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- サスティナブルな未来をつくるために。SDGsが経済を変えていく
現状の経済モデルに限界を感じている人や企業は多いけれど、出口が見出せない——そんな中で、大きな注目を集めているSDGs。2019年11月7日・8日に行われたMASHING UPのカンファレンスでは、KDDIの協賛により、これからの経済のあり方について語り合うセッションが実現しました。
ゲストは「たくさん作って、たくさん捨てる」アパレルのビジネスモデルに異議を唱え、新たな試みにチャレンジしているアダストリア イノベーションラボ部長の高橋 朗さんと、ソーシャルグッドに特化したクラウドファンディングプラットフォームGoodMorningの代表取締役社長を務める酒向萌実さん。モデレーターはWe Empower ナショナルコーディネーター、プラン・インターナショナル・ジャパン理事の大崎麻子さんです。
当たり前を「口に出す」ことの重要性
セッション開催からさかのぼること1か月前、国連の気候変動サミットにおいて環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが演説をしたことが話題になりました。セッションはそんなホットな話題から始まります。「グレタさんについては、当たり前のことを言ってくれてありがとう、という気持ち。みんな環境悪化に気づいているのに無視している、そのメッセージが強く伝わった」と酒向さん。
アパレル内でキッズ服のリユースシステムを立ち上げた高橋さんも「持続可能なファッションって何だろうとずっと考えていた。“たくさん服を作って、売れなかったら捨てて。そもそも作りすぎじゃないの?”と口に出してみたら、みんなそう思ってたんですよ」。そんな“当たり前を口に出す”から、現在のビジネスが生まれたと語ります。
アパレルメーカーである以上、「服を作って売る」は企業の生命線。リユースのシステムはそんな企業命題と真逆では?という指摘もありましたが、高橋さんは「この1〜2年で風向きがすごくかわった。ステークホルダーも、お客様の側も“これってすごく環境に負荷をかけていない?”という意識が高まっている」と指摘します。
アダストリア イノベーションラボ 部長の高橋さん。
酒向さんが社長をつとめるGoodMorningが生まれたのも、そんな社会変化の兆しの現れ始めた2016年。クラウドファンディング CAMPFIREの中でより一層社会問題に特化した別ブランドを立ち上げよう、とスタートしたと言います。
SDGsはもはや“当たり前”? 世代間のギャップも
そういった社会のうねりに呼応するように生まれたSDGsを、大崎さんは「CSRと違い、次世代にサスティナブルな環境や社会を残すためのロードマップ」と評します。「おふたりがなさっていることはとてもSDGs的だけれど、バッジをつけたりはなさっていないですよね?」との大崎さんの問いに、「当たり前のことをやっているだけだから、わざわざマークはつけない」と酒向さん。「そもそものビジネスモデルを変えなくちゃいけないのも、生き延びるための努力も当たり前。逆に、いまどうして話題になったんだろう? という気持ちがありますね」。
GoodMorning代表取締役社長の酒向さん。
酒向さんより2回り上の世代である大崎さんはそれを聞いて「上の世代として、グレタさんに対してと同じ、“すみません”という気持ちがあります。ただ、今は私たちの世代が意思決定する立場にあるので、きちんとしたバトンを渡していかないと」と語りました。そこから話は世代間のギャップへとふくらみます。
1980年代生まれの高橋さんは「エポックメイキングなことがないのが我々の年代ですね。自分たちの子どもがグレタちゃんの世代なので、バリバリ働ける50歳までにどうやってイノベーションを起こそうかと考えています」。
それに対し、ゆとり世代ど真ん中の酒向さんは「バブルは弾け、少子化や温暖化は進み、上り調子なところで生きたことがない世代」と自己分析。おまけに高校生のときにゆとり世代の教育は失敗だったと話題になったことで、逆に「そんな状況に面白さを見出さないと絶望するよねと思いました」
どう起こす? 枠組みを変えるイノベーション
それぞれの世代での問題意識をもってビジネスに取り組んでいる高橋さんと酒向さん。大崎さんから「SDGsの本質は、ソーシャル・トランスフォーメーション、つまり、今までの考え方ややり方を変えること。おふたりは、そんなトランスフォーメーションをどう考えますか?」との問いが。
We Empower ナショナルコーディネーター、プラン・インターナショナル・ジャパン理事の大崎さん。
高橋さんは「欲しい人の分だけ作る」を最終的なゴールにすえ、カスタマイゼーションにその未来を見ると語ります。数十年かけて緻密に作られたサプライチェーンなどのシステムに手を入れるより、一歩ひいて違う事業を始めるほうが、進みも早くショーケース化できると考えているそう。
そんな高橋さんを受けて、酒向さんは「仕組みを変えること」に言及しました。「たとえば“マイボトルを持ちましょう”と言われるのもすごく不満。個人がいくら努力をしても、ペットボトルをたくさん作っている社会が変わるわけじゃない。仕組みや制度から変えようというアクションがもっと取り上げられるように、と思います」。
会社のためでなく、自分のため、未来の地球のために働く
「環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業に優先的に投資するESG投資など、投資家のあいだで企業の根本的な仕組みを見る動きが高まっている。同時に、世界的に見て、今の若い世代はジェンダー平等やサステナビリティに対する意識が高い。優秀人材を獲得するには、企業も変革が必要です」と大崎さん。
それに高橋さんも「確かに、人材確保は大変です」と同意。“何のためにやっているのか”“私の仕事がこの事業に何を及ぼすのか”というWhyの部分を聞かれることが多く、チームとして同じベクトルを向く人材を探すのが難しいと分析します。
スタートアップからキャリアを始めた酒向さんは、まったく逆の立脚点。「私にとってもみんなにとっても、会社は踏み台なんだと思っています。採用する側になって“辞められたらどうしよう?”と思うこともありますが、だからこそ、その人にとっていかに利用価値のある会社になれるかを考えます」ときっぱり。
とはいえお二人とも、自身がやりたいことを叶えるプラットフォームとして現在の会社があるという認識は同じ。そして、「何万人の顧客を獲得する事業モデルより、100人のラブを」という姿勢も共通していました。
社会の持続的成長に貢献
本セッションに協賛したKDDIも、2019年-21年度の中期経営計画のひとつに「社会の持続的な成長に貢献する会社」を掲げ、「KDDI が目指すSDGs」を策定。事業や企業活動を通して、地方の課題解決や人財育成、女性活躍推進などに取り組んでいます。SDGsの可能性はますます広がっていきそうです。
MASHING UP VOL3
- 大崎 麻子(UN Women/ILO/EU協調プロジェクト「We Empower」 ナショナルコーディネーター、プラン・インターナショナル・ジャパン理事)
- 酒向 萌実(GoodMorning 代表取締役社長)
- 高橋 朗(アダストリア イノベーションラボ 部長)
撮影/今村拓馬 文/高見沢里子
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