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Conference:MASHING UP vol.3

自分の居場所は自分でつくる/VICE MEDIA ジーニー・グルナニさん

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広告業界の最前線で活躍する傍ら、ドラァッグ・クイーンとしても活動するジーニー・グルナニさん。ビジネスカンファレンス「MASHING UP vol.3」(2019年11月7日・8日)にて、2日目のキーノートスピーカーとして登壇した。

グルナニさんの本業は、米国に本拠地を置くオンラインメディアVICE MEDIA系列の広告代理店Virtueのアジア太平洋地区でのクリエイティブ責任者だ。シンガポールに駐在し、アジア各国におけるコンテンツ制作と企業ブランド戦略を統括している。

一方、ドラァッグ・パフォーマンスの方も趣味の域に止まらない。ドラァッグ・クイーンたちがパフォーマンスの独自性と完成度を競う、米国の人気番組『ル・ポールのドラァッグ・レース』のタイ版に出演したり、舞台に立ったりと、精力的に活動している。

自分に合う世界を自分自身で築く

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『朱に交わるな、カラフルであれ。組織がクリエイティブであるには』と銘打たれたセッションの冒頭で、グルナニさんは世界的に有名なドラァッグ・クイーン、ル・ポールの言葉を引用した。

We are all born naked and the rest is drag.

私たちはみな裸で生まれ、それから先は変装しながら生きていく。

「外見を整え、言葉や立ち居振る舞いに配慮し、知識を身につける。そうやって常に自分をプレゼンしながら社会の中で生きている。国籍、性別、社会的立場、専門分野に関係なく、みんながその時々に最適なコスチュームを取っ替え引っ替えしているとも言えます」(グルナニさん)

グルナニさんは過去を振り返り、自分は常に周囲から浮いた存在だったと語った。

「人生のステージごとに摩擦を経験してきましたが、それが成長に繋がってきたと思っています。表現に関しても、本業で出せない尖った部分はドラァッグで発散させ、自分のキャラクターを確立させてきました。どこにもピタッとはまれなかったからこそ、自分に合う世界を自分自身で築こうとしてきました」(グルナニさん)

一見自由に見える広告業界でも窮屈さを感じていたというグルナニさんだが、模索を続けるうちに、理想の生活が徐々に実現していった。大きな転機となったのが2019年夏。主流メディアとは違うアプローチで報道やエンタメを手がけるメディア企業VICE、そして系列の広告代理店のVIRTUE、その両方でアジア太平洋地区のチームを率いるリーダーとして採用されたのだ。

普通ってなんだろう?

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自らの来歴を通し、居場所を見つけることの大変さについて語ったグルナニさんは、次に「普通」という概念にスポットを当てる。

似た者同士で集まるのは、生き物としての習性。生存本能が働いて、どうしても周りと合わせねばという意識が働く。

また、人の個性は、外見、話し方、趣味嗜好などに現れるが、厄介なのはそれらがフラットに受け取られないということ。生まれや育ち、社会的立場を値踏みされ、優劣をつけられる。そして集団に合わない者は排除される。

「この普通っていう概念。企業内ではよくculture fit(文化への適合性)と表現するんです。例えば、人事部は採用の際、企業文化に合う合わないを見ますよね。企業文化に合っている、と言うと良いことのように聞こえますが、本当にそうでしょうか? 今日はそれを皆さんに問いたいんです」(グルナニさん)

異質なものを排除しないで

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グルナニさんは、スクリーンに以下のような公式を大きく映し出して持論を展開した。

普通=カルチャー・フィット

上のような式として表せるとする。そして「普通」は「ダイバーシティ」とは相容れない概念である。すると、導かれる結論は……

ダイバーシティ≠カルチャー・フィット

企業文化という大義名分のもと、これまでの主流派の考え方が当たり前とされ、女性やLGBTQなど少数派の人々の考え方が特殊と見られてしまう。企業に限らず、学校やクラブなど、あらゆる人間集団で似たようなことが起きている。そうグルナニさんは指摘する。

「みなさん、ぜひこのことを頭に置いて、異質なものを排除しないようにしてください。採用の権限がある人はもちろんですが、そうでない人もです。誰しもヘンな部分は持っています。私はこれからも同調圧力と戦っていこうと思っています。周りの人にもっと自由になって欲しいから。変わっていても大丈夫だと安心してほしいから」(グルナニさん)

同調圧力にポジティブに抗うには

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ロジクール 秋吉梨枝さん。

グルナニさんがスピーチを終えると、株式会社ロジクールの秋吉梨枝さんがステージに合流し、セッション後半部分がスタート。

同社のデジタルオペレーション・シニアマネージャーを務める秋吉さんは、世界各地の拠点にいるスタッフや顧客とコミュニケーションを取りながら仕事を進める。人種も文化的背景も違う人たちが一緒に仕事をしていくためには互いの価値観を認め合う視点が不可欠だ。

そうした視点が日本で当たり前になるには、まだまだ克服すべき課題が多い。秋吉さんからグルナニさんにいくつかの質問が投げかけられた。

秋吉さんが日本の同調圧力の最たる例としてあげたのが、新卒一括採用の就職活動。

「規則で決められたわけでもないのに、スーツや持ち物を黒で統一し、髪の毛も黒に染め直して、みんなが全く同じ外見になるわけです。多民族社会では、そもそも肌や髪の色が違うのが当たり前ですが、日本はそうではない。なので、少しでも違うと悪目立ちと捉えられるんです。グローバル化に合わせて意識を変えていく必要があると思うのですが」(秋吉さん)

これを受けて、グルナニさんは「流されず自分の頭で考えること」の重要性を訴える。考えた上で無難な服装がよいと判断した場合はそうするというように、臨機応変に対応するのがベストではないかと提案する。

どうすれば企業文化が抑圧的にならない?

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また、「企業文化と個人の個性を両立させる方法はあるか?」という問いには「会社と職員が同じ目標を共有すること」という答えが返ってきた。

「同じゴールを目指していれば、道筋はいろいろあってもいいかもしれませんよね。お金を稼ぐこと、商品のクオリティを上げること、イノベーションを起こすこと。何でもいいですが、ゴールが明確であれば、皆が個性を生かして良い仕事ができると思います」(グルナニさん)

会社で率直な意見を言うことの難しさについても語られた。

「日本の会議では反対意見を述べるのが苦手な人が多いなと感じます。波風を立てたくないのか、イエスばかり聞こえてくるんです。ノーと言うポジティブな方法があったらシェアしていただけますか?」(秋吉さん)

「それは生産的な仕事に不可欠なスキルですよね。場の空気を読むことは大切です。空気を読みつつ、持っていきたい方向に流れを作れればベストです。多数派に反対である場合、正面からではなく、柔らかく、意見を言ってみる。そのためには普段から周りの人と信頼関係を築いていく必要があります。日頃から自分の発言に責任を持ち、意見を聞いてもらえる下地を作っていれば、うまくいく確率は高まるでしょう」(グルナニさん)

抑圧に屈せず行動し、意見を言う。そのためには努力を惜しまない。華やかな衣装に身を包みながら、力強くそして冷静に語ったグルナニさん。その言葉はあくまでもバランスが取れていて、会場にしっかりと受け止められていた。

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GENIE GURNANI/ジーニー・グルナニ
Head of Creative for VICE / Virtue。米国発のオンラインメディアVICE MEDIAのAPACにおけるクリエイティブ責任者に加え、VICE MEDIAが手掛けるクリエイティブエージェンシーVIRTUREのクリエイティブも兼任。夜や週末にはドラッグクイーンというエンターテイナーとして活躍しており、リアリティ番組「Drag Race Thailand」にも出演する。パフォーマーとしての活動は、クリエイターそしてエンターテイナーの両方に大きな影響を与えていると考えている。インスタグラムアカウント:@wishforgenie

MASHING UP vol.3

朱に交わるな、カラフルであれ。組織がクリエイティブであるには

撮影/今村拓馬

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野澤朋代

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