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コロナ禍のしわ寄せは社会的弱者へ。3つのNPOが声をあげた

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分断され、閉鎖しがちなコロナの世界で、グローバルに活動するNPOとリーダーの女性たちを紹介した前回に続き、今回は日本国内で活動する3つのNPOと、それを率いる女性を取り上げる。コロナ禍でもがきながらも、他者やマイノリティへのあたたかなまなざしは共通している。

移民の若者たちの手助けをしたい

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Kuriya 海老原周子氏

「飲食店に勤めていた父母は仕事がなくなり家にいる。母国語しかできず、日本語のできる子どもに頼るしかない。家族みんな不安を抱え、感染の兆候があったら、どこに行けばいいのか、誰に相談したらいいのかすらわからない」

画面ごしにネパール出身の留学生、ジョシラタラ・デイネス氏が訴えた。外国にルーツを持つ高校生の支援を行う一般社団法人Kuriyaが、4月25日に主催したオンラインのトークショーのことだ。コロナ禍での外国人の課題を知ろうというテーマだった。

正しい情報がどこにあるのかわからない

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クラブ活動への参加を呼びかけるチラシ。

Kuriyaの代表理事・海老原周子氏は、3月中旬から、東京に住む外国ルーツの高校生とその親65人に何に困っているかをネットで調べた。一番多い回答が「正しく最新の情報が、どこにあるかわからない」だった。

10万円の特別定額給付金。総務省のサイトに説明が掲載された当初、他の言語での説明はなかった。海老原氏はパートナーの団体が英訳したものをわかりやすくイラストとチャートで説明した図を作り、冒頭のジョシラタラ氏を始め、仲間を多く知る外国人に送った。緊急時にはふだんからのつながりが大切なのだ。

今、総務省のサイトには申請書類の多言語訳が掲載されている。ただ、そこまでたどりつくのは日本語ができないと難しい。海老原氏は言う。「同時の英訳が無理なら、予定を明示してもらえたら。そうすれば私たちは相談対応など他のことができる」

翻訳の中身にも注文がある。「外国人は日本の制度や仕組みを知らない。そこをわかりやすく説明しないと、ただの直訳では意味が通じないことがよくあります」

居場所を作りたい

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Kuriyaの活動の一環、高校でのクラブ活動の風景。

海老原氏がKuriyaを設立したのは、2016年。もともと帰国子女で、中学の時にイギリスに行き、インターナショナルスクールで英語がまったくしゃべれず、つらい思いをしたことから外国ルーツの子どもの支援に関心があった。国連機関である国際移住機関(IOM)の職員をしながら、好きな絵や映像を使った外国人の青少年向けのワークショップやイベントを始めた。アートを通じた居場所作りだった。高校生や中退者、高校卒業生が多く集まり、小中学生に比べて彼らへの支援が圧倒的に足りないとわかった。それがKuriyaを作ったきっかけだった。

外国人の多く通う定時制高校に、教諭と研究者と共に「多言語交流部」を作り、サポート役として入って相談にも乗ってきた。部活が楽しくて学校に来るようになり、相談相手も得て、進路を決めていく生徒が多いという。

人身取引から女性を守りたい

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ライトハウス創設者の藤原志帆子氏

AV強制出演や性的被害にあった女性の支援を行う人身取引被害者サポートセンター、ライトハウスは藤原志帆子氏が2004年に設立した。

もともとは米国に留学していた藤原氏が、人身取引に取り組む米国のNGO「ポラリス」に参加し、日本に帰ってから「ポラリスジャパン」として発足させた。

2014年により日本の問題に特化しようとライトハウスとして再出発した。人身取引、というと何やらおどろおどろしいが、決して遠い話ではない。「モデルにならない?」などと甘い言葉で近づいてきて、実はAVの撮影だった、あるいはリベンジポルノ、スマホを使って出会い系で知り合った人に自分の画像を送ったらそれを流出させた……など、これらはすべて広い意味での人身取引なのだ。

コロナ禍、増え続ける相談

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国会議員らと共に街を歩いたことも。

いま、ライトハウスにはコロナのもと、子どもや若者からの相談が増えている。女性だけではなく、男性や男児からの相談もある。下は小学生から、上は大学生、そして社会人まで。学校が閉鎖になったりして、家にいる時間が増えたからだろうか。

たとえば、ゲームのアプリで知り合った人に顔を見たい、と優しい言葉で言われて顔写真を送った小学生。ちょっとしたやりとりから、「◯◯小学校の子だね」と言われ、もしかしたら住んでいる場所も特定されたかもしれない、家に前にいたらどうしよう……と問い合わせてきた。

あるいは、やはり出会い系で知り合った人とやりとりを続けていた中学生。優しく素敵な大学生のお兄さんと思い、悩みも打ち明け、いつしかその人にだけ自分を出せるように。プライベートな君も見たいなと言われて写真を交換、「もっと」と言われ、そのうち「動画で下着姿を送って」と。おかしいと気づいて拒否すると態度が豹変、「パパ活していると実名をSNSでばらまくぞ」「学校の前でこれまでの写真をばらまくぞ」などと脅され、「嫌なら裸の写真を送れ」と言われたケースもあった。

私を突き動かすのは、怒り

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ライトハウスは政策提言にも力を入れている。AV強制出演問題で、国会内で集会を開いた。

「私の活動の原動力は怒りです」と藤原氏は言う。「どうしてこんなひどいことができるのか、相談を受けていると怒りがふつふつとたぎってきます」

その思いでここまで続けてきた。だが、今ライトハウスは設立以来の存続の危機にある。コロナの影響だ。

イベントや講演などがすべて中止・延期に追い込まれた。それらはイベント以上の意味を持つ。寄付を集めるための「出会いの場」なのだ。それがなくなってしまい、収益が非常に苦しくなっている。

6月下旬、米国国務省は、世界各国の人身売買に関する2020年版の年次報告書を発表した。日本は最高ランクだったが、政府による人身取引の取り締まりや予防が、前年に比べて真剣でないとして一段階引き下げられた。JKビジネスについての問題にもふれた。ライトハウスも性犯罪のさらなる厳罰化など、政策の働きかけもしたいという。だが、このままでは来年以降の活動を考え直さなければいけないかもしれない。

日本に難民はいる

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難民支援協会、石川えり氏

最後に登場するのは、難民支援協会の代表理事、石川えり氏だ。日本に逃れてきた難民を支援している。

え、日本って難民っているの? と思う人もいるかもしれない。確かに日本は難民の認定数が異常に少ない。法務省や国連難民高等弁務官事務所によると、2018年の難民認定申請者数は約1万人に対し、難民と認定したのは42人。他国では、たとえばオーストラリア豪州は2万9千人ほど申請者がいて、認定数は1万人あまりだった。

でも、着の身着のまま、身一つで不安な気持ちで日本に逃れてくる人はいて、数年を審査のために過ごす。だから、彼らを支援する人たちは必要だ。2018年度に難民支援協会が申請の相談にのるなど支援した人の数は623人、就労支援のための日本語プログラムを受けた人は50人あまりにのぼる。

緊急時、助けを求められない人たちのために

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難民の方に渡す食料支援の一部。

けれども、コロナで国境が閉じているような状態で、新たな難民はやってこないのでは? その通り。でも、日本で難民申請中の人たちはいる。働いていても、こういう不況の時はまず外国人から切られてしまう、という状況もある。身分も不安定、感染も不安、かといって出身国の大使館にも頼れない……そんな人たちが協会の事務所をたずねてくる。緊急事態宣言のもとでも、消毒と感染予防には細心の注意を払って、事務所は週に2日開け続けた。日本の今の状況を説明し、困りごとの相談にのり、当座をしのぐ食料パックを渡した。

「でも」と石川氏は言う。「ここに来ることもできない、助けを求められない人もいるのです。外国人のコミュニティの中にいれば、お金を借りたり食べ物をもらったりもできる。そういうところにいなくて、外にも出られない、Wi-Fiをつなげるお金もない、というような。こちらからたずねていくことも検討しています」

今こそ、声なき人に耳を傾けて

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難民支援協会近くのレストランでは週2回、10食のランチを寄付してくれる。

イベントができず、収入が減っているのはこの協会もそうだ。でも、そんななかでも希望はあって、寄付をしてくれる人たちはいる。

「コロナウィルスの影響で外出等をとりやめたり、使う予定だったお金を困窮する人々へ寄付しようと思いました。金銭面での支援しかできませんが、応援しています」「コロナ禍以前から苦境にあった難民の方々の身体的、精神的苦痛は計り知れないものと思います。世界も日本も排他的になりやすい現状で、一番弱い立場にいる難民の方々に安全を提供できるよう、微力ながら応援させてもらいたい」……。寄付と共にこんなメッセージが寄せられている。

「スタッフが難民の人に『感染が広がっているから外出しないでね』と言ったら『大丈夫、それはいつもの自分と同じだから』と言われました。お金も友達もなくて外に出られない。いま、私たちが困難を経験している今、ずっとふだん顧みない人たちが以前からいたことに、目を向けてほしいんです」と石川氏は話した。

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秋山訓子
朝日新聞編集委員。東京大学文学部卒業。ロンドン政治経済学院修士。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に『ゆっくりやさしく社会を変える NPOで輝く女たち』(講談社)、『女子プロレスラー小畑千代―闘う女の戦後史』(岩波書店)、『不思議の国会・政界用語ノート』(さくら舎)『女は「政治」に向かないの?』(講談社)など。

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