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Conference:MASHING UP vol.3

ひとりも脱落者が出ない教育システムを/Enuma CEOスイン・リーさん

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誰もが基礎学力を身につけられる教育ソフトを開発するEnuma(エヌマ)社。

MASHING UPカンファレンスvol.3初日のキーノートスピーカーとして、共同創業者兼CEOのスイン・リーさんが登壇しました。

Enumaが目指すのは、どんな環境におかれた子どもでも基礎学力を身につけられるようにすること。ゲーム方式の教材は、子どもたちが自分のペースで学べ、モチベーションを上げてくれる仕掛けが満載です。健常者の子どもの教材としても優れており、現在世界中で幅広い支持を得ています。

子どもたちに何をしてあげられるのか?

母国の韓国で10年間ゲームデザイナーとして活躍していたリーさんは、夫の留学を機に2008年にカリフォルニアに移住。やがて授かった息子には障害がありました。

医療の専門家でない自分たちは息子に何をしてあげられるのか?リーさん夫妻はゲーム業界で培ったノウハウを教育に役立てようと思い立ちます。

古巣のゲーム会社の支援を得て、障害を持った子どもがゲームを通して学べるアプリを開発したところ、米国でヒット。シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタリストから会社を起こさないかと声がかかり、リーさんは2012年にEnumaを起業、コンピュータサイエンスの博士号を取得した夫もチーフエンジニアとして加わります。

スピーチを終えたリーさんに、お話を伺いました。

アウトサイダーだからこそできること

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キーノート「誰でもゲームチェンジャーになりえる」で話すスィン・リーさん。

——MASHING UPの感想をお聞かせください。

リー:メインストリームでない人を応援するカンファレンスだと聞き、ぜひ参加したいと思いました。私自身も、インクルージョンを目指す機運に助けられてきましたから。

——Enumaの経営方針とは?

リー: 社員の多くは障害を持つ子どもの親なので、ずっとオフィスに張りついていられません。製品づくりも、通常の教育コンテンツ制作とは違ったアプローチをとります。

コンペ(Global Learning XPRIZE)のために多大なリソースを注ぎ込んだのも営利企業としてはリスキーだったと思います。結果的に優勝できて大きなチャンスにつながりました。

いわゆる普通の会社ではない、アウトサイダーだからこそできることを見つめ、大胆にチャレンジすることを心がけています

学びのハードルを探り、取り除いていく

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——講演で印象的だったのが、図や絵などのシンボルを理解できない子どもが世界には大勢いるということでした。途上国の子どものための学習キットを開発する上で、どんな工夫をしていますか?

リー:大きく2つのカテゴリーに分けてローカライズしています。普段からテレビを見ている地域と、そうではない地域です。図柄に慣れていない子どもにとっては、ライオンやシマウマよりも、鶏やバイクなど、日常よく目にする物の方が入りやすいし、簡略化したかわいい絵よりリアルな表現の方が伝わりやすい。地域ごとにNGOなどと連携して情報収拾を行なっています。

難民の子どもも、言葉の壁などに苦労しています。いま私たちは、ミャンマーからバングラデシュに逃れてきた少数民族ロヒンギャの子どもたちのための英語学習教材を作っています。近々チームメンバーが調査のために現地を訪れる予定です。

起業が唯一の選択肢だった

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——ゲームデザイナーからCEOに転身されました。経営のノウハウはどうやって身につけたのですか?

リー:シリコンバレーには「スタートアップ・コーチ」と呼ばれる人たちがいるんです。かつて起業家やベンチャーキャピタリストだった人で、CEOに必要な知識を教えてくれる専門家です。私は移民女性というマイノリティだったため、最初は自信が持てませんでしたが、良いコーチに巡り会えて助けられました。自分の属性は変えられないし、その必要もない。経営者としてのスキルを一つ一つ身につければいいんだよ、と勇気付けてくれたのです。

——夫婦で会社を運営していると、ワークライフバランスを保つのが大変なのでは?

リー:確かに(笑)。でも、親の世代では夫婦でお店を切り盛りするなど、わりと普通の働き方なんですよ。障害のある子どもを育てている私たちの場合、会社勤めは時間的制約がありすぎて、起業が唯一の選択肢だったと思います。

2人とも出張が多いのですが、今回の日本行きはスケジュールを調整して家族全員で来ました。大変だけど、工夫して楽しみを見つけながらやっています。

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——これからEnumaで取り組みたいことは?

リー:公教育のデジタル化です。いまのベルトコンベア方式の公教育では、子どもたちは小さな躓きがもとで授業について行けなくなり、諦めてしまいます。

先生や教室など、教育には大きなコストがかかるので、チャンスは一回きり。でも、場所を選ばず自力で学べるツールがあれば、何度でも挑戦できます。ゲーム業界で培った視点で、教育システムを変えていきたいと思っています。

SOOINN LEE/スイン・リー
Enuma 共同創業者兼CEO。米国と韓国にオフィスを構える教育テクノロジー企業Enumaの共同創業者兼CEO。特別な支援を必要とする子どもや教材を入手できない子どもを含むあらゆる子どもの能力を高める学習アプリを設計。世界で700万回以上ダウンロードされた「Todo Math」、支援を必要とする子どものためのプロジェクト「Injiniシリーズ」などを手がける。2017年、世界有数の社会起業家として「アショカ・フェロー」に選出。開発途上国の子どものための学習キット「Kitkit School」は「Global Learning XPRIZE」の2019年優勝作品に。

撮影/柳原久子(インタビュー)・今村拓馬(セッション)、取材/野澤朋代

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MASHING UP編集部

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