「ダイバーシティ時代」が始まった今、持続的で多様な社会を作るためには、企業は商品やサービス、そして街のシステムをどのように変化させるべきなのでしょうか? これからの時代に対応する都市・サービスを生みだすヒントについて、4人の登壇者がセッションを展開しました。
- 角谷真一郎(ヤフー ノーマライゼーションPJ プロジェクトマネージャー)
- 東浦亮典(東急 執行役員 渋谷開発事業部 フューチャー デザインラボ)
- 半澤絵里奈(電通 プロデューサー)
- 東由紀(Allies Connect 代表)
——このセッションは、2019年11月7日・8日に開催されたビジネスカンファレンスMASHING UPで行われました。
デザイン思考が、偏見のない世界への第一歩に
(前回に続く)
半澤:今の意見からネクストステップとして、今日はアイデアをもう一つ持ってきてもらっています。
東:「無意識のバイアス」は誰もが持っていて、回避することは難しい。その中で新しいアイデアを生み出して行くにはデザイン思考の手法が有用です。デザイン思考というと難しく聞こえると思いますが、手法は簡単に取り入れることができます。
新しいものを生み出すには、それを実際に使うユーザーの状況にいて、どのような気持ちで、どのようなを行動をしているかを取り入れ、共感する。そこから、ユーザーが直面する問題を見つけ、解決するためのアイデアをできるだけたくさん出す。そのアイデアに基づいてプロトタイプを作成し、いろんな視点を持つユーザーに試してもらい、そこから出てきた言葉に共感し、新たな問題を見つけ、解決策を見つける。このプロセスを回す過程で「無意識のバイアス」があると、前述の会議のように誰かが空気を慮って議事録を取ったり、発言をするのを年配の人に譲ったりしていたら、多様で自由なアイデアは出にくい。
半澤:この解決策として、みんなでポストイットに書いてから貼るみたいなアイデアもあるかと思うんですが。
東:そうですね。会議に年配者がいると、その人が発言してから、自分が話そうと若い人は思いがちです。専門家がいると、そのフィールドに詳しくないと発言をしづらくなる。会議で声が大きい人がいても、その人に発言を任せてしまう。そんな時、自分の発言は大したことないかもと引っ込めてしまい、言えなくなります。デザイン思考の手法の一つでは、会議に参加している全員が自分の考えをポストイットにまず書いてから、全てのポストイットをホワイトボードに貼っていきます。自分と同じような意見があると、ポストイットを重ねて貼ったり、似たような意見をまとめていくと、その場の空気や立場に影響されずに全員の意見を取り入れることができる。簡単に誰にでもできるので、会議の場でぜひ試してみてください。
半澤:そうですね、私たち初めての打ち合わせで、東浦さんが役員なので身構えたんですけど「フラットにやりましょう。肩書きは関係ないので」と言ってくださったので、壁を取り払ってくれたので、もうすごく楽になりました。そこでちょっとお伺いしたいと思ったのが、東浦さんは役員というお立場で、部下やチームのメンバーから意見が出やすいように何か工夫をされていますか?
打ち合わせ・会議をフラットにするための工夫
東浦:そうですね。東急っていう会社は鉄道とか開発だとか、割と保守的で硬いものを扱っている会社なので、割と失敗しちゃいけないっていう前提がある。「軽い気持ちで試してみよう」みたいな、トライ&エラーみたいな感じではなくて、実証されたものを採用するみたいな社風が長年あります。社員も入社した時は若々しいアイデアだったのが、課長部長となるとだんだん発想が古典的なものになってしまう。私はたまたま新規事業ばかりずっとやってきたので、そういったバイアスに侵されることなくきた絶滅希少種なんですね。だから上の人も一緒になって新しいアイデアを出していく、ディスカッションするという機会を意識的に作っています。
半澤:上層部の人たちが、現場の提案やアイデアを聞きやすくなるようなヒントはありますか?
東浦:やっぱり部下を見てると、上司に言う時は緊張したり、絶対失敗しないようにするから時間もかかるし、ギリギリまで報告しないからこれはあんまり良くないと思いますね。上司によるとは思いますけど、私はそれ嫌なんですね。だから私は「コアタイム」っていうのを作るようにしています。会議ではなく、3週間に1回ぐらい1時間ぐらいあげます。その1時間の使い方は部下の自由。悩み事を言うのもいいし、報告するのでもいい。あるいは僕から意見を聞くのでもいい。好きに1時間使ってもいい、というもの。だからそこの1時間は半澤さんがコントロールして良くて、誰を同伴させてもいい。どんな議題を入れてもいい。雑談でもいい。1時間はあなたがコントロールしてください。そんな1時間を3週間に1回ずつやっています。
半澤:具体的にどんなことがありますか?
東浦:部署が変わって、東浦さんって人がくるよ、となるとまず身構えるんですよ。最初は議題を作って「5件のご報告があります」とかだったんだけど、いやもっと自由に使って、柔らかくていいよ。そのうち人生相談されたりとか色々あります。
半澤:なるほど。だんだんみんな慣れてるんですね。
東浦:半年以上やってますからね、慣れてきましたね。
接点を作って、障害者の構えを壊していく
半澤:ヤフーでも当事者視点でアイデアを交わし合うみたいのはないんですか?
角谷:身構えない場作りというのは意識しています。エンジニア、デザイナー、WEBサービスを作る開発者はちょっと身構えていることがあるんです。視覚障害者の方に話を聞いていいんだろうか、どう接していいんだろうか、分からないんですよね。なので、そんなことないよ~と顔合わせて話しをすると、その身構えがとれて、どんどん依頼が来ることになります。接点を作って、障害者への構えを壊していく、というのをやっていますね。
半澤:ありがとうございます。今のお話は障害に限らず、LGBTもそうですし、いろんなところでそうですよね。
半澤:お時間も少しあるので、東浦さんから以前お伺いした渋谷での事例を紹介して頂きたいと思います。
東浦:渋谷のハロウィンは世界的に有名ですよね。ハロウィン目的に訪日して渋谷に集まり、毎年いろんなことが起きる。去年盛り上がった人が軽トラック倒しちゃったんですけど、今年は警察も渋谷区も相当警戒して、路上で飲酒しちゃダメ、コンビニなどで酒売っちゃダメ。渋谷区は1億円も特別予算を出して対策をしました。エコステーションを作るとか、フィッティングルームを作る他、コスプレしたものを捨てないでね、来年もまた使ってリサイクルしようといった運動をやっています。
楽しくやることと規制を行きつつしている。この前、愛知県の豊田市にあるすごい公園に行ってきたんですよ。
この豊田市の都市整備部長がぶっ飛んだ人で、公園には普通「何しちゃダメ」と禁止事項がズラズラと書いてあるんですけど、ここは逆なんです。徹底的に市民目線で公園を使い倒してもらいたいと、ボール遊びしてよし、火をおこしてよし、音を出してよし、ものを売ってよし。その代わり自己責任が伴いますよと。この看板素晴らしいなと思った。 やっぱり何か起きると規制する。その繰り返しでは街は面白くなりません。それを逆回転するのがいいなと思いました。規制緩和と市民のリテラシー教育で、どんどん街が楽しくなくなる。
半澤:ありがとうございます。
東浦:11月1日スクランブルスクエアもできたんですが、この地下のトイレ行かれたことある人いますか?ここはアットコスメさんがスポンサードしてるんですけど、ユニセックスなパウダールームを作られています。男性が入ってもいいんで、いろんな方が入ってきます。この環境だと女性しか入りにくいかもしれませんが、男性が入ってもキャーとか言わないでね(笑)。
半澤:みなさんがご利用になって声を届けてください。この回のセッションを終わりにします。今日はどうもありがとうございました。
MASHING UP vol.3
ダイバーシティ時代の都市・サービスを生みだすためのヒント
撮影/TAWARA(magNese)
*第1〜3回はこちら

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