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MASHING UP SALON

コロナショックをチャンスに変えよう。これからのWellに必要な能力は?

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よくも悪くも新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの意識、そして社会に、強制的に大きな変化がもたらされた。これからの世界で、Well-being(幸福)のあり方は、どのように変わっていくのだろうか。

オンラインコミュニティ「MASHING UP SALON」では、 2020年4月28日に「The Future of Women's Well-being. コロナ後の世界。これからのWell、これからの社会」と題したトークセッションを開催。ビジネスインサイダージャパン統括編集長の浜田敬子氏をモデレーターに、プロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、ロフトワーク代表取締役の林千晶氏を招いて、それぞれの思いを語ってもらった。

会社に行かなくても成果は出せる

2020年2月末、働く女性のWell-beingをテーマに開催された「MASHING UP SUMMIT 2020」。しかし、それからコロナの蔓延を受け、社会は想像もつかなかった変化を強いられた。本サロンイベントは、サミットにおけるトークセッション「The Future of Women’s Well-being 働く女性を取り巻く課題、未来のかたち」を受ける形で企画された。

クリエイティブの力で課題解決、新しい価値創造に取り組むロフトワーク代表取締役の林氏は、「リモートワークを経験したら「会社に行かないとパフォーマンスを出せないというのは大きな間違いだった」ことに気づいたという。

「提案から受注まで全てオンラインでやりとりするケースもでてきました。コロナでうまくいかない事業もある中で、むしろ活発になっている事業もある。それも含めて仕事はできるんだと感じています」(林氏)

MASHING UPサミット

2月のMASHING UPサミットでは、個人のアンコンシャスバイアスなどさまざまな課題が討論された。

企業の価値観そのものが大きく変わる

経営のプロの育成、リーダーシップ開発を手がけるプロノバの他に、6社の社外取締役を務める岡島氏は、各社のオンライン役員会で必ず3つのことを議論しているという。

1つ目は当面のキャッシュをかき集めようというディフェンス論。2つ目は2025年頃に起こるのではないかと思われていたデジタル化が前倒しで実現されたことで、新たな商品開発を狙うオフェンス論。

「そして3つ目は、従業員同士や株主とのつながりを維持するにはどうしたらいいかとか、これからの評価の方法などに関する議論。非常事態を迎え、目先の売上よりも、企業として自律分散型の新しい価値観を見出そうという機運が高まっています」(岡島氏)

言語化する能力がますます必要に

「リモートワークでは、労働時間よりも結果が評価されるようになるので、よりアウトプット志向になる。実力のある人は効率的に結果を出せるけれど、経験の浅い若手などは結果が出しづらい。逆に、これまで時間制約のある中で働いてきたワーキングマザーなどは、結果を出しやすくなる」と浜田氏。

この意見には、「オンライン会議だと、まず口数が少ない人が実質的に“いなくなって”しまいますね」と林氏。一方で、「空気を読むことだけが上手い中堅層が淘汰され、チャットでキーボードを打つのが早い若者や、言語化が上手な人にチャンスが生まれるのでは」と岡島氏は指摘する。

すべての人がマイノリティだと考える

林千晶氏

ロフトワーク 林千晶氏

2月にデンマークを訪れた林氏は、ダイバーシティの捉え方が日本と全く違うことに気づいた。日本ではダイバーシティというと「男女」の話もあがるが、デンマークでは男女はそもそも平等であるため、語られることすらないのだ。また、障がい者に対しての捉え方も全く違うと言う。

「日本では障がいのある人を“守ってあげる存在”として考えるけれど、デンマークでは『一人ずつ違う』と考えています。だから障がい者という言葉すらなくて、『ここに住んでいる人たち』(People living here)と呼ぶのです。そして守るということではなく、一人ひとりに合った仕事を見つけることに注力しています」(林氏)

これには、「本当はすべての人が何らかのマイノリティで、そのマイノリティがイノベーションを生むということが浸透した社会だからですよね」と岡島氏。

コロナという有事だからこそ、障がいがあることや、年齢なども含めて、すべての人が自分はどんなマイノリティを持っているのかということを考えてみると、その先の成長につながるのではないかと思います」(岡島氏)

オンライン会議で直接会わずに仕事をすることで、「プロフィールを見て、障がいのある人なら結果はこうだろうと思ってしまうとか、無意識のバイアス・偏見が可視化されてくると思う」(岡島氏)という意見もあった。

意思決定の方法を変えるチャンス

コロナ禍ではマイノリティがむしろハンデではなく、武器になることも起こった。育児や介護と仕事を両立する人が、通勤がなくなったことでパフォーマンスを発揮することができた、といったケースだ。

これについて、「先ほどデンマークの話をしましたが、日本でもほとんどの人たちは、マイノリティの存在を当たり前に捉えている。しかし、既得権益を持っている一割ほどの幹部が壁になっているのです」と林氏。

個人がエンパワーされても、意思決定をするのが同じ取締役会や経営会議では何も変わらない。その点、「コロナはチャンス」と岡島氏は指摘する。

「ご高齢の監査役がパソコンを使えないからオンライン会議ができない、となると、初めて社員の中に『うちの会社ってこのままでいいのか?』という意識が生まれるわけです。これは意思決定を自律分散型に変えるチャンスです」(岡島氏)

家族の時間の大切さが浮き彫りに

岡島悦子氏

プロノバ 岡島悦子氏

一方、リモートワークが増えると、ワークとライフを切り分けたワークライフバランスが成り立たなくなる。2歳の娘を持つ岡島氏は、「どの仕事を受けるのか、より線引きするようになった」という。

「個人や家族が内省して、働き方や家族のあり方、そして幸せの優先順位を再定義するいい機会となっていますよね」と岡島氏。

また、ステイホーム中は料理をする人が増えたりと、生活者としての経験が蓄積された。「そういうところからも、きっと新しいアイディアが出てくるはずです」(岡島氏)

地方と都市の関係性が変わる

ワーキングマザーや地方在住者、海外在住者は、オンライン会議の導入によって「気軽に打ち合わせに出られない」というハンデがなくなった。自然が豊かな地方で暮らし、東京の仕事をするという可能性が、コロナを機に、ぐっと身近になったのかもしれない。「自分の好きなところで働きたいという人が増えてくるのでは」と林氏。

「地方だけでなく、世界を含めて3カ所くらいで働くことも可能になると思います」と岡島氏も賛同する。

本能的な欲求に忠実になる

浜田敬子氏

ビジネスインサイダージャパン 浜田敬子氏

林氏は自粛生活の中で、運動したいという欲求が高まり、ジョギングやオンラインヨガを始めたという。家族との時間を大切にする「暮らし」も含め、誰もが本能的な欲求に忠実になっているといえそうだ。

「だからこそ、経営者として考えるのは、家でも仕事ができるのなら、オフィスは楽しくないとダメだ、ということです」(林氏) 。楽しくないオフィスは、もはや行く価値がないのだ。

社会的な自粛を経験したことで、通勤や接待など、「実は嫌いだったこと」も明らかになった。

「今まで会社から言われた仕事を受け身でやってきて、自分の好き嫌いがわからなくなってしまっていた人も多いと思うのです。それが、『あ、私は毎日子どもの寝顔を見たかったんだな』とか、好きなこと、大切なことに気づいたのではないでしょうか」(岡島氏)

「好き」を突き詰め、「得意」を活かす社会に

質疑応答では、大企業の意思決定のモデルは変わるのかという質問に、「時間の問題。ここで変われない企業は死の方向に向かってしまうと思います」(岡島氏)、「そもそも大企業よりも個人や小さなグループでの事業主が増えてくると思います」(林氏)といった意見が出された。

最後に、「サスティナビリティや人生100年、デジタル化社会といった文脈で、もともと変わらざるを得なかった現実が、今回前倒しでやってきたということ。皆がもっと貪欲に、自分の好きなこと、好きな働き方、好きな会社というのを再定義するチャンスだと思います」と岡島氏。

林氏は「男女や障がい者・健常者ということではなく、自分は何が得意で、どうしたら活かせるのかということを、これからさらに考えてみるといいのでは」とまとめた。

「日本の既得権益や歴史も根深いものなので、コロナが終わったら元に引き戻される力も強いとは思います。でも個人的には、自粛中の家族との時間や、優先順位をつけた仕事のしかたは残していきたいですね」(浜田氏)

さまざまな意見が飛び交った今回のセッション。急激に変貌を遂げることもあれば、時間をかけて変わってくることもあるだろう。これからの社会がどうなるのか楽しみになる内容だった。

MASHING UP SALON Vol.1

「The Future of Women's Well-being. コロナ後の世界。これからのWell、これからの社会」

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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