「いったい世界はどうなってしまうのか」「ビジネスはこのままでいいのか」「私達の日常はどう変わるのか」──。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、社会が変貌を遂げようとしているいま、誰もが不安や疑問を抱えている。
そこに、「世界が変わるのをただ待つのではなく、望む方向に社会を創っていく」姿勢を見せるのが、世界をフレームワーク(枠組み)から再設計するラディカル・デザイン・ラボ「Unchained(アンチェインド)」。
すでに進み始めたポストコロナ時代。Unchained発起人・代表の小林弘人氏、プログラムリードを務める菊池紳氏が描く、新たな世界づくりとは?
※2020年4月、オンライン会議システムZoomを介して収録。
* * *
小林弘人(インフォバーン 代表取締役 CVO)
起業家、大学教授、著述家。1994年、「WIRED JAPAN」を創刊、編集長を務める。オウンドメディア・マーケティングの草創期から企業を支援し、多くの企業運営サイトの立ち上げ、自治体と企業のオープン・イノベーション支援を早期より行う。ベルリン最大のテック・カンファレンス「TOA」の日本パートナー。近刊に『After GAFA 分散化する世界の未来地図』(KADOKAWA)、ほか著書多数。
菊池 紳(いきものCo. 代表取締役)
いきものCo./たべものCo.代表。食料、農畜水産、生物資源分野を扱う起業家・ビジネスデザイナー。農産流通プラットフォーム『SEND』の創業者として知られる。chiQ(チキュウ)/Unchained /Fermenstationなどを手掛ける他、2020年4月より「コロナファームサポート」発起人としても活動中。グッドデザイン金賞、Forbes受賞など、受賞多数。2020年3月よりUnchainedプログラム・リードに就任。
コロナショックは女性参画の大チャンス!?
Image via Shutterstock
── まず、コロナ感染拡大中の今、従来の考え方や働き方は否応なく見直しを迫られていますが、社会や人の変化についてどう感じていますか?
小林弘人氏(以下、小林):人々の状況、空気感を含め、二極化してきたように思います。依然とした昭和的な意識のまま戸惑う人々がいる一方で、既存のやり方をリセットして前向きに進もうとしている人も出てきている。
菊池紳氏(以下、菊池):この状況に心折れないで、次の展開を考えていける人が求められているのは、間違いありません。個人的に興味深いのは、コロナ禍に入る以前から、世界的に見ても若手女性リーダーが選ばれ、またその手腕や存在感が目立っていることです。
たとえば、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の市民に対するコミュニケーション・スタイルは、新しい政治家の姿を示しています。また、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相や、フィンランドのサンナ・マリン首相もパンデミックに対する手腕が高く評価されています。
小林:これは家庭でも同じ。在宅勤務が増えて、従来の企業に隷属する働き方のイメージが、家族単位の自律的なものに変わりつつあります。すると、女性がいかに多くの役割を担って生活を支えているのかという点が顕在化しはじめている。
さきに述べた「昭和的な意識」とは、家事も育児も人任せにしていた男性が、居場所だったはずのオフィスに「来るな」と告げられた瞬間から、路頭に迷う状況でもあります。ここから家族単位の価値観や役割の見直しが進むかもしれませんし、そのままかもしれません。しかしながら、 これは制度も含めて設計し直すことにより、より女性参画を進める好機でもあると捉えられないでしょうか?
女性が選ばれているのは、これからの社会の要請に他ならない。
by 菊池紳
フレームワークごとの再設計が早急の課題
左から、菊池紳氏、小林弘人氏(Zoom取材画面より)。
── そのようななか、社会やビジネスに求められるものは何でしょうか?
菊池:じつは「オフィスに依存するのではなく、家庭や社会との関わりに重心を移そう」という動きは、コロナが大きなきっかけにはなったものの、伏線としてはこれまでも長らくあった議論です。つまり、本来目を向けるべきであった多くの問題が、今回のことでより明確になり、本格的に目を向けさせられている。
小林:環境問題、グローバル資本主義経済の矛盾や問題点、政府による保障のありかたなど、コロナ以後、考え直さなければならない問題は数多くあります。今後一つひとつ取り組む上で、フレームワークごとに再設計していくのがカギになってくるでしょうね。
フレームワークを見直さざるをえない、ということに全員が放り込まれてしまった。by 小林弘人
ポストコロナは、「価値観」が変わる=「評価軸」が変わる
──求められる人材や能力、働く環境・価値観も、コロナ以前とは変わってきますか?
菊池:これまでは二項対立的に語られてきた……たとえば「経済」と「環境」、「仕事」と「家庭」など相反すると思われていたものを、どうやって柔軟に両立させていくかがキモになります。そうなると、自分自身で考え、判断し、インテグレート(統合)デザインができる人材が求められていきます。
それに、ポストコロナの時代には、価値観や評価軸が全く変化しているはずです。たとえば、今回、毎日通い、長時間過ごすという意味でのオフィスの価値は下がりました。オフィスの存在意義や評価が代わり、家賃が下がっていくことも考えられます。また、都心部にある、狭く、寝泊りするだけのような部屋で生活することの困難も浮き彫りになったため、地方への住み替えが進む可能性もある。
都市というものに対する評価が変化し、価値観ごと変わっていく。価値観が変わるということはつまり、人が望んで、住居や都市、私たちを取り巻く環境を変えていくということです。全ての人が意識的に、または無意識でも、社会の設計を変える側に参加することになる。
小林:つまり、我々に与えられたミッションとは、価値観の見直しのチャンスを増やし、新しい未来へのビジョンを大胆に描き、実現していくこと。そのようなリーダーが今後必要となってくることは間違いありません。
求められるのは、“大胆な未来像”と“それを描く人材”。
by 小林弘人
Unchained 発起人・代表、小林弘人氏(Zoom取材画面より)。
「常識」と「知識」がゆさぶられる学びを!
菊池:僕たちが始めているUnchainedというプロジェクトは、まさに世界をフレームワーク(枠組み)から再設計することを目的としていて、今後の社会のイノベーションのエンジンになるような存在を目指しています。
Unchainedとは?
Unchainedは、国内外の変革者と共に、 世界をフレームワークから再設計する、ラディカル・デザイン・ラボ。
- 科学者、起業家、建築家、哲学者、職人、法律家、クリエイターなど、 国内外を代表するラディカリストが集う「Unchained」
- 次世代リーダー層に開かれたコミュニティラーニング「Un-LEARN」
- ラディカリストと企業等との共同研究ラボ「Rad-Lab」
これらを通じて、これからの社会を形作る新しい思想、制度、システム、サービスを 可視化・言語化し、世界に向けて発信・実装する人材や企業を増やしていく。
菊池:Unchainedのエンジンは「人材」と「企業」が二大柱。次世代経営層、起業家・社会起業家など個人を対象としたUn-LEARNは、日本を代表するオピニオン・リーダーや活動家・事業家との密な議論や活動を通じて、未来を創る人材を輩出するUnlearning Communityです。
数年後の社会・市場を自ら作りに行く企業、団体、自治体などを対象とした「Rad-Lab」は、気鋭の研究者や起業家、クリエイターなどを迎え、今までにはない組織や事業の在り方、サービスや商品の開発などを可視化・言語化し、企業等とともにサービスや商品の開発など社会への実装を目指します。
小林:あらゆる人に開かれている学びの場であり、議論の場。ただ聞くだけではなく、議論し行動するというところにつなげていく。Unchainedは未来をデザインするラボというイメージです。
Unchained プログラムリード、菊池紳氏(Zoom取材画面より)。
──国籍・年齢・性別・経歴・所属などは不問、自らの手で未来を描く次世代リーダーのための学びの機会というUn-LEARNのコンセプトは、今回プロジェクトを共催するMASHING UPと深くシンクロしますね。
小林:そう。ビジョンを大きく描くために、幅広いトピックを扱いたい。いま個人的に関心があることは、倫理とテクノロジーの問題。企業の利益誘導のためのインターフェイスデザインや、公益を無視するアーキテクチャーの設計(デザイン)など、邪悪なデザインをしないためにどのようなことができるか。そういったことを哲学者とエンジニア、ビジネスデベロッパーも含めて議論してきたい。
菊池:とても大事なトピックですね。個人的には、いまテレワークが進んでもっともホットな話題となった空間と場所の再設計についても扱いたい。あとは組織の進化、雇用・労働の法体系の再デザインも必要でしょう。Unchainedでは、あらゆるものごとに関して、いったん既存の枠組みを取り払って設計し直すということを目的に、新しい世界の描き方を考えていきたいと思います。
今までにない、ポジティブな未来をデザインしよう。
by Unchained
Unchained 実施概要
■実施スケジュール:2020年4月27日受付開始、6月第1週プログラムスタート
■応募方法:Rad-Lab、Un-LEARNともに4月27日より申込受付を開始。受付方法は、 UnchainedサイトやMASHING UPサイト上、各SNS等に掲載
■発起人・代表:小林弘人
■プログラム・リード:菊池紳
■主宰:インフォバーングループ
文/八野万央
sponsored by Unchained
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