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今だからこそ考えたい、私たちのライフスタイルが地球につける「足跡」[前編]

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今回の新型コロナウイルスの流行により、毎日の「当たり前」が一変することで、より良い生活や社会のあり方とは何かを考えるきっかけとなった方もいるのではないでしょうか。

この危機を乗り越えた後、私たちは暮らしや社会の姿をどのように再生していくべきなのでしょう。これまで通りの物質的な豊かさを追求する社会のあり方を続けることは、地球温暖化を通して、異常気象や食糧生産、それに伴う経済や暮らしへの脅威をもたらしてしまうことが以前から指摘されています。

すでに日本では28の自治体、9の学術団体、世界では1000を超える自治体が、地球温暖化防止へのアクションを求める「気候非常事態宣言」を宣言しています(2020年5月26日時点、イーズ未来共創フォーラム)。

地球温暖化は単なる気温上昇や熱波だけでなく、異常気象や社会・経済への影響をもたらすため、気候変動とも呼ばれます。感染症は影響が生じるまでの時間が比較的短く、今すぐ実感しやすい危機である一方、気候変動は時間も地域も超えて、じわじわと気象、食糧生産、経済に影響を与え、私たちの暮らしや社会システムを抜本的に変えてしまう危機をもたらすと予測されています。まだはっきりとは見えないだけで、大型台風や豪雨の多発など、気候危機の足音はすでに聞こえはじめました。さらに、ある段階を超えると影響が連鎖して止められなくなる「ティッピングポイント(転換点)」が生じる可能性も指摘されているのです(Nature誌『Climate Tipping Points — Too Risky to Bet Against』)。

感染症のパンデミックと気候変動への対策には、一人ひとりの日々の暮らしや行動が結果を大きく左右するとともに、社会全体で皆が協力して取り組むことが効果的だという共通点があります。新型コロナウイルスでは、ソーシャルディスタンスを取ることが、自分自身だけではなく、感染症の蔓延を防ぐことを通じて他のすべての人々を救うことにつながります。気候変動についても、地球の大気は人類共有のものなので、一部の人々や企業が汚染を出し続ければ、世界中のすべての人々を困らせてしまいます。

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私たち「人類の健康」と「地球の健康」は関連しあっており、これらを一緒に解決していくという考え方は、ロックフェラー財団と医学専門誌の『ランセット』が「Planetary Health(地球の健康)」として提唱しています(Lancet誌『Safeguarding Human Health in the Anthropocene Epoch』)。私たちが健康で楽しく暮らすためには、自分だけでなく世界の人々も地球も健康でいられるような、サステナブルな新しい社会への転換が必要なのです。

本稿では、ポストコロナの時代を見据え、サステナブルな社会のあり方と私たちの暮らしについて考えてみたいと思います。

私たちの暮らしが地球につける炭素の足跡

気候変動への対策が重要であることは、この「SDGs&Me」の連載でも何度か紹介してきました。たとえば、電気やガソリンの節約が大事だということなどは皆さんご存知でしょう。それでは、わたしたちの買い物、食事や休日の過ごし方が気候変動に深くつながっていることはご存じでしょうか。これを紐解くのが「カーボンフットプリント」、直訳すると「炭素の足跡」。製品やサービスの原料採取から廃棄までに生じる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を「地球への足跡」に例えてたどったものです。国内だけでなく、たとえば資源採掘や生産、輸送などを通じて海外で排出された温室効果ガスも足跡として数えます。

地球環境戦略研究機関(IGES)が発表した『1.5°Cライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢』によると、世界平均では温室効果ガスの約7割が人々のライフスタイルに関連する製品やサービスに由来するもので、日本人は1人1年あたり平均で約7.6トンの温室効果ガスを排出しています

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【国内のカーボンフットプリント削減目標】2050年までに、温室効果ガスの排出量を現在の10分の1に減らす必要がある。

IGES提供

気候変動による人間社会への悪影響を抑えるためには、世界で2030年までに1人あたり年間2.5トン、2050年までに同0.7トンまでカーボンフットプリントを削減する必要があると、私たちは分析しています。現在の日本人の暮らし(7.6トン)と比べると、2030年には3分の1、2050年までには10分の1にするというとても大きな目標ですが、社会全体で早い段階から取り組めば達成不可能ではありません。そして達成の鍵を握るのは、全体の温室効果ガス排出の7割をもたらしている私たちの暮らしでの選択なのです。

私たちの日常にある選択肢

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具体的な行動を考えるために、暮らしのどこから温室効果ガスが排出されているかを見てみましょう。最も割合が大きいのが住居(32%)、次に移動(20%)、食(18%)、様々な製品(13%)、サービス(9%)、レジャー(8%)です。電気をこまめに消す、省エネ家電を選ぶ、エコドライブなど、これまで強調されてきた地球温暖化・気候変動対策以外にももっと多くの選択肢があります。そこで、気候変動を防ぐために今すぐできる代表的な選択肢を以下に示しました。このうち、今すぐあなたが実践できそうな選択肢はあるでしょうか?

※選択肢のなかから、いずれかの回答をクリックすると投票結果がすぐに表示されます。他の人の回答についてもチェックしてみてください。

これらの選択肢のうち、「フードロスを減らす」までの11項目は平均的な日本人の暮らしを想定してカーボンフットプリント削減効果が大きい順番に並べています。もちろん、すべてを組み合わせると、それだけ温室効果ガスの排出が削減でき、気候変動の防止につながります。

最後の「サステナビリティに積極的な企業、金融機関、政治家、NGOなどを応援する」は削減効果の試算には含めていませんが、ひとりひとりによる気候変動を防ぐ暮らしの工夫からさらに一歩進んで、よりサステナブルな社会を実現する上で欠かせない選択肢です。私たちの暮らしや一人ひとりの行動はすべてを個人で決められるわけではなく、社会のあり方に大きく左右されているからです。例えば、近くのスーパーの品ぞろえや価格、地域の公共交通や駐輪場・自転車レーンなどの充実度、テレワークに関する勤務先の制度、賃貸住宅での太陽光パネルやEV充電器導入の難しさなどが私たちの暮らしのあり方に大きく関わっています。そのため、サステナブルなライフスタイルへの転換は、一人ひとりが取り組むことに加えて、製品メーカー、インフラ事業者、政府や自治体、地域コミュニティなどが協力して推し進める必要があるのです。そうすることで一人ひとりの暮らしにあった選択肢はさらに広がり、よりサステナブルな社会にしていくことができます。

サステナブルな社会のあり方やそれを実現するために必要なことについては、後編でお話します。

SDGs: 12,13公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)]Image via Shutterstock



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小出 瑠
地球環境戦略研究機関(IGES) 持続可能な消費と生産領域 研究員
専門は環境・資源工学および政策・統計分析。経済社会システムにおけるモノの流れを把握するマテリアル・フロー分析やそれに伴う環境への影響を分析するライフサイクル・アセスメント(LCA)、データサイエンスの手法を活用し、持続可能な社会の実現へ向けた調査研究を行う。近年は、持続可能な消費と生産(SDGsのゴール12)に関する政策分析、脱炭素で資源効率の高いライフスタイルに関する分析やシナリオ策定に取り組んでいる。

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