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- 女性のリアルペインを解決する。女性起業家のアイデアピッチコンテスト
2019年11月7日・8日のMASHING UPで行われた、注目の女性起業家によるピッチ大会。さまざまな分野で道を切り拓いてきた4人が集まり、事業アイデアを競う5分間のピッチを行いました。
iSGSインベストメントワークスの佐藤真希子さんをモデレーターに、『日経xwoman』総編集長の羽生祥子さん、元楽天常務取締役で現マッシュプラス代表の高橋理人さん、アドビ システムズ副社長の秋田夏実さんなど6人の有識者が審査員を担当。成長性(市場規模)、優位性とユニークさ、社会的意義やインパクト、そして会場の心を動かすマッシングアップ度の4つの観点から審査されました。
生産者のこだわりが評価される社会へ
ビビッドガーデン 秋元里奈さん。
最初の登壇者はビビッドガーデンの秋元里奈さん。マルシェのように、農家から直接、朝採り野菜を購入できるオンラインサービス「食べチョク」を提供しています。
農家と消費者をつなぐシステムは、神奈川県で農家の長女として育った秋元さん自身の経験から生まれたもの。
「母親から『農業は継ぐな』と言われ、実家は廃業しました。私自身はDeNAに入社したのですが、『なぜ農業をやめてしまったのだろう』という思いが強くて。いろんな生産者さんを回るようになって、見えてきたのが『こだわるほど儲かりづらい』という流通の課題です」(秋元さん)
通常の流通ルートでは、多くの中間業者を挟むため、農家の収入は低く、販売価格も固定。見た目だけで価格が決まってしまい、こだわりは価格に反映されません。一方、「食べチョク」では、価格は生産者に自由に決めてもらうシステム。農家に直接ファンがつけば、手取りもどんどん上がっていきます。
「消費者は新鮮な野菜を手に入れられるだけでなく、サービス上で農家さんと直接コミュニケーションを取ることで、まるで実家からの仕送りのような、ぬくもりのある体験が得られます」(秋元さん)
農家と消費者をマッチングするコンシェルジュサービスや、農家と飲食店や小売店をつなぐサービスも実施。リリース2年で生産者の登録者数を600件まで伸ばしています。「これなら娘に農業を継がせられる、とおっしゃってくれた生産者さんもいます」と秋元さん。
1兆円規模を超えるという農作物の直売場市場をオンライン化し、肉・魚・酒の展開もスタート。「生産者のこだわりが正当に評価される社会」を目指したい、と語りました。
AIが社員の積極的な恋愛をサポート
AILL 豊嶋千奈さん。
続いて、AIを使った恋愛コミュニケーションサービス「Aill」を、企業の福利厚生の一環として提供するAILLの豊嶋千奈さん。同サービスを福利厚生に導入した企業の従業員のみが利用でき、信頼できる企業同士のプラットフォームだからこそ、安心して異性と出会うことができます。
「会社の利益創出のためには、従業員エンゲージメントが不可欠です。従業員エンゲージメントを高めるには、ワークライフシナジー(仕事と生活の相乗効果)を生み出すことが大切です。Aillは従業員の生活の充実に貢献します」(豊嶋さん)
「恋愛で傷つきたくない」「結果が不透明なことに注力できない」という現代人の心理を、出会いからおつき合いまでの関係進呈をナビゲートする「Aill」がサポート。気になる異性の気持ちやその変化、自分の行動に対する結果をAIが事前予測し、実際の行動をアシストします。豊嶋さんは武田薬品トップの営業ノウハウを恋愛に転用し、「Aill」を大学の垣根を越えたドリームチームで共同開発しています。
安心かつユニークな「Aill」はメディアからも注目の的に。企業のシステム利用料は年間60万円、従業員は月額5000円でサービス使い放題。5年後には会員数30万人規模までに成長させ、売上高100億円を目指しています。
海外へのOEM提供をはじめ、夫婦間や社内の人間関係などへの転用も視野に入れているとのこと。「Aill」によって仕事と愛が両立できる社会づくりに貢献し、さらに日本の少子化対策や労働力確保につなげたいと述べました。
世界中のすべての女性に手を差し伸べる
Lily MedTech 東志保さん。
東大発のベンチャー企業、Lily MedTechの東志保さんは、痛みのない、安全で快適なスクリーニング検査が実現できる、乳房用の画像診断装置を開発中。
「ベッド型の装置にうつ伏せになってもらい、リング型の超音波送受信機が搭載された穴に片方ずつ乳房をいれてもらうという方法で、痛みがなく、被ばくもなく、裸の乳房を誰かに触られることもなく、また若い方に多い高濃度乳房という、マンモが見落としやすい乳房でも見落としが少ないのが特徴です」(東さん)
マンモグラフィの欠点を解消するだけでなく、診療放射線技師のスキル依存性が低く再現性の高い画像が撮れるのが魅力。今後はアジア、中東、アフリカへの市場進出を狙うとともに、独自開発のAIに加え、医師による読影チームを立ち上げ、海外で撮影された画像を遠隔で診断できるようにするとのこと。読影サービスなどを含められるため、装置自体は安価での提供が可能。マンモグラフィを正規価格で購入できない、あるいは読影医が少ない新興国の病院やクリニックもターゲットです。
検査装置の市場はグローバルで34億ドル、遠隔読影サービスが300億ドル。患者の自己負担額は、マンモグラフィと同じ5000円程度が想定されています。
大学や医師と共同研究を進め、フォーブスライジングスターアワードなど数々の賞を受賞している同社。「高校時代に母をがんで亡くした経験が今につながっている」という東さんの強い想いが推進力となっています。
愛する「猫様」と1秒でも長く暮らすために
RABO 伊豫愉芸子さん。
最後の登壇者は、猫専用の首輪型のウェアラブルデバイス「Catlog(キャトログ)」を提供するRABOの伊豫愉芸子さん。81%に及ぶ「猫を留守番させている飼い主」を安心させるため、猫の活動データをリアルタイムで収集。走っている、食べているといった猫の活動を判定し、アプリを通して飼い主のスマートフォンに通知します。飼い主は猫のアニメーションによって、いつでも愛猫と一緒にいる感覚が楽しめます。
「毎晩、隣で眠る愛猫を見ながら、『どうかこの子と一秒でも長くいられますように』と祈っています。これを実現するために考案したのがCatlogです」(伊豫さん)
大学院まで、クジラなど海洋動物を中心に、体に小型のセンサーを装着して行動を観察するバイオロギングを専攻。修了後はリクルートでプロダクト開発や新規事業開発に携わっていた伊豫さんだからこそ、愛猫×バイオロギングのアイデアが生まれました。
デバイスはセットで14,800円、アプリは月額380~580円の有料プランを展開。ローンチ後、ユーザーによる自主投稿で1日に約1.2万件がツイートされたことで、販売開始1.5週で4カ月分の販売計画を達成しています。
ペット保険や疾病予測、製薬会社などからも注目され、猫の異常を検知したら、獣医師、警備会社などに緊急アラートで知らせ、救助してもらうための連携も進行中。「世界中の猫様と飼い主が一秒でも長く一緒にいられるように、猫様の生活をテクノロジーで見守ります」というメッセージで締めくくられました。
ペイン(痛み)の解決を事業に
四者それぞれに喝采が送られる中、優勝を手にしたのはLily MedTechの東さん。新規事業を考える上で重要とされる「ペイン(痛み)の解決」という視点において、女性の心身のリアルなペインを解決する乳房用超音波画像診断装置を開発し、医療という既得権益のある世界に果敢に立ち向かう姿勢が評価されました。
「皆さんに応援の声をいただくことで、勇気を頂いています。引き続き、皆さんからの想いを忘れずに成長していけるよう、頑張りたいと思います」と東さん。
東さんには、優勝賞品として星野リゾートより全国15か所に展開する温泉旅館ブランド「界」の1つ、栃木県日光市の中禅寺湖畔の『界 日光』の宿泊券が贈呈されました。
また、フランス発認証オーガニックコスメブランドのメルヴィータより、寝ている間の代謝に着目した新しいボディケアライン『リラクセサンス』と、ブランドの代名詞ともいえるベストセラー商品『ビオオイル アルガンオイル』が、参加賞として登壇者全員に贈られました。
農業と食、恋愛、健康、ペットと、まさに多岐に渡った今回のピッチ大会。これからの日本をリードする女性たちのパワーに、会場が熱気に包まれる中、幕を閉じました。
MASHING UP vol.3
起業家ピッチ大会
撮影/今村拓馬
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