2019年11月7日・8日の2日間にわたって行われたビジネスカンファレンス「MASHING UP vol.3」。 “Reshape「働き方」”のテーマのもと、異なるふたつの視点からキャリアについて考察されたセッションがありました。ひとつは「休みの過ごし方」について、そしてもうひとつは「キャリアプランとの向き合い方」について。自分が喜びを感じる対象を見つけ、ぴったりのキャリアを手に入れるためには? たくさんのヒントが詰まったセッションの模様をリポートします。
仕事も育児も「仕事であり休み」という感覚
まずひとつめは、オマツリジャパン代表取締役の加藤優子さん、漫画アプリPalcyの編集長を務める講談社の助宗佑美さんをパネリストに迎えて行われた「休まざるもの、働くべからず」と題されたセッション。モデレーターは、パーソルホールディングスCDOの友澤大輔さんです。
日本全国に30万もあるといわれているお祭りを盛り上げ、地方創生や文化の伝承、お祭りを通したコミュニティづくりなどを行なっている加藤さんは、昨年、出産して一児の母に。働き方の方向転換を迫られた結果、仕事も育児も両方が「仕事であり休みである」という感覚になった、と語ります。
「出産してから、仕事している時間はいつも『こんなに自由に働けて、ありがたい〜!』って思っています。仕事ばかりだと、『休みすぎた! 育児や家事もやんなきゃ!』ってなるし、反対に育児集中だと『仕事やばい!』ってなる。ある意味では、どちらも中途半端になりながらやっている感じですね」
オマツリジャパン 代表取締役の加藤さん。
加藤さんは“中途半端”という言葉を使いましたが、そう語る表情はとても楽しげ。仕事と子育て、どちらも楽しく、どちらにも全力投球している様子がうかがえます。
休日はあえて「主体的に過ごす」をやめてみる
一方、助宗さんも20代のころとは働き方、休み方が変わってきたと語ります。
「私が出版社に入ったころは、徹夜は当たり前。でも、担当した東村アキコさんの『東京タラレバ娘』もそうですが、『女の人の幸せってなんじゃろか〜』って考えることが、ヒットにもつながるようになって。がむしゃらに働くだけでは、読者に寄り添えないと感じるようになってきたんです」
そこで助宗さんが実践しているのが、休みの日はとにかく主体性をなくす、という過ごし方。
講談社 Palcy編集チーム 編集長の助宗さん。
「キャリアを積んでいくと、自分で決定しなきゃいけないことの連続じゃないですか。誰かに指示したり、指揮をとったり、日々の小さなことも優先順位を決めていかないといけない。だから、自己決定をしないということだけでも、非常に心が休まるな、と思います。本気でなんも決めない。夫が山に行こうと言えば、登ったことがなくてもついてく。マズい店にいこうが、ダサい店に行こうがいい。相手に委ねているとイヤな思いをすることもあるかもしれないけれど、それは自分で決めているとできないこと。何が嫌かわかるのって、それもいいことだな、って思います」
モデレーターの友澤さんは、「休みにどこか出かけなきゃ!」と思うことがストレスで、休日も気づけば仕事、ということも多いそう。
パーソルホールディングス CDO(Chief Digital Officer)兼グループデジタル変革推進本部 本部長の友澤さん。
「でも、それが自分にとってはストレスじゃないのなら、別にいいのかも! 遊びなのか、仕事なのか、それは自分がどう感じているかですね」。
たとえば、ときには受動的になって、与えられるものを素直に受け取ってみること。たとえば「この時間は、最高の休みだ」と自覚すること。
働き方が多様であるように、休み方も多様。自分にとってストレスのない過ごし方を見つけることが、休み上手になる秘訣なのかもしれません。
流されてみたからこそ出会えたセレンディピティ
2つめのセッションのお題は、「キャリアプランなんていらない?」。
登壇者はエッセイストの紫原明子さん、ビタミンCEOの高松裕美さん、進行役は引き続き友澤大輔さんが務めます。
紫原さんも、高松さんも、まず驚かされるのがそのユニークなキャリア。
紫原さんは18歳で結婚し、二児の母に。夫が立ち上げた会社は業績好調。数年後には上場を果たし、「人生上がり!」かと思いきや、「夫が数千万ものお金をキャバクラにつぎこんでいた」ことが発覚し、離婚。そこから出版社やPR会社に縁を得て仕事をしつつ、精力的にブログを執筆し、やがて文筆業へと入っていったという、まるでドラマのような展開……!
「自己決定はあまりしていなくて、選択肢も少なかったからあまり悩まなかった。でも、家事や育児を頑張っても履歴書には書けないし、職歴がないから就職も難しい。こういう経験をしてきた私だからこそ果たすべき役割があるんじゃないかな、と考えられるようになりました」と紫原さん。
エッセイストの紫原さん。
紫原さんは、深い悩みを吐き出せる場をつくろうとオフラインサロンを主宰したり、赤ちゃんの泣き声を温かく見守っていることを示す「WE ラブ 赤ちゃん」ステッカーを発案したりと、活動の場を広げています。
選択の軸は社会的成功ではなかった
高松さんは、カリスマ美容師ブームにのって美容師になるも、26歳のときにまったく畑違いのベンチャー企業に転職。会社を20億円で買収されるまでの成長に導いたのちに独立し、現在は、スタートアップ企業の支援をする会社を運営しながら、エンジェル投資も行っています。
「自分の強みって、ほぼ自認できないものだと思います。私も、たまたま人事や組織の統括をやってみて、ここが私の能力が開花するところだったんだな、と後から気づきました。だから、まだなにもない創業期のベンチャーに入って『何をやっても生きていける』と思えたのは、大きな財産ですね」
ビタミン CEOの高松さん。
「あれよあれよ」と今のキャリアに行き着いたと話すとおり、高松さんもキャリアプランは立てていないそう。ただ、美容師を辞めるとき、会社を立ち上げるとき、選択をする場面では常に「社会的成功」とは別のベクトルでジャッジをしてきたと語ります。
「社会的なキャリアを得ることって、私にとっては大事ではなくて。それよりも、今の自分の状態、刺激がほしいのか、時間がほしいのか、それを軸にして選択をしています」
あえて流れに身をまかせることで、思いもよらないチャンスが巡ってきたり、自分でも気づいていなかった能力に出会えたりする。
紫原さんは「人って、なかなか思うようには生きられないもの」と言います。だからこそ、すべてを計画立てようとせず、ゆるやかに、あえて流されてみる、というのもアリなのかもしれません。
休み方、キャリア形成、どちらもビジネスパーソンにとっての大テーマ。でも、大上段に構えるばかりが向き合い方ではありません。もっと気楽に、自分らしく。2つのセッションは、そんなヒントをくれる時間となりました。
MASHING UP VOL3
- 加藤 優子(オマツリジャパン 代表取締役)
- 助宗 佑美(講談社 Palcy編集チーム 編集長)
- 友澤 大輔(パーソルホールディングス CDO(Chief Digital Officer)兼グループデジタル変革推進本部 本部長)
MASHING UP VOL3
- 紫原 明子(エッセイスト)
- 高松 裕美(ビタミン CEO)
- 友澤 大輔(パーソルホールディングス CDO〔Chief Digital Officer〕兼グループデジタル変革推進本部 本部長)
撮影/TAWARA(magNese) 文/浦上藍子
sponsored by パーソルホールディングス
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