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脱ペットボトルはプラゴミ問題の解決にならない? 私たちが知っておくべき「プラゴミの事実」-家庭ゴミ編-

「プラゴミ」=ペットボトル?

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みなさんは、「プラスチックゴミ」と聞くと何をイメージしますか?

「マイボトル」を持ち歩く人が増え、飲料水を無料で提供する「給水スポット」の設置も各地で広まる昨今。メディアも“脱ペットボトル”の動きを大きく取り上げ、「プラスチックゴミ問題の最大の要因=ペットボトル」という構図が広まっています。ですが、実はこれは正しい認識ではありません

では、プラスチックゴミの本当の実態は何でしょうか。

3つのプラスチックゴミ問題って?

日本でいま課題となっている「プラスチックゴミ問題」は、主に3つに分類されます。

海洋プラスチック問題

陸上や海上での不法投棄などによって、プラスチックゴミが海洋に流失している問題です。海洋生物をはじめ生態系への影響が深刻化しています。

廃プラスチックゴミの処理問題

焼却と埋め立て設備が不足し、ゴミの処理が追いついていない問題です。オフィスや商業施設などから出る事業ゴミ(産廃系廃プラスチック)の一部を、発展途上国に輸出して処理を頼っているのが実情です。

マイクロプラスチック問題

マイクロプラスチックとは、洗顔料などに入っているマイクロビーズや繊維くず、人工芝など、5mm以下の小さなプラスチックのこと。その小ささゆえに回収が難しく、環境に影響を及ぼしています。

このように、「プラスチックゴミ問題」とひとことで言っても、問題の背景は複雑。それでは、次にプラスチックゴミの内訳を見てみましょう。

ペットボトルが占める割合は、プラゴミ全体のたったの6%

ぷらごみグラフ2

プラスチックゴミの分野別内訳(2017年)

一般社団法人プラスチック循環利用協会 18年12月発行レポート、PETボトルリサイクル推進協議会 2018年年次報告書参照

日本全体のプラスチックゴミの総排出量は年間903万トン(※1)。そのうち、レジ袋や食品トレー、お菓子の包装などの「包装・容器・コンテナ類」は全体の4割を占めています。

次いで約2割を占めるのが、電気・電子機器、 電線・ケーブル、 機械等。ペットボトルはというと、59万トン(6.5%)と、世の中で語られているよりはるかに少ない割合です。

※1 一般社団法人 プラスチック循環利用協会レポート(18年12月発行)、PETボトルリサイクル推進協議会 2018年年次報告書より

日本のプラゴミのリサイクル率は8割以上⁉︎ でも、その実態は

それでは、プラスチックゴミはどのように処理されているのでしょうか。一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2017年の日本のプラスチックゴミ903万トンのうち、86%(775万トン)がリサイクルされ、残り14%は、焼却・埋め立て処理されています(※2)。

86%というと、一見かなり優秀な数字に見えます。ですが、実はこの「リサイクル」の7割近くを占めているのが、「サーマルリサイクル」ゴミを燃やして発生した熱を回収し、発電や温室プールの熱源などに利用する方法です。純石油製品であるプラスチックは、石油や石炭と同等の発熱量を有するため、焼却することで大量の熱エネルギーを回収できるのです。

※2 一般社団法人プラスチック循環利用協会 18年12月発行レポート、PETボトルリサイクル推進協議会 2018年年次報告書参照。

国際基準では認められない、日本独自の「リサイクル」

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プラスチックごみを燃やして、温水プールの熱源や発電などに利用する「サーマルリサイクル」。国際基準では「サーマルリカバリー(熱回収)」と呼ばれ、リサイクルとは認められていない。

ゴミを燃やして“リサイクル”だって? リサイクルは、再利用・資源化することでは?」という声が聞こえてきそうです。実は「サーマルリサイクル」という言葉は和製英語。この方法は欧米ではサーマルリカバリー (Thermal Recovery:熱回収)と呼ばれ、そもそもリサイクルの範疇には含まれていません

国際基準でリサイクルと認められているのは、廃プラスチックを新たなプラスチック製品などに再利用するマテリアルリサイクルと、鉄の原材料やガス、石油などに再利用するケミカルリサイクルのみ。一方、日本の廃棄物やリサイクル政策の基盤となる「循環型社会形成推進基本法」では、サーマルリサイクルもリサイクルとして認めているのです。

日本は「リサイクル」を、かなり広い意味で独自に定義し、「高いリサイクル率」を掲げているのです。となると、日本のリサイクルの定義自体についても、考え直してみる必要がありそうです。

プラスチックを手にする前に

私たちの暮らしから出るプラスチックゴミに目を向けてみましょう。ペットボトルは、実は分別・回収率が9割と高く、大半がマテリアルリサイクルの手法で新しいペットボトル(ボトルtoボトル)やシート、繊維、成形品などに生まれ変わります。

一方、レジ袋やスーパーなどの弁当容器、コーヒーのプラカップなど、「包装・容器」に使われる大量のプラスチックゴミはというと、「サーマルリサイクル」、つまり燃やされる対象。ペットボトルよりもはるかに多いこれらのプラスチックゴミですが、「脱ペットボトル」の動きの影で、盲点となっているのではないでしょうか。しっかりと目を向け、減らす方法を考えていかなければなりません。

執筆/土田ゆかり 構成/MASHING UP編集部 Image via Shutterstock

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