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- ONE TEAMで支える自然の恵みと私たちの未来[前編]
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新型コロナ危機などもあって、すっかり記憶から遠のいた方も多いかもしれませんが、日本代表が活躍した2019年ラグビーワールドカップでは2つのキーワードが注目されました。ひとつは、2019年流行語大賞にも選ばれた「ONE TEAM」。もうひとつは「多様性、ダイバーシティ」です。
リーチ・マイケル主将は会見でこうコメントしています。「このチームにはダイバーシティがある。色々な背景を持った選手が、お互いに学べる。日本の未来を先取りしている」(Diamond Onlineの記事より) 。
多様な人材を活かせる組織は、新たなアイディアを生み出し、変化にすばやく対応できると言われています。一方で、多様性には効率の悪さ、コミュニケーションや意思決定の難しさなどのデメリットがあるという意見もあります。
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バイオダイバーシティの今と未来
今回は、さまざまな場面で使われるダイバーシティということばの中でも、多くの方にとってまだなじみが薄い、生物多様性、バイオダイバーシティについてのお話です。
「生物多様性」を端的にいえば、「地球上のさまざまな環境に適応した、個性を持った特有の生きものがいること、そしてそれぞれがさまざまな相互作用によってつながり合っていること」といえるでしょうか 。
この生物多様性が地球上で今どうなっているのか、過去50年間でどう変わったのか、将来どうなるのか、こうした状況や変化が私たち人類にとってどんな意味があるのかを総合的に分析した報告書が、IPBES(イプベス、Intergovernmental Science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム ) という国際機関から昨年5月に発表されました (報告書の公式和訳はこちら)。
この報告書を読むと、私たち人類がどれほど自然の恵みに頼っているかがよくわかります。たとえば、こんな数字が挙げられています。
・20億人——木質燃料を主要なエネルギー源に利用
・40億人——自然由来の薬を利用
・70%———自然由来または自然界から着想を得て合成されたがん治療薬の割合
・75%———動物による花粉媒介が必要な食糧作物の割合
・60%———生態系による、人為起源の大気中炭素の吸収量
もちろん、自然の恵みには数字で表せないものも多くあります。大気や水の浄化、土壌の形成、自然災害リスクの軽減といった調節機能は人間の生活を支えています。さらに、アートや技術開発の着想(インスピレーション)の源泉、学習の材料や場の提供、人間のアイデンティティの形成にも深く関わっているなど、多くの無形の恵みももたらしてくれます。報告書は、生物多様性はこうした自然の恵みを通じて次のSDGsに貢献しているとも指摘しています。
生物多様性が達成に貢献するSDGsゴール
◆直接の貢献:
◆基盤として間接的に貢献:
100万種の生物が、近い将来に絶滅する
しかし、この生物多様性が、人間活動が原因で急速に失われていて、推計100万種、地球上のすべての生物の8分の1に相当する数の生物が近い将来に絶滅の危機に直面するだろうと報告書は警鐘を鳴らしています。人にとって有用な作物や家畜の在来品種や、新品種の交配にも使われるような近縁の野生の動物や植物も例外ではありません。これに伴って、多様な生物が一体(ONE TEAM)となって提供してきた自然の恵みも急速に失われていて、報告書は、このままではSDGsは達成できないとしています。
こうした状況に輪をかけるように地球環境が激変していて、将来を見通すこともままなりません。日本を毎年のように襲う豪雨被害やオーストラリアの森林火災といった地球温暖化がもたらす自然災害、新型コロナウイルス危機など、数年前には想像もできなかった事態が近年立て続けに起こっています。
私たちが今頼っている自然の恵みはもとより、豊かな生物多様性がもたらす新たな可能性は、例えば防災・減災への貢献、新薬の開発や変化した気候でも栽培できる作物の品種開発などによって、こうした事態をうまく乗り越えていくための拠り所でもあるのです。
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ではなぜ、生物多様性が失われているのでしょうか。豊かな生物多様性を次世代に引き継いでいくために、私たちには何ができるのでしょうか。後編ではこうした疑問にも答えていきたいと思います。
執筆/髙橋康夫(IGES)

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