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weでなく、Iを主語にすると見えてくるもの/グループでの対話を通して「普通」を問うカード[後編]

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フィンランドで社会福祉を学び、差別をなくすためのカードツールを開発したおおばやしあや氏。友人の言葉をきっかけに、「SOGI(性的指向・性自認)を哲学するカード『ソジテツカード』」の開発を思い立つ。
前編はこちら→

開発には2年半を費やした。カードで扱ういくつもの「問い」を、おおばやし氏はノートに書き溜めていった。

「子どもから大人まで、誰もが『自分ごと』として扱えるツールにするためには、ぱっと見て誰でも考えられるような問いにしなければいけない。難しい専門用語を使わないように、教材くさくならないように気をつけました。個人の価値観に正解も不正解もないですから。また、誰かを傷つける表現を使っていないかには心を砕きましたね」

はじめは性や性別に寄っていた「問い」は、やがて広く「普通」を問い直す方向になっていく。

「性の多様性を実現しようと考えた時に、単に性別の話をしているだけでは壁を突破できない、と気づいたんです。多様性の実現って、『今までの普通』ではない普通を持つこと。普通って何だろう、何のためにあるんだろう、という問いかけから、自分の価値観に気づいていき、その文脈のなかで、SOGIの普通や当たり前も問い直せれば、と」

Iメッセージを使って話そう

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プロジェクトメンバーたちと(写真中央がおおばやし氏)。

おおばやし氏は有志のボランティアたちとプロジェクトチームを組み、メンバーに細かなヒアリングを行った。企業の人事や社労士、教育現場に携わる人、LGBTQアクティビストと、メンバーは職業もセクシュアリティも多種多様だ。カードをそれぞれどんな場面で活用したいか、ワークショップをどうデザインしていくか。議論に議論を重ね、問いやワークショップの内容を固めていった。

ソジテツカードを使うワークショップは、通常4〜7人ずつのグループで行う。カードに書かれた問い(例えば「『みんな』って、だれのこと?「夢って持たなければいけないの?」など)に対して、自分の思いを言語化し、他の人の意見を聞くという対話を繰り返すことで、思考が刺激され、気づきが促されていく。

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カードを使ったワークショップについての説明(ソジテツのホームページより)。ワークショップは「哲(テツ)」と呼ばれる。

ワークショップにはいくつかのルールが設けられているが、その中のひとつに、「we(私たち)メッセージではなく、I(私)メッセージを使おう」というルールがある。

Iメッセージは、主語が100%自分である言葉です。それに対し、weメッセージは所有権が100%自分ではない言葉。『すべき』『ねばならぬ』、常識や一般論って、誰かと所有権を分かち合っているんですよね。主語を広くしてしまうと、自分に抑圧がかかっていることに気づけない気がします」

例えば、「年頃の女性だったら、ブランドバッグのひとつやふたつ持っていた方がいいよね」と普段何気なく口にしている言葉を「私はいい年だから、ブランドバッグをひとつかふたつ持とうかな」とIメッセージで言い換えてみる。その際、少しでも違和感を覚えるとしたら、それは自分が本当には信じていない概念といえる。

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プロジェクトメンバーによる、開発中のテストプレイの様子。

「自分で『これがいいんだ』と思ってきた考えが誰かからの借り物だったり、今までの人生で積み重ねられてきた偏見だったりするかもしれない。それらの考えが、自分の自然体を知らず知らずに抑圧していることがある。それに気づくと自己肯定感が上がっていくんです」(おおばやし氏)。

「大人なら/子供なら/女なら/男なら、普通は……」。世間はそのような抑圧で溢れ返っている。でも、「この『普通』、 重荷だな」と感じたら手放すという選択もできる。それにはまずは気づくことから始めようと、ソジテツカードは促す。

「私はこれでいい」と言う人を増やしたい

おおばやし氏の活動のモットーは、「みんなの自然体をエンパワーする」だ。2年半かけて集めた質問は、今回の製品化ではとうてい収まりきらなかったという。これから第2弾、第3弾もつくっていきたい、と意気込む。学校や企業、家庭内など様々な場所で、カードが広く活用されるといい——。

「カードを通して答えのない問いと向き合うことで、『私は私。これでいい』って肩の荷を降ろして生きていける人を増やしたいと思っています。性に関しても生き方に関しても、色んな人がいて、色んな正解がある。まずはそれを受け入れていくこと。個を活かし合うって、そこから始まると思うから」

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カードのデザインは、フィンランド在住で知人のイラストレーターに依頼。「多様な人が多面体となり社会を築いていく」というイメージを、ダイヤモンドのモチーフに込めた。

ソジテツカード

写真提供/一般社団法人ウェルビーイングコミュニケーションラボラトリー、取材・文/中村茉莉花(MASHING UP編集部)


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