いま世界で、女性の性に関する悩みや健康課題に着目し、テクノロジーの力で解決しようとする「Femtech(フェムテック)」のムーブメントが起きている。
たとえば、妊娠中にウェアラブル・デバイスをお腹に貼るだけで、ベビーの状態を自宅でモニタリングできたりするシステム。また、男性目線で作られてきたコンドームやプレジャーグッズは、女性が安心できる品質とデザイン性を備えたものへと進化した。
その多くは日本では未発売だが、2020年1月16日、お茶の水女子大学で開催されたイベント「What is Femtech?」には、最新のフェムテックおよびフェムケア製品が集められ、学生や参加者が自由に手に取って話し合っていた。
イベントを企画したのは、都内大学2年生の3人組「まめでんき」のメンバーだ。
「まめでんき」メンバー。左から、ゆめさん、ひなこさん、かほさん。
衝撃的でHAPPYな出会いを共有したい
「私たち3人は2019年11月に行われたMASHING UPカンファレンスのトークセッションでフェムテックのことを知りました。そのときの登壇者だったfermata Inc.のCOOを務めるAminaさんに、『3人でフェムテックを広める活動をしたいので、どうか一緒にやっていただけないでしょうか』とお願いしました」
そう話すのは「まめでんき」のひなこさん。MASHING UPカンファレンスの開催後から3人で今回のイベント企画、準備をはじめ、紹介したいプロダクトを選び出した。
「今回のイベント『What is Femtech?』は、私たちがフェムテックに感じた“衝撃的でHAPPYな出会い”を共有したくて企画したものです。日本では手に入らないプロダクトを届けていけるように、これから色々な活動をしていきたいと思っています」(ひなこさん)
フェムテック市場の可能性。2025年には5兆円?
イベント内で行われたトークセッションには、fermataのAminaさんが登壇。会社を設立した経緯や、世界のフェムテックの現状を語った。
fermataのAminaさん。
「『Clue』というアプリをご存じですか? 日本の『ルナルナ』のような、ドイツ発の生理管理や排卵予測ができる人気のアプリです。でも、アプリを開発したイダ・ティンさんが投資家にこの話を持ちかけたときは、『これ、儲かるの?』という反応で、まったく資金が集まらなかったそうです。そこで、FemaleとTechnologyを掛け合わせて“Femtech”という造語をつくり、あたかもそうした産業があるかのようにプレゼンをした。それがフェムテックの始まりです」(Aminaさん)
2012年の「Clue」設立と共に始まったフェムテック市場。2025年には5兆円規模に成長すると予測(※)されている。
「2019年はフェムテックにとっては大きな、ブームになったといえる1年でした。2013年にできた『elvie』というウェアラブル搾乳機を販売している会社が新たに膣トレのプロダクトを開発して、約42億円という投資額を調達したこともそのひとつ。42億円というと、規模的には日本のメルカリと同じくらい。フェムテック市場に、メルカリと同じような規模の会社がこれからどんどん出てくるということです」(Aminaさん)
世界中から集められた、革新的でカラフルなプロダクト
この日のイベントで展示されたフェムテックのプロダクトは、生理、妊娠・妊活、セクシャルウェルネスなど、女性特有の健康課題を解消するものだ。
それぞれ手書きのコメントが添えられていて、機能のポイントや革新性がわかりやすく紹介されていた。
スマート月経カップ「LOON CUP」。
韓国発の月経カップ「LOON CUP」は、経血の量や色、周期、温度をアプリで常時モニタリングできるという世界初のスマート月経カップ。経血を“汚いもの”ではなく、女性にとって大切な情報がつまった貴重なものと捉え直し、月経の経血から婦人科疾患などに関する健康チェックができる未来を目指している。
写真右手前のプロダクトが「Livia」。
ライラック色のデバイスがキュートな「Livia」はイスラエルから。下腹部につけて微量な電磁波を体に流すことで、神経を麻痺させ生理痛の“痛みの信号”が脳まで伝わるのを防ぐというもの。
低用量ピルのサブスクリプションサービス「pandia health」。そのほかにも、会場には全部で12種類ほどのフェムテックが展示されていた。
「女性がピルを飲まない一番の理由は、簡単にピルにアクセスできないこと」と考え、低用量ピルのサブスクリプションサービスを展開するのはアメリカの「pandia health」。問診票の記入から身分証の提出、医師の審査まで全てオンラインで行い、薬は無料で配送してくれるという。
これらのプロダクトに加え、オーガニックのデリケートゾーンケア製品や膣内の粘膜をモニタリングすることで妊娠しやすい期間を予測するサービスも注目を集めていた。
フェムテックで、自分の体とポジティブに向き合う
トークセッション後に行われたワークショップでは参加者がグループに分かれ、それぞれが興味をひかれたフェムテックの分野やプロダクトについて語り合った。
社会が変化して女性の社会進出が進んでも、女性の体は変わらない。男性と同じように働こうとするなかで、女性の体には大きな負担がかかってきた、とAminaさんは言う。
フェムテックを知ることは、社会だけでなく、女性自身が見ないふりをしてきた“自分の体”と向き合う第一歩になる。そんな明るい希望を抱かせてくれたイベントだった。
※ Femtech—Time for a Digital Revolution in the Women’s Health Market (FROST & SULLIVAN)

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