使って、縦に移動できるような機能を各ビルの入り口に付けました。
銀座線も2020年1月3日からヒカリエ側に移動するんです。将来的には銀座線の駅の上を人が歩いていけるようになったり、縦横に非常にわかりやすく、ハンディキャップのある方も動きやすくなります。もう一つは掲示が分かりにくいじゃないですか。そういうのをJRさんやメトロさん、行政含めて整理をしています。お気付きかもしれないですが、13番出口とか16番出口とか分かりにくいじゃないですか。縦に割ってA地区、B地区、C地区みたいにして、Aの何番みたいにして振るように変えてあります。初めて渋谷に来た人も自分の行き先は「Aのあたり」と表示できるようになっています。ただ前、多言語対応などの課題も多く、視覚障害の方には全然ダメダメなとこもあると思うので、これから順次変えて行こうと思います。(次回に続きます)
MASHING UP vol.3
ダイバーシティ時代の都市・サービスを生みだすためのヒント
撮影/TAWARA(magNese)
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