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Femtech(フェムテック)で気づきを与えたい。身体にまつわるタブーをワクワクに変えるスタートアップ

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fermata共同設立者のAmina(写真左)とひろこ。

女性が抱える健康問題を解決すべく2019年に設立された「fermata(フェルマータ)」。発足に込められた思いをメンバーのひとり、Kanaさんのレポートで紹介する。

女性の健康は長らくタブー視されてきた

長い歴史の中で、女性が受け入れ続けてきた不快感や痛みは一体いくつあるのでしょう。生理痛、マンモグラフィーで押し潰される胸、出産に伴う死のリスク……。「いやなこと」は女性の数だけあるはずなのに、私たちはずっと我慢を続けてきました。まるで一人が不満を言い出せば、パンドラの箱が開いてしまうみたいに。

生理用ナプキンの発明しかり、テクノロジーが私たちの暮らしを快適にしてくれることは明らかなのに、自動運転の車が走る21世紀になっても「ウーマンウェルネス=女性の心身の健康を含む快適な生き方」の市場は未発達のままでした。そんな中、2016年ごろに誕生した新しい言葉が「Femtech(フェムテック)」female(女性)+ technology(技術)をかけあわせた言葉で、女性の健康課題をテクノロジーの力で解決するサービスやプロダクトを指します。

提唱者の起業家イダ・ティンは、これまでヘルスケアや医療、衛生用品など様々なジャンルに散らばって存在していたプロダクトやサービスに、ウーマンウェルネスという共通の課題があることを発見し、市場を可視化したのです。

ここ数年でフェムテック市場は、# MeToo運動で加速した近年のフェミニズムと呼応するように急成長を遂げました。しかし、世界では2025年には5兆円規模になると予想されているフェムテックも、日本ではいまだに受け入れられづらいのが現状。その理由のひとつには、投資家や起業家の男性比率が高く、女性のニーズが理解されにくい環境が、もうひとつには、女性に特化したヘルスケア、特にリプロダクティブヘルスに関する領域は、長らくタブー視されてきたジャンルであるために、解決すべき課題が言語化されていないことが挙げられます。

モヤモヤや不安を、言語化し、ワクワクに変えて

東京に住むAminaとひろこが2019年に設立した「fermata(フェルマータ)」は、「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに、アジア・日本におけるフェムテック市場を育成するスタートアップです。まずは資金調達の問題を解決すべく、フェムテック企業専門のファンドを立ち上げ。さらに、実際にフェムテック製品を手にとって触れるイベント「Femtech Fes!」を開催し、「課題の言語化」を促す活動を始めました。

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メンバー自ら全国を回り、フェムテックに関するトークやワークショップを行う「Femtech Fes!」。製品と触れ合うチャンスも。

メンバー自らスーツケースいっぱいに製品を詰め込んで、各都道府県へ全国行脚。学生とタッグを組んで大学内で開催したり、地方自治体からの「女性の健康意識向上を目的に」とのリクエストで公民館に出張したり……規模も30人から200人まで大小さまざま。モヤモヤはあるけど解決法が分からない、いきなりウーマンウェルネスに関する製品を買うのは怖い、などといった不安を抱えて来場する女性たちも、他の来場者とコミュニケーションを取りながら製品に触れるうちに緊張がほぐれ、自分の中に眠っていた意外なニーズに気づくことも。

陣痛をモニタリングするマシンや、ICチップ内蔵の月経カップ、生理やセックスの後の不快を拭う、スティック状のスポンジワイプ……。初めて触れる意外な発想のプロダクトを前に、「これどうやって使うの?」と盛り上がった勢いで、自分の身体の悩みを語り出す人も。避妊の方法がわからないという学生、10年以上一緒に働く同僚と初めて生理の話をしたという60代の女性、イベント終了後に「こんな製品がほしい」と熱いメールを送ってくれる人も少なくありません。実際に製品を手にとって触れることで、くすぐったいような感情や湧き上がる疑問と出会う場になってほしいと願っています。

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「Femtech Fes!」では、他の来場者とコミュニケーションを取りながらフェムテック製品を実際手に取って見ることができる。

レイプ被害の証拠を残すキットやセルフプレジャーグッズも

また、「Femtech Fes!」には、ビジネスという視点にとらわれず、物を通して問題提起に繋がるような製品も紹介します。その代表的存在が、レイプ被害後の証拠保全を自分で行える「Leda Kit」性的暴行を受けた人の77%が被害を報告しないというアメリカで、実際に被害を受けたサバイバーの女性が考案したもの。しかし、この製品は司法局から「非合法である」として販売禁止の注意勧告を受けていて、実際に流通するためには、既存の社会制度の変革も同時に進めていく必要があります。

ちなみに日本では、そもそも性被害後の証拠保全についての情報が行き渡っていないため、シャワーを浴びたり時間が経ってしまって証拠の採取が難しくなってしまうケースが多いそう。「Leda Kit」のアイディアは、女性の身体が直面する問題について、具体的に考えるきっかけにもなり得るのです。

とはいえ、どれだけ優れたソリューションをもってしても、長きにわたって社会と自分に染み付いてきたタブーを取り払うのは大変な作業。私を含め、フェムテックにおいて重要なカテゴリの一つ「セクシャルウェルネス」にまだ抵抗があるという女性は多いのではないでしょうか。社会的に認知度の高いアダルトグッズですが、女性用の製品はまだ一般的とは言えません。

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女性向けのアダルトグッズ。カラフルでポップなデザインが目を引く。

私自身、fermataのメンバーになるまで、実物を見たことも触ったこともありませんでした。なんとなく想像していたグロテスクな見た目ではなく、くすんだグリーンやネイビーなどのおしゃれなカラーに、たまごっちのようなかわいい形状だったことにとても驚きました。この製品についてなら、友達と話せるかも……? タブーの殻が割れるにはまだ時間がかかりそうですが、実際に見て触れる体験は自分の中で大いなる一歩でした。まずは、その一歩を一人でも多くの人が踏み出すことが大切なのではないでしょうか。

女性が「自分の身体の一番の理解者」になれる社会に

メンバーのAminaがふとつぶやいた、「女性がみんな、自分の身体の一番の理解者になれるような社会にしたいんだ」という言葉が頭から離れません。当然のことが、どうしてこんなに難しいんでしょう。この身体は生まれてからずっと私と共にあるはずなのに、ふと遠く、自分のものでないように感じる瞬間があります。

好きな時に出産する権利、他人に身体を触られない権利、身体の痛みを取りのぞく権利、性的に消費されない権利。ウーマンウェルネスという言葉やフェムテックのプロダクトは、私たちの身体には、まだ私たちが手にしていない、手にするべき権利がたくさんあることを教えてくれるのです。

文/Kana Kondo(fermataメンバー)、写真提供/fermata

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