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コロナで活動の足をとめるな。2つのNPOが始めた取り組み

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コロナで変わってしまった世界。ついつい自分とごく近い人たちのことだけを考えがちだけれど、それが極端になると分断、排外主義になってしまう……。自分の状況は世界とつながっているし、自分も困っているけれども、他の人たちも困っている。ほかの人を思いやることが、自分にかえってくるかもしれない。というか、きっとかえってくる。

こんな時だからこそ読んでほしい、他者へのまなざしと思いやりを形にしている彼女たちの物語。

子どもが売られない世界を作りたい

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かものはしプロジェクトの共同創業者、村田早耶香氏。

「かものはしプロジェクト」は、インドで強制的に売春させられている女性たちの支援に取り組んできた。もともとはカンボジアで少女たちが売られ、売春をさせられていることに衝撃を受けた大学生の村田早耶香氏が、同じく学生だった青木健太氏と本木恵介氏と共に2002年に団体を立ち上げた。

やり方はあれこれ模索しながら、現地のパートナー団体と連携して、子どもたちを売春宿から救い、自立のためのパソコン教育を行い、政府に働きかけてきた。いろいろなことがありながらも、カンボジア政府が子どもの売買春など人身売買を禁止する法律を作り、警察による取り締まりを強化した結果、カンボジアでの児童売買春はほぼなくなったのだ。

いま、カンボジアのシェムリアップ(アンコールワットがある世界有数の観光地)では、かものはしプロジェクトから生まれた「SALASUSU」(カンボジア語で「がんばるための学校」の意味)というNPOが、クラフトやバッグなどを作るコミュニティファクトリーを運営し、現在43人が働いている。「学校」だから「卒業」があるわけで、これまでに卒業した人は200人以上にのぼる。製品は、シェムリアップの有名な市場であるオールドマーケットの一角にある「SALASUSU」の店舗で売られている。

サバイバーからリーダーに

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インドで村の人たちのために活動する女性たち。(撮影:Siddhartha Hajira)

さて、カンボジアで問題が解決したあと村田氏は、やはり強制売春の状況が深刻だったインドに、2012年から活動拠点を移した。巨大都市ムンバイでは、特に女性や子どもが売春させられるケースが多い。その多くが西ベンガル州付近の出身のため、かものはしプロジェクトではムンバイと西ベンガル州中心に支援をしている。

救出された被害者に、心のケアを提供し、さらにサバイバーからリーダーになるためのトレーニングも行う。並行して、インドのパートナー団体への支援を通じて、政府に人身売買取り締まりの政策を働きかける。

2018年度にカウンセリングや裁判などの支援を受けた人は453人、心の回復支援・教育支援を受けた人は329人にのぼる。

緊急事態を切り抜けるために

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インドでは都市封鎖になり、働けなくなった出稼ぎ労働者が一斉に帰郷する大移動がおきた。

さて、ここからが今回のコロナの影響のお話。そもそも西ベンガル州の人々は、日雇いで建設現場で働いたり、都市に出稼ぎに出ていたりする人が多い。コロナで都市封鎖となり、仕事がなくなって故郷に戻るしかない。しかし、収入がなくなっているから食べ物も買えない。食べ物を口にするのは2日に一度のような状況で、餓死と隣り合わせの状態だった。食べ物を買うには高利貸しからお金を借りるしかないが、何と年利が790%という時も。こんな状況では、女性と子どもが借金を返済するために売られるリスクが非常に高まってしまう。ようやく売春宿から脱出して帰ってきたケースもあった。

悪いことは重なるもので、5月後半には大型サイクロンが西ベンガルやムンバイを襲う。猛烈な風雨に加えて、落雷による火事。西ベンガルの地方は、土と藁を塗り固めただけの家が多く、文字どおりぺちゃんこにつぶれてしまった家もある。

かものはしプロジェクトはこの状況を救うべく、緊急支援を始めた。330人ほどに、約2.5か月分の生活費にあたる約5700円の食糧と生活用品を配布。今後も緊急支援を秋まで延長して行う予定だ。

生活再建のための後押しに

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西ベンガル州を襲ったサイクロンで倒壊してしまったサバイバーの家

ところが、このコロナで、かものはしプロジェクト自体の財政状況も厳しくなってきている。かものはしプロジェクトは、設立以来個人をはじめとする寄付に支えられ、財政規模は右肩上がりだった。ところが、2020年は昨年度を下回る状況になりそうなのだ。企業からの寄付の落ち込みが原因だという。

いま、それを埋めるべく、個人への寄付キャンペーンを始めた。村田氏は言う。「日本も大変な状況にあります。でも、インドの人々は食べるのも大変な中サイクロンでも被災し、私たちからは想像もできないような過酷な状況から一歩を踏みだそうとしています。彼女たちが日常を取り戻し、人身売買をなくすための活動を再び行えるよう、応援していただけましたら幸いです」

かものはしプロジェクトのキャンペーンはこちら→https://www.kamonohashi-project.net/blog/6907/

子どもを働かせる社会を変えるために

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グローバルマーチに参加した頃の岩附氏(旗を持っている左の女性)、当時は大学生だった。

「ACE」共同創業者で代表の岩附由香氏もまた、大学生の時に団体を立ち上げている。こちらも、活動地の一つはインド。問題は「児童労働」だ。

インドのコットン畑やガーナのカカオ農園で子どもが働かされているのだ。私たちが日々着ているシャツやジーンズ、何げなく口にするチョコレートは、子どもたちが働かされてできたものかもしれない。1997年、後にノーベル平和賞を受賞する反児童労働の活動家、カイラシュ・サティヤルティ氏が呼びかけた「グローバル・マーチ」に日本で呼応したのが、岩附氏と、事務局長を務める白木朋子氏だった。岩附氏にとって、初めは半年限定の活動のつもりだったが、もう20年以上が過ぎた。

1億5千万人以上の子どもが働かされている

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インドのコットン畑で働く女の子。

日本ではなかなかぴんとこないかもしれないが、2017年で働かされている子どもは、ILO調べで1億5千万人以上いるという。

日本のカカオの輸入の8割は、ガーナからだ。ACEはガーナで現地のパートナー団体と協働し、子どもが働かなくてすむよう、貧困家庭の収入を向上させるためビジネススクールを開き、学用品を配り、児童労働防止のための監視システムを構築してきた。

また、児童労働に加担しないビジネスを作ろうと、ACEの支援地でとれたカカオを使ってチョコレートを製造販売してもらうルートを、商社の力を借りて確立。現在ではそのカカオを使ったチョコレートは21社80アイテムに広がっている。

インドのコットン農家でも少しずつ成果をあげている。ACEは、2014年からインド中部のテランガナ州の2つの村で5年間活動してきた。働かされていた子どもの保護や、教育支援。貧困家庭に山羊やニワトリといった家畜を貸し、女性には裁縫訓練を行ってミシンを貸与、小さなお店の開業資金を無利子融資するなどの支援を行い、2つの村では働かされている子どもがゼロになった。今は引きつづき、同州の3つの村でプロジェクトを行っている。

コロナによって変わり果てた生活

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インドのテランガナ州で、コロナの影響についてインタビューするパートナー団体。

コロナの影響は、特にインドの支援先の村で深刻だ。もともと、土地を持たずに小作をして現金収入を得る「その日暮らし」の家族が多い。コロナで外出禁止となると、仕事を仲介するブローカーが村に来なくなる。仕事がなくなり、お金が入らず、食べ物も買えない。たとえ畑を持っていても、作物を市場で売ることができない。こちらも、高利貸しからお金を借りるしか道がない。

子どもは学校が閉鎖して家にいるが、勉強をしたくても家の手伝いをさせられることが多く、なかなかノートを開くことが難しい。もし親が借金をすれば、学校が再開しても、返済のために子どもも働かなければいけなくなるかもしれない。そこでACEでは、パートナー団体と協働して53世帯に3か月間、米、油、塩、たまねぎ、にんにくなどが入った食料パックを送る緊急支援を行うことにした。また、以前から行っている家畜の貸与なども継続したいという。

声を出せない人のための拡声機として

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昨年、日本でのG20開催にあわせ、NGOやNPOによるC(Civil Society)20も開催された。岩附氏は議長を務め、安倍首相に提言書を手渡した。(撮影:江口直宏)

だが、ACE自身の財政も楽ではない。コロナで企業向けの児童労働に関する研修や講演がなくなり、収入が減ってしまったからだ。そのため、現在はクラウドファンディングを行っている。

「ACEの役割は、声を出せない人のための拡声機であり、支援の火を燃やし続けるたき火の火種でありたいと思っています。燃え続けるためのたき火に必要なまきは、まわりにくべてもらおうと。いまチャレンジしているクラウドファンディングは、まさにそうです。火を絶やさないよう、応援してほしい」と岩附氏は言う。

実は岩附氏も2019年12月から4月まで、家族の仕事の関係でインドに滞在していた。子どもたちの学校は3月10日から休校、3月25日からのインド全土のロックダウンも経験。もともと経済的に厳しい状況の人が、ますます困窮する可能性を実感したという。状況が落ち着き次第、インドに戻り、現地にいるからこそできることをしたいと話す。

ACEのクラウドファンディングのサイトはこちら→https://readyfor.jp/projects/ACESDGs2020

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秋山訓子
朝日新聞編集委員。東京大学文学部卒業。ロンドン政治経済学院修士。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に『ゆっくりやさしく社会を変える NPOで輝く女たち』(講談社)、『女子プロレスラー小畑千代―闘う女の戦後史』(岩波書店)、『不思議の国会・政界用語ノート』(さくら舎)『女は「政治」に向かないの?』(講談社)など。

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