昨今、よく耳にする言葉「企業文化」。
会社のイメージや雰囲気などを表す企業風土とは違い、企業文化とは、企業が打ち出す経営理念や行動指針などをもとに形成されるもの。事業成長へとつながる、企業にとって大事な経営要素のひとつだと言われています。
では、企業文化はどのように育まれ、形づくられていくものなのでしょうか?
企業文化をデザインする必要性について、ビジネスカンファレンス「MASHING UP」(2019年11月7日・8日開催)にてディスカッションが行われました。
登壇したのは、キャリアチェンジしながらご活躍されているお二人。渋谷未来デザイン理事・事務局次長の長田新子さんと、2018年に(株)ほぼ日の取締役CFOを退任し現在は「ジョブレスを満喫中」と楽しげにうたう篠田真貴子さん。モデレーターはIndeed(インディード)の小西航太さんです。
企業文化がデザインされることはなぜ重要?
Indeed Japanの小西さん。新卒でリクルートに入社し、人事やHR事業部門の営業、代理店事業統括を務め、2015年からIndeed Japanにジョイン。2019年よりシニアマネージャー。
数か月前から、より良いオフィス環境をつくる「ワークフォース・マネジメント」というポジションにつき「今日は勉強させていただきます」と意気込む小西さん。「そもそも、企業文化がデザインされることは重要なのでしょうか?」という直球質問からディスカッションはスタートしました。
まず答えてくれたのは篠田さん。企業文化というのは、社員数や人材の質、組織図、階層の数などと同列で組織を形づくる重要な要素だと語ります。
日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月に(株)ほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社。2008 年 12 月から 2018 年 11 月まで同社取締役CFOを務めた篠田さん。
「たとえば、パソコン。様々なメーカーから製品が発売されていますが、たくさんのなかから選ばれるためには、スペックよりも『好き』『イメージが良い』などブランドでの競争、つまり企業文化での競争になっているんですよね。企業文化をうまく意識できた(デザインできた)企業の方が、より自分たちの理念に沿ったプロダクトができる。そして、より消費者に自分たちの個性をわかってもらえて事業が伸びる。物を売る競争の場が、性能よりも企業文化になっていると思うんです」(篠田さん)
長田さんは、2019年秋にめざましい発展を遂げた渋谷を例に、企業文化の重要性を説きます。
渋谷未来デザインの長田さん。AT&Tやノキア、レッドブルでマーケティングや広報などに従事。2018年から現職。
「11月頭に渋谷でナイトタイムエコノミーのイベントを行ったのですが、その時のキーワードが"文化"だったんですよ。みなさんご存知の通り、渋谷は今、急速に変わっています。しかし、いくら高い建物ができたり商業施設ができたりしていろんなものが変わっても、人はビルに惹かれるのではなく、そのなかのコンテンツ、そこで生まれている文化に惹かれるんです。音楽やファッション、ギャルとか。文化が人を惹きつけて、ディスカッションが生まれ、続いていく。企業文化も同じなんじゃないかな。こういう街をつくりたい、こういう会社をつくりたいというところから生まれるものが大切。ユニークな文化を持っている企業は、これからも人を惹きつけていくと思います」(長田さん)
企業文化とは、その企業「らしさ」でもある
企業文化に惹かれて人は集まる。「これまで所属された企業では、どのような文化の違いを感じましたか?」と小西さんが問いかけます。名だたる企業でキャリアを歩んできたお二人だからこそ知る、各企業の文化の違いとはどのような部分なのでしょうか。
「前職のレッドブルは、多種多様な人がつくり上げているということもあり、とても文化が色濃い企業でした。たとえば、エナジードリンクを扱っているので、疲れてちゃいけないんです。眠くても眠いと口には出さずに、常にエナジャイズマイセルフ(笑)。今は行政関係の仕事をしていますが、行政は押す方より受ける方が多いですね。お住まいの方や区役所へ来てくださっている方にどれだけいいサービスを提供できるかというところが重要です。仕事環境やサービス内容の違いによる文化の違いはすごく感じました」(長田さん)
篠田さんは、スイスの製薬会社ノバルティスを経て世界最大手の食品会社ネスレで働き始めたときに、企業文化の大きな違いに驚いたそうです。
「私がいた頃のノバルティスは、まだ合併して10年くらいだったので、独自の文化ができていなかった。また、薬という製品の性質上、効く薬は世界中で効くからわかりやすいんですよね。それに対してネスレのほうは世界で一番古くて大きな食品会社で、皆さん"ネスレらしさ"を身に纏っていた。でもそれがビジネス上ですごく大事なんです。たとえば、コーヒーというもののイメージって、もともと各国で違いますよね。だけど共通して、ネスレっていいものなんだなと思ってもらうためには、さまざまな工夫が必要なんです。ネスレらしさを保ちながらも国によって訴求方法を調整する。企業文化がしっかりあるからこそ出来ることです」(篠田さん)
「らしさ」をはっきりさせていくためには?
「ネスレのように"らしさ"が強い会社がありますが、"その企業らしさ"とはどうしたら濃くなるのでしょうか?」と小西さん。企業文化をよりはっきりさせていくには何をすればいいのか模索中と言います。
「レッドブルに入社した時の研修で、会社から"我々はこういう人物を求めている"という説明がありました。"学生時代は遊び人でも先生には好かれている""ルールは全ては受け入れないけど理念は持っている""カジュアルだけどプロフェッショナル"というような。その人物像がCEOのキャラクターにそっくりだったのですが、人事が『雇われた人はその時点ですでにこの素質の半分以上は持っています。あなたには何個ありますか?』と。それがずっと頭の片隅に残っていて『自分もそういう人になりたいな』と思いながら働くようになりました。すると、不思議とお客さんに対しても徐々にそういう行動ができるようになるんですね。
レッドブルのスローガンが"翼を授ける"なのですが、"あ、今の行動は翼を授けているな""今のは授けられていなかった"とか、そういうものが分かってくる。企業の"らしさ"って、そんなふうにだんだん浸透していくものなのではないでしょうか」(長田さん)
「私は日々の行動から"らしさ"は出来ていくと思っています。教える立場で言うなら、まず、上司として、会社として『してほしいこと』を実際にしている人をたくさん褒めます。それと同時に、誰もがそれをできるように職場のルールを変更したり、コミュニケーションツールを導入したり。そもそも達成すべきことのやり方がわからない場合には、練習会のようなものを開いてあげるのも良いと思います。見たことがないものは欲しがれないので、とにかく、ゴールはあれだよと見せてあげること。その次に、この道具を使えばできるよとマニュアルレベルで繰り返し教えることが大切だなと、経験上思っています」(篠田さん)
自社とフィットする人の見極め方
最後は採用する側としての意見をうかがいました。
「現在、Indeed Japanは、人材採用したい企業様向けに、その会社"らしさ"や存在意義など魅力をしっかりと引き出し、その魅力に強く共感する人に届けることでミスマッチのない採用を目指す『オウンドメディアリクルーティング』を浸透させていきたいと思っています。では、このように『会社をどう見せるか』とは別の観点で、自社とフィットする人の見極め方というものはあるのでしょうか?」(小西さん)
「仕事をしていくなかで複数の選択肢のうち、どれかひとつの行動を選択しなければならない、といったケースにおいてどのように判断して、どのようにその状況を打開したのかということは必ず伺うようにしていました。というのも、2つの選択肢があったときにどちらも正しそうだけどどちらかしか選択できない場合に『こちらを選択するのがうちの会社のやり方』と選ぶための指針となるのが企業文化だと思うので、判断の仕方がその企業の判断と近いかどうかをお話を伺いながら汲み取るようにしていました」(篠田さん)
「私がレッドブルで採用をやっていたときは、カルチャーフィットを重視していました。スキルや経験、ご本人がやりたいことを見るのと同じくらいの割合でカルチャー的にフィットしているかどうかは見ていましたね。そこが違うとお互いのためにも良くないんです。そのフィットのなかでこだわっていたのは、仕事以外での人生の楽しみ方。たとえば、DJやダンス、モータースポーツをやっている、ゲームが大好き、元々アスリートだった、とか。どこの企業にも当てはまる指標ではないとは思いますが、没頭しているものがあるとインプットも早く、企業として受け入れやすいなと。レッドブルのなかでその趣味がいかされることがあるのも事実で、さらに、趣味がある人は人として魅力的ですしね」(長田さん)
白熱するトークで、あっという間に時が過ぎたディスカッション。企業文化をデザインする重要性を知った今、会社での自分のやるべきことがより明確になったのではないでしょうか。企業としての魅力向上や働きがいを高めるためにも、今一度、企業文化について考えてみませんか?
MASHING UP vol.3
- 長田 新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局次長)
- 小西 航太(Indeed Japan株式会社 / Senior Manager, Talent Attraction)
- 篠田 真貴子
撮影/TAWARA(magNese)、取材/吉岡美奈
[Indeed]
Sponsored by Indeed Japan株式会社
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