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- ビジネスとサスティナブルを耐え抜くためのアドバンテージ/Allbirds共同創業者 ジョーイ・ズウィリンジャーさん[前編]
バイオテクノロジーの専門家ジョーイ・ズウィリンジャー氏と元サッカーニュージーランド代表のティム・ブラウン氏とが、2016年、立ち上げたシューズブランド「Allbirds(オールバーズ)」。
環境に配慮したサスティナブルなものづくりと最新のテクノロジーを融合させたシューズは世界中から注目され、アメリカの『Time』誌は「世界一快適な靴」と評した。
2020年1月16日、東京・原宿に日本初のコンセプトストアがオープン。来日したジョーイ・ズウィリンジャー氏にAllbirdsのサスティナブルなビジネスとシューズについて聞いた。
ジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zeillinger)氏 /エンジニア兼再生可能エネルギーの専門家として、ゴールドマン・サックスやデロイトといったコンサルティング企業に勤務したのち、2016年、同社の共同CEOに。
3年で世界15店舗へ。成功の秘訣は「数少ないことに集中する」こと
——ジョーイさんとティムさん、それぞれの役割を教えてください 。
ジョーイ・ズウィリンジャー(以下、ジョーイ):ティムはデザインを担当し、私はビジネスとオペレーション、素材開発を担当しています。
お互いのウィークポイントを補えるのが、われわれの強み。ティムはプロのアスリートだったので、Allbirdsが初めてのビジネスなんです。
Allbirdsが初めて手がけたモデルであり、現在ではブランドのシグネチャーモデルとなった「Wool Runners(ウールランナー)」。アッパーは最高級のメリノウール、ソールはサトウキビを原料にしている。
——スタートアップから約3年で、全世界15店舗にビジネスを拡大されました。当初、予想していましたか?
ジョーイ:想定外で非常に驚いていますし、幸運だと思っています。 なぜ成功できたかを考えると、“数少ないことにフォーカスしている”からだと思います。
メリノウールやユーカリなどサスティナブルな素材を用い、その上でモードと機能性を追求しているAllbirdsのシューズは研究開発にとても時間がかかり、1つのシューズを作るために膨大な時間とエネルギーが必要です。
そのため、シーズンごとに新作を発表するというスタイルをとっていません。新作は14カ月に1 度。既存の商品に対するフィードバックを熟考してから新しいデザインに着手するスローなスタイルを貫いています。
左から、「Wool Runner-up Mizzles(ウールランナー アップ ミズル)」 、ユーカリを主な素材とした「Tree Runners(ツリーランナー)」、「Wool Runners」。手前に写っているのは、素材となるウール、サトウキビ、ユーカリ。
高品質をキープしながら、12,000円台と消費者の手の届く価格で販売をするためには、少ないラインナップにし、一足一足に集中する必要がありました。だから、顧客へ本当に価値のあるものを届けられていると思っています。
それが、ほかのメーカーとの違いであり、成功の一因ではないでしょうか。
ダイバーシティは必須。女性の登用は会社設立時から決めていた
「Tree Breezers(ツリーブリーザー)」。アッパーのユーカリ素材とインソールのメリノウールが呼吸をするように靴の中の温度や湿度を調節する。素足でも快適で柔らかく軽い履き心地と、オンにもオフにも使えるデザインが女性に人気。
——躍進を続けるAllbirsですが、その特徴のひとつに女性スタッフが多いと伺いました。 それも成功の一因でしょうか?
ジョーイ:会社を設立した時にダイバーシティが必要だと思い、意識的に取り入れた結果、自然に女性が多くなりました。スタートから3年でスタッフが約170名になりましたが、現在57%が女性です。
これには私の前職での経験が大きく影響しています。特に、テクノロジーの分野は特別な職能を持った人が集まります。多様な視点がなくなるため、ビジネス的に間違った判断をしてしまうことも……。消費者の約55%が女性なのに、男性の集団で女性が喜ぶものを作るのは難しいでしょう?(笑)
女性役員の比率を増やすなど、まだまだやるべきことはありますが、意識的に女性の活躍の場を増やそうと考えています。
目指すのは、孫に誇れるビジネスをすること
—— Allbirdsを立ち上げた当初、ジョーイさんとティムさんの「目指すゴールが同じだった」と伺いましたが、それはどんなゴールですか?
ジョーイ:「孫に誇りを持って語れるビジネスをする」ことですね。孫の世代が生きる地球にいい影響を与えたと語り継がれるようなものを作りたいと思っています。
今まで、シューズ産業には持続可能な資源を使った商品が存在しませんでした。天然素材を使った全く新しいカテゴリーの靴を生み出し、地球環境に貢献すること。それが、ティムと私の目標です。
ビジネスとサスティナビリティを両立し、持続させるために
—— Allbirdsのようにサスティナブルなビジネスを持続していくために、大切なことはなんですか?
ジョーイ:現在、投資家から資金を調達しているところですが、『地球の環境保全に貢献していると伝えるため、利益の数%をNGOなどに寄付してはどうか』と提案されることがあります。
しかし、そういうことではない、と伝えています。
プロダクトにサスティナブルな素材を使っても、製造の過程で炭素を排出し、大気を汚染する場合もあります。しかし、Allbirdsは製造過程の炭素排出減もコスト構造に組み込んでいます。その上で、消費者の手の届く価格で高品質の商品を提供できている。それこそが他社と全く違うAllbirdsのアドバンテージであり、これを続けることにこそ意味があります。
私たちは「ビジネスとサスティナブルを耐え抜く」というベースからスタートしています。Allbirdsの全てのDNAに、サスティナビリティが浸透している。だから、ビジネスも地球環境の保全も持続していけるのだと思います。
※後編では、サスティナビリティを追求したシューズの詳細に迫ります。
撮影/キム・アルム、取材・文/石上直美
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