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女の子のスポーツ参加率、実は低い!? 大坂なおみ選手が「プレー・アカデミー」を設立した理由とは

プレー・アカデミー with 大坂なおみ

私がプレーするのを見て、自分も何でもできると思うかもしれない。スポーツをしていて私が学んだのはその事です。3歳の時に初めてテニスラケットを手にして、私の人生は変わりました」

そう語るのは、プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手だ。

2020年8月「ナイキ(NIKE)」は、ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団(以下ローレウス財団)と、ロールモデルとなる大坂選手とともに、助成プログラム『プレー・アカデミー with 大坂なおみ』(以下「プレー・アカデミー」)を立ち上げた。

「プレー・アカデミー」の狙いは、遊びとスポーツを通じて東京の女の子たちの人生を変えること。スポーツには、従来の「性」による固定観念を打ち破り、男女の平等を促進する力がある。

女性コーチがコートに立つ、女の子が参加しやすい包括的なプログラムを作るといったシンプルな行動が、女の子たちに自らをアスリートとして自覚させるインパクトとなるという。

スポーツをやめる女の子は男の子の約2倍

テニスレッスン

Photo by Getty Images

女の子と男の子。習慣的にスポーツをする子が多いのはどちらかと問えば、多くの人が「男の子かもしれない」と思うのではないだろうか。

実際日本において、6歳から18歳までの女の子のスポーツ参加率は、男の子に比べ約20%低い

さらにスポーツをする機会が少ないことや、プログラム内容の不足、女性コーチやロールモデルが少ないことなどを理由に、15歳をすぎる頃からスポーツをやめてしまう女の子は男の子の約2倍といわれている。

世界的に人々の身体活動量が低下し、スポーツの重要性が広く知られつつある今、女の子がスポーツに親しみにくい環境があることは問題だ。

「プレー・アカデミー」では、「ナイキ」が以前から行ってきた「Made to Play」の活動を基盤に、助成金の提供、イベントの実施、コーチの育成などを行い、地域コミュニティ団体をサポートしていくという。

ある体験で気づかされた、ロールモデルの重要性

プレー・アカデミー with 大坂なおみ

ロールモデルの重要性について、「テニスよりも、もっと大きな話なのかもしれない」と初めて思った時のことを覚えていると大坂なおみ選手は語る。

「あるトーナメントに出場した時、ある人が私のところに寄ってきて、その方のお子さんたちも人種が違う親から生まれ、そんな子どもたちが尊敬できるようなロールモデルがいて嬉しいと私に言いました。そして、良い模範になってくれてありがとう、と。正直、その時どう答えたか覚えていません。その言葉にただ驚きました。その後、子どもたちが私のところに写真やサインを求めて声をかけてくるようになった時、胸がいっぱいで、泣きたくなりました。数年前までは私もその子どもたちの一人だったのですから」

あなたが自分らしくあることで、誰かが勇気付けられる

テニスをする少女

Photo by Getty Images

3歳で初めてテニスラケットを持ち、20歳で全米オープン優勝、そして全豪オープン優勝とグランドスラムを2連覇して世界のトップに躍り出た大坂選手。

しかし、女の子たちのスポーツ参加には障壁があり、すべての女の子が自分と同じような機会を得られるわけではない。その現実を知れば知るほど「何かしなくては」という気持ちが強くなったと話す。

「いつか自分に似た人がコートに出るのを見てテニスラケットを手にする女の子がいるかもしれない。人と違っていても良い、他の人が決めた型にはまらず、自分の道を切り開いても良いのだと彼女は気づくかもしれない。プレー・アカデミーを始めるのを待ちきれません。女の子たちが新しいスキルを身につけ、もしかしたら好きになれる新しいスポーツに出会う事を願っています。その結果、人生どうなるか分からないですから」

スポーツと一緒に楽しい時間を過ごし、自信を養い、どんな女の子も出身地や肌の色にかかわらずパワーがあるという事に気づいてもらえたら──と大坂選手。

「子どもの頃、自分がロールモデルになるとは夢にも思ったことがありませんでした。気づいたら彼女たちも、誰かのロールモデルになっている日が来るかも知れません。誰が見ているかも分かりません。あなたが自分らしくしているだけで、勇気付けられる人もいるかもしれないですから」

ジェンダー平等研修を提供する「ナイキ」の取り組み

プレー・アカデミー with 大坂なおみ

「プレー・アカデミー」の基盤となった「Made to Play」は「ナイキ ソーシャル・コミュニティ・インパクト」の活動の一環であり、スポーツと遊びを通して、子どもたちにより健康的で幸福な人生を送ってもらうための取り組みだ。

「ナイキ」は人間の可能性を解き放ち、コミュニティを形成するうえで、スポーツが大きな力を持つことを信じている。

「ナイキジャパン」でソーシャル・コミュニティ・インパクトを担当する森本美紀さん(ナイキ ディレクター、アジア・パシフィック、ソーシャル・コミュニティ・インパクト)は、日本の女の子を取り巻く現状をこう語る。

「遊びとスポーツは生涯にわたり子どもたちに良い影響を及ぼしますが、全ての子どもたちに参加できる機会が与えられているわけではありません。遊びやスポーツを行う多様な機会の欠如、女性コーチやロールモデルが少ないこと、文化慣習上の障壁など、女の子たちはさらに多くの課題に直面しています。私たちは、プレー・アカデミー、そして大坂なおみ選手とのパートナーシップを通じて、この状況を変えたいと考えています」

今後「プレー・アカデミー」は、遊びとスポーツを通じて女の子たちの生活向上に取り組む日本を拠点とした地域団体に、ローレウス財団を通じて資金やジェンダー平等研修を提供していくという。

目指すのは、子どもたちが遊び、走り、飛び跳ねながら、明るい未来を構築できる世界

大坂なおみ選手が加わったことで、その活動にさらなる期待が寄せられそうだ。


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田邉愛理
ライター。学習院大学卒業後、センチュリーミュージアム学芸員、美術展音声ガイドの制作を経て独立。40代を迎えてヘルスケアとソーシャルグッドの重要性に目覚め、ライフスタイル、アート、SDGsの取り組みなど幅広いジャンルでインタビュー記事や書籍の紹介などを手がける。

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