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バッグを手に取ることで、自分の軸を思い出して/RICCI EVERYDAY 仲本千津さん

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店内に一歩足を踏み入れると、目も覚めるような色彩と大胆な柄のアイテムたちに囲まれる。ウガンダの首都カンパラの工房で、現地の女性たちの手によってつくられるバッグやポーチ、エプロンなどは、どれもほぼ一点物だ。2015年に設立後、色とりどりのプレイフルなデザインで女性たちをとりこにしているバッグブランド、RICCI EVERYDAY。東京・代官山の直営店で、代表の仲本千津さんにお話を伺った。

仲本 千津(なかもと・ちづ) RICCI EVERYDAY代表取締役
一橋大学大学院卒業後、邦銀で法人営業を経験。その後、国際農業NGOに参画し、ウガンダの首都カンパラに駐在。その時に出会った女性たちと日本に暮らす母と共に、カラフルでプレイフルなアフリカ布を使用したバッグやトラベルグッズを企画・製造・販売する「RICCI EVERYDAY」を創業。日経BP「日本イノベーター大賞2017」特別賞等受賞。頭の中を巡るテーマは、「紛争を経験した地域が、過去を乗り越え、幸せを生み出し続ける場になるには、どうすればいいか」ということ。

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2019年5月、東京・代官山にオープンした日本初の直営店"RICCI EVERYDAY The Hill"。

“ダメな銀行員”のレッテルに苦しんで

——もともとアフリカ支援に興味があったのですか?

仲本千津さん(以下、仲本)民族紛争はなぜ起こるんだろう、ということに子どもの頃から興味がありました。大学院まで進学してアフリカ政治を研究し、いつかはアフリカに関わる仕事を、と考えていたんですが、まずはお金が巡るところを見て社会の構造を学ぼうと卒業後は大手銀行に就職しました。

—— 銀行でのお仕事は、いかがでしたか?

仲本:一言でいえば、“大きな挫折”でしたね。銀行で働いてみて、初めて自分はルーティーンワークに向いていないとか、規則に縛られるのはしっくり来ないとか気づきました。あらゆることに「なんでこんなに承認プロセスが長いんだろう」「どうしてこれを守らないといけないんだろう」といちいち疑問を感じてしまい、うまくなじめなかった。しょうもないミスをたくさんしては上司に激しく怒られて、萎縮してまたミスをして、の繰り返し。

“ダメな銀行員”というレッテルを周囲に貼られ、だんだん「自分がここにいる価値はあるのかな」と感じるようになりました。どこにも抜け出せない気分で、家に帰れば体育座りでボーっとする、みたいな日々でしたね。

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抜け出すきっかけは2011年の東日本大震災でした。この世でやりたいことがまだまだあっただろうに、多くの大切な命が失われてしまった。自分は一体何をしてるんだろう、と。アフリカの開発課題に関わる仕事がやりたかったじゃないかと思い出し、アフリカで事業を展開する国際農業NPOに転職し、やがて2014年に東アフリカのウガンダ駐在となりました。

初めて責任感という言葉の重さを知った

—— 駐在先のウガンダで、アフリカンプリントと出会い、「これはビジネスになる」とバッグ作りを始められました。

仲本:スタートはわりと気軽だったんです。首都カンパラのマーケットでアフリカンプリントと出会って、かわいいから何か作ってみよう!と。裁縫の得意な現地の女性を3人集めてきて、場所を借り、趣味の延長のようにミシン1台でスタートした。

でもある時、彼女たちになけなしのお給料を支払いながら、「これ、これから先もずっと続くのかな」とハッとしたんです。彼女たちは私のために時間を割いて、サンプルを作ってくれている。私がいなくなったら、3人は収入源をなくして一気に路頭に迷うことになる。3人ともシングルマザーで子どもを抱えていたこともあり「これはうまくいかなかったら大変だぞ」と。代表として、初めて責任感という言葉の重みを知りましたね。

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—— 百貨店のポップアップストアやオンラインストアなど、日本での発売を始めると、メディアに取り上げられるなど、たちまち人気に火がつきました。今では、ウガンダのスタッフの方々に、現地の平均月収の2倍から4倍ほどの給料を支払っているそうですね。

仲本:従業員たちに良いものをつくってもらうために、仕事だけではなく、家庭や生活の部分まで含めてしっかり面倒をみよう、という思いがあります。今ウガンダの会社には二十数人の社員がいるのですが、その大半がシングルマザー。ウガンダでは一夫多妻制が認められていて、そもそも結婚という概念がゆるいんです。

出会ったころの彼女たちは、子どもを養うため、周りに頭を下げてお金を借りたり、安い工場で働いては搾取されたり。色々なところで傷つけられて、それは自分がまともな教育を受けていないせいだと自分を責めていた。それが今では、衣食住も満ち足りているし、子どもをちゃんと学校に通わせられるし、病気になれば医者にも連れていける。家族の長期的な未来を描けるようにもなって、とにかくハッピーだよ、と皆が口にしています。みんな生き生きとして、歌いながら仕事をしていたりしますよ(笑)。

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—— 従業員一人ひとりが、誇りを持って働けているんですね。

仲本:一人ひとりに責任ある役割が与えられていて、その一つでも欠けてしまったらバッグづくりは成り立たない。生産数も年々増えていて、日本のお客様たちに喜んで受け入れられているんだ、という実感が、彼女たちの自信や誇りにつながっているようです。日本向けの商品を作っていること自体がウガンダでは珍しいので、「自分たちのバッグはウガンダでナンバーワンのクオリティなんだ!」なんて胸を張ってますね。

従業員が安心して仕事に取り組むことができれば、その分良いものが生まれ、良いものを手にすればお客様もハッピーになる。その循環がうちのビジネスの大事な根幹だと思うので、やっぱり従業員が一番大切。この理念だけは絶対に崩したくないと思っています。

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必要な分だけ作る、作ったものは売り切る

—— ものづくりのこだわりとして、「女性たちの才能を開花させる」のほかにも「持続可能なものづくり」「廃棄物を減らす」を挙げられています。

仲本:もともとウガンダは、歴史的に縫製業が盛んな国でした。でも最近は中国や東南アジアから安い既成品が入ってくるようになり、現地の縫製業を圧迫しています。

背景には、年間30億点が流通するけれども、その半分は捨てられる、という衣料廃棄の現実があります。廃棄衣料の一部は、先進国からアフリカなどの開発途上国に流れてくる。難民支援のためにと寄付された洋服も、余ったものがローカルマーケットに流れて、道端に積まれて安く売られているんです。そんな現状を見ていると、アフリカは先進国のゴミ箱になっているのでは?と思うこともあります。

私たちはそういう流れにNO!と言いたくて、必要な人に必要な分だけ作る、作ったものは大きなダメージがないかぎりは売り切るというのを徹底しています。仮にお客様からたくさん需要が来ても、「今は在庫がないのでちょっとお待ちください」と言わないといけない。そのために、ある程度の機会損失には目をつぶります。

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また、製品の寿命を伸ばすため、縫製のクオリティは厳しい目でチェックしています。それから長く大切に使ってもらうためには「繋がっている感」も大事。作り手の顔がちゃんと見えて、「このバッグはインスタグラムで見たあの工房で、スーザンが作ったものなんだな」と思わせる物だったら、なかなか捨てられませんよね。

ファッションは自分を守るものでもあった

——ワンシーズンで捨ててしまうのではなく、ずっと大切にしていけるもの、というのはファッションの理想の姿かもしれませんね。もともとファッションはお好きだったんですか。

仲本:好きでしたね。それに、ファッションって自分を守るものでもある。銀行時代、服装に関してもすべて規定されていたんです。スーツの色から髪型・髪の色、ネイルまで、ルール第一・個性は無用、という感じで、とにかく同調圧力がすごかった。わたしもスーツは黒や紺のシンプルなものを着ていたんですが、中に着るトップスだけは、派手なオレンジ色だとか、糸がシャーッと大量に飛び出たデザインだとか、奇抜なものばかりを選んでいました。

ジャケットを脱げば「お前いったい何を目指してるんだ」と上司に驚かれるような格好だったんですが(笑)、今思えば、そうすることでどうにか個性を見失わないようにしていたのだと思います。窮屈な環境のなかでも人と違う色や柄を身につけて、「私はここにいるよー!」と自己主張していた。そういう意味で、ファッションはあの頃の自分を守り、助けてくれていたなと思います。

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うちの店で商品を選ぶ時間も、お客様にとって自分の軸みたいなものを思い出すきっかけになればうれしい。「わたしってどんな色が好きなんだっけ」とか「元気になれる柄がいいな」とか、選ぶときの気持ちや体験も含めて、大事に持ち帰ってほしいな、と思います。

——最後に、人生で「一歩踏み出すためのコツ」を教えてください。

仲本:日々の小さなことから、決断を大切にすることでしょうか。今日は誰と何を食べようかな、なんて些細なことでも、本当はどうしたいかを自分にしっかり問いかけて、決めていくこと。他人の顔ばかり見て決めていたら、自分が分からなくなってしまいます。「自分で決断する」を意識して繰り返していれば、いつか大きな転機が来た時に自分らしい決断ができるのではないでしょうか。

——どうもありがとうございました!

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撮影/YUKO CHIBA 取材・文/中村茉莉花(MASHING UP編集部)

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