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いつか「女性リーダー」という言葉がなくなる日まで/ Yahoo!アカデミア学長 伊藤羊一さん

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2014年に発足したYahoo!アカデミアは、リーダーになる人材を育成する企業内大学だ。学長の伊藤羊一さんは、ヤフーの管理職のジェンダーギャップを縮めるため、2019年9月からアカデミア内で「女性リーダークラス」をスタートさせた。「女性は、前進を阻む特有の悩みや困りごとを共有し、対話する場を必要としている」と考えたからという。設立の背景や、クラスにかける思い、そして受講者が得た気づきなどをうかがった。

伊藤 羊一(いとう・よういち)さん
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月、ヤフーに入社。企業内大学Yahoo!アカデミアの学長を務め、ヤフーグループの次世代リーダーの育成を行う。著書に、『1分で話せ』『0秒で動け』(SBクリエイティブ)、『やりたいことなんて、なくていい。 将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義』(PHP研究所)など。

MASHING UPに登壇し、衝撃を受けた

——女性リーダークラスを作ったきっかけを教えてください。

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伊藤:2018年に登壇した、MASHING UPカンファレンスの「消える仕事、残る仕事」のセッションが大きな転機になりました。参加している女性たちが、ものすごく真剣に聞いてくれたことが衝撃的だったんです。男性参加者の多い他のイベントでは、ほわっと聞いている人、または全く聞いていない人が多いんですよ。でも、MASHING UPのセッションでは、女性の真剣さに引っ張られて男性もちゃんと聞いている雰囲気がありました。どうして男女でこんなに違いが出るのかを考えたときに、女性には、話を聞く機会や語る場が少ないんじゃないかと思い当たったんです。

また、女性の働く環境を考えてみると、ヤフーは、男女の構成比率が6対4か、7対3くらい。でも、管理職層になると、女性の数がぐっと減ってしまう。これは以前からおかしいよなあと思っていました。社内外の女性に、働きにくい点、リーダーになりにくい点があるのかを聞いてみても、「男性も女性も関係なく働けていますよ」という答えが返ってくる。でも、現実に女性リーダーは少ないんです。

そこで、女性ならではの悩みや困っていることがあるのではという仮説のもと、2019年9月に「女性リーダークラス」を作りました。2020年3月までの約半年間で、計6回の開催です。ただ、「女性」という枠を設けることに逡巡がありましたし、どういう反応があるのかという懸念もありました

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——実際はどうでしたか?

反対や疑問の声はゼロでした。20人の募集に対して、応募はグループ企業全体で80人。選考は、なるべくさまざまな職種、部署の人になるように配慮しつつも、抽選で決定しました。

クラスが終了しても受講生の話が止まらなかった

——クラスの内容は、どのようなものなのですか?

基本的には、Yahoo!アカデミアの他のクラスと同じで、「マインド」を大切にします。マインドがしっかりしていれば、スキルは自分で鍛えられるようになります。6回のうち、最初の2回は、それぞれが自分のやりたいことを確認します。自分の過去、現在を振り返り、自分が大事にしているものを明確にして、未来を描く。そのための成長や変革を妨げているものはないかを点検して、対話とディスカッションをします。

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3回目はロールモデルになるような社外の女性リーダーを招きました。パワフルで、なおかつ包み込むような愛のある方ということで、ウィズグループ代表取締役の奥田浩美さんと、WAmazing代表取締役社長CEOの加藤史子さんにお願いしました。そして、4回目は社内版です。5人の課長や本部長層の女性から仕事で苦しかったこと、乗り越えたことなどを話してもらいました。

5回目のゲストは、「メイド・イン・ジャパン」をもう一度元気にするという熱い思いで「ファクトリエ」のビジネスを展開しているライフスタイルアクセント代表取締役の山田敏夫さん。「どこか人けのない駅に着いたら、電話帳で服を作っている工場を見つけて、片っ端から連絡してみるんですよ」なんて行動力のあるエピソードを披露してくれました。これから迎える最終回では、受講生全員のプレゼンテーションを予定しています。

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——受講した方からは、どんな感想が聞かれますか?

「横のつながりを必要としていたことに自分でも気がつかなかった」「部署を超えたつながりができて仲間を得られた」「具体的な問題があるわけではないけれど、男性部下に気兼ねしてしまう気持ちを共有できた」という感想などを聞いています。また、ロールモデルになるような人たちの話を聞いたことで、「異次元の話ではなく、自分も同じように可能性がある」という気づきを得た、という人もいます。

印象的だったのは、毎回受講者の多くが、クラス終了後も残って話していて、その場を楽しんでいたことです。たいていこういったクラスは、終わると蜘蛛の子を散らすようにして帰ってしまうものなんですが。そこで、4回目からはもっと互いに話し合う時間を取ることにしました。今は、終了前の5分間はそういった「雑談」の時間に当てています。そうしたら、やはり皆、互いに熱心に話し合っていて、本当に対話の場を必要としていたんだなと思いました。今は、女性が対話する場を作ることはとても大事なことだと確信しています。

応募がゼロになるまで続けたい

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——第1期をふまえて、4月からはどんなクラスにする予定ですか?

基本的に内容は変わらず、とにかく対話を意識したいです。「自分らしく」とはどういうことかを考えてほしいんです。「こうありたい」という自分になるためには、社会の壁もあるでしょうし、自分の中にも無意識に妨げているものがあるのかもしれません。でも、社内外の先輩の話を聞いたり、受講者同士で対話をしたりしてネットワーキングが進めば、気づきを得て、解決策も自ずと出てくるでしょう。

クラスを始めたときは、「女性リーダーを育てる」という思いで始めました。今は、クラスには2つの側面があると考えています。1つ目はリーダーが育つためのきっかけを作っていること。2つ目は対話の場を提供していることで、これは本当に良かったと思っています。

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——今後、「女性リーダークラス」をどのように展開させたいですか?

自分の中で明確になったことがあります。それは、「女性リーダー」という言葉がなくなるまでクラスを開講する、ということです。アカデミアには、「Free ,Flat, Fun」の3つの理念があります。フラットな状態が実現できたときには、「なぜ、『リーダー』にわざわざ女性をつけるんだっけ?」となるでしょう。そもそも「女性リーダー」という言葉が世の中からなくなり、応募がゼロになるまでやり続けたいですね。

私自身、フラットであることをとても大切にしています。仕事で精神的なダメージを受けた20代後半のときは、周囲から「無能だ」「バカだ」って言われたのに、本を書いて少し売れた今は、「先生」なんて呼ばれる。「なんだよ、先生って」と思います。役職があってもなくても、おじさんも若者も、男性も女性もみんなフラットな関係。そう声に大にして言いたいですね。最終的には、そういうフラットな企業、フラットな社会になることを目指しています。

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撮影/山口雄太郎

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土田 ゆかり
ライター。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。ジャンルは、ライフスタイル、医療など。趣味は色々で、ハマりやすく冷めやすい。でも、10年前に台湾でハマった中国茶は今も継続中。中国茶の魅力、おいしいものたくさんの台湾をみんなに知ってもらう!がテーマの料理会を今秋に開催予定。

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