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MASHING UP SUMMIT 2020

おしんより「悪女」が未来のスタンダード。働く女性のWell-being

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働く女性にとって、「心身が充実し、社会に貢献できていると実感できる環境」とはどのようなものなのだろうか。

「女性のWell-being」をテーマに開催されたカンファレンス、MASHING UP SUMMIT 2020(2020年2月28日、収録で実施)。総括として行われたラップアップセッションには、予防医学研究者の石川善樹氏、少子化ジャーナリスト、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子氏、「ジャパンタイムズ」代表取締役会長の末松弥奈子氏、モデレーターとしてパナソニック コネクティッドソリューションズ社常務の山口有希子氏が登壇した。

「働く女性」が闘う理由

近年、注目を集める「ウェルビーイング:Well-being(人がよりよく生きるとは何か)」という概念。Well-being研究の先陣を切る石川氏は、「Well-beingで重要なのは客観ではなく主観」だと語る。

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予防医学研究者の石川善樹氏。

「分かりやすい例えで言うと、『金持ちな人』がいるんじゃなくて、『金持ちだと思っている人』がいるっていうことだと思うんです。『幸せな人』がいるのではなく、『幸せだと思っている人』がいる。要は本人がどう思っているかなんですよね」(石川氏)

石川氏に対し「じつは私、Well-beingについてあまり考えたことがなくて……」とためらいを見せたのは、起業家であり、日本で最も歴史のある英字新聞社「ジャパンタイムズ」の会長をつとめる末松氏だ。

「周囲からは『いつも闘っている』とか、そういう印象が皆さんあるようで。全然Well-beingじゃなくって」(末松氏)

「Well-beingではなく、Well-fightingですね!(笑)」(石川氏)

「はい、闘いを求めているのかもしれません(笑)。でも、何と闘っているのかといったら、次世代に私たちと同じレベルの苦労をさせたくない。だから闘っているというのがすごくあるんですよね」(末松氏)

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ジャパンタイムズ 代表取締役会長の末松弥奈子氏。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社の常務であり、エンタープライズマーケティング本部の本部長をつとめる山口氏も、「そのあたりは私たち世代共通の課題かもしれない」と末松氏の言葉に共感をにじませる。

「無理ゲー」を押しつけられてきた女性たち

キャリア女性を代表する2人の言葉を受けて「女性のキャリアデザインに対する考え方は、ここ最近で大きく変わってきた」と話すのは、少子化ジャーナリストの白河氏だ。

白河氏は住友商事、リーマンブラザースなどを経て執筆活動に入り、2008年に中央大学教授・山田昌弘氏と『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)を上梓。現在は相模女子大学や昭和女子大学で教鞭を執っている。

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少子化ジャーナリスト、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子氏。

「女性はこれまで、適切な時期にキャリアを早回しで積んで、適切な時期に子どもを産んで育てて、適切な時期に復帰して管理職になれ、みたいな……いわゆる『無理ゲー』的なライフデザインを押しつけられてきたじゃないですか。

でも大学で彼女たちにこういう話をしても、全然響かなくて。『先生、そんなことをなぜ私たちだけに言うんですか? 男の人に言ってください!』と言うんです」(白河氏)

学生の言葉に時代の変化を感じ、自身の目標も変わってきたと白河氏。

今は自分の幸せを自分でデザインできる女の子と、そのパートナーになれる男性を育てたい。石川さんが『主観』と仰いましたが、自分で自己決定できるのがWell-beingだと思っています」(白河氏)

日本女性の「おしん力」

女性がWell-beingを実現するためには、女性が働く、働き続けるための環境をどうデザインするかが重要だ。パナソニックという大企業で「ダイバーシティをどうつくるか」という問題と向き合ってきた山口氏は、「女性を含め、幸せな働き方を探すことがひとつのテーマになる」と語る。

「いまモニターに映し出されているのは、今日のサミットで話題になったキーワードです。末松さん、どれか選んで語っていただいてもいいでしょうか?」(山口氏)

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「重いところからいきましょうか、『忍耐力/おしん力』。これは石川さんの発言があって、セッション前に行った私たちのディスカッションでも盛り上がったんですよね。なぜ日本女性は、こんなに我慢して頑張っているのに長寿なの? って」(末松氏)

「まず日本人の謎というのがあって。タバコも酒も好きな人が多いし、長時間労働でストレスも多い。いわゆる健康行動はとっていないのに、なぜ長生きなのか

とくに日本女性は謎なんですよ。あらゆる指標が世界的にすごく低いのに、なぜか長寿という……。ひとつの見方として、連続テレビ小説の『おしん』のように、それだけ苦労して乗り越えてきているから、年をとってからの苦労も乗り越えられるんじゃないか。そういう『忍耐力/おしん力』が長寿につながっている可能性がある」(石川氏)

日本は2019年のジェンダー・ギャップ指数で153か国中121位と、G7のなかで最低だったわけですが、それは日本の女性が我慢をしすぎたのかなと。ある意味で『おしん力』が社会をそうさせてきたというか、あまり我慢をしすぎるのは悪い面もあるのかなと思うんですよね」(末松氏)

自分優先でスケジューリングするのが自己決定

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貧しさに負けずに戦中・戦後の混乱期を生き抜き、ビジネスでも成功した「おしん」というヒロイン像。母親世代に大きな影響を与えた「おしん力」は、今も生き続けていると石川氏は指摘する。

「先ほど白河さんが、『自分の幸せを自分でデザインする』と仰いました。それは具体的に考えると、自分がしたいことを何よりも先にスケジューリングすることなんです。

僕は人の一週間の過ごし方を研究しているのですが、働く女性、とくに子どものいる方は、自分よりも子どもや家族、そして仕事の時間を優先している。自分の時間をスケジューリングしないんです」(石川氏)

石川氏いわく、働く女性が唯一、自分の時間として組み込みやすいのは金曜日の夜。それで夜更かししてしまい、土日の生活リズムや体調を崩すことが多いという。

「本当なら家族を差し置いても、自分優先でスケジューリングをするのが自己決定です。『自分にとって幸福とは?』と考えると漠然としすぎてしまうけれど、自分にとって『よい一週間』をデザインすることはできますよね。そうすると、自分は本当はこうしたかったんだという気持ちに、女性も男性も気づきはじめるんです」(石川氏)

「ああ、これで働き方が変わるんだなと」

自己犠牲精神が強く、自分よりも夫や家族、仕事を優先しがちな日本人女性。モデレーターの山口氏が「でも男の人にもじつはそういう部分があって、うまく噛み合っていないのでは?」と問いかけると、確かにそうかもしれない、と石川氏。

石川氏の提案は、週1回の家族会議や夫婦会議で、「本当はこういう一週間にしたい」というお互いの理想を話し合うことだ。コロナ対策で外出ができず、家族が家にいる時間が長い今は、ある意味でいいタイミングなのかもしれない──と山口氏も賛同する。

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パナソニック コネクティッドソリューションズ社常務の山口有希子氏。

「オリンピック・パラリンピックではなくて、ああ、これで働き方が変わるんだなと、私も今すごく思っているんです。働く場所や時間に対する固定観念の変化が、こういうことで起きるんだなと。

そして、働き方が変われば暮らし方が変わる男女の意識だけが高くなっても、会社が変わらなければつらいだけですから」(白河氏)

ダイバーシティというけれど、「多様な働き方」がないダイバーシティは絵に描いた餅に過ぎない、と白河氏。かつてフランスで深刻な大気汚染をきっかけにテレワークが広がったように、日本でも働き方改革が本格的に始まるだろうと予測した。

悪女が30年後のスタンダードになる

これから、世界はどうなるのか──。「間違いなく言えるのは、今の常識が非常識になっている」ことだと石川氏は語る。

「象徴的な事例だと思うのは、先日『FRaU(フラウ)』(講談社)という女性誌の取材を受けたんですが。『FRaU(フラウ)』って1991年の創刊号から、テーマがずっと『悪女になろう』なんです。1991年の悪女って、どんな人だと思いますか?

びっくりしますよ。仕事をバリバリやって、夜はお酒を飲み歩いて、休みは海外旅行……それが悪女だった。つまり専業主婦がドミナント(優勢)だったときの悪女なんです。今の時代の悪女が、次の30年後のデフォルトスタンダードになるってことですよ」(石川氏)

悪女と呼ばれることを恐れずに、幸福を自分でデザインしていくことが、Well-beingにつながるのかもしれない。自分の道を切り拓いてきたスピーカーたちの言葉には、未来をよりよく生きるヒントが散りばめられていた。

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MASHING UP SUMMIT 2020

ラップアップセッション:The Future of Women’s Well-being 働く女性を取り巻く課題、未来のかたち

撮影/中山実華

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田邉愛理
学習院大学で日本美術史を学び、卒業後、日本の書・古美術をあつかうセンチュリーミュージアム学芸員として勤務。2004年~2012年まで展覧会音声ガイドの制作・運営に携わり、現在フリーランスライター。展覧会に行くこと、そのあとの寄り道が何より好きです。素敵なイベントやショップ、気になるいろいろをアート情報とあわせてご紹介します。

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