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Conference:MASHING UP vol.3

社会は変わり、教育はどう変わるのか。世界を例に「これからの教育」について考える

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社会の変化に伴って、日本の教育も大幅な変換期を迎えている。それはいいことかもしれないが、結局のところ、自分たちが受けてきた教育は間違っていたのだろうか?

そして、新しい教育は日本の常識をどのように変えていくのか──。

2019年11月開催のビジネスカンファレンスMASHING UP Vo.3では、ジャパンタイムズの末松弥奈子氏をモデレーターに、電通のキリーロバ・ナージャ氏CINRAの杉浦太一氏を招いて、トークセッション「自分たちが受けてきた教育(常識)は正しかったのか?」を開催。

3人が経験した過去の教育を分析しつつ、それぞれが取り組む「これからの教育」について語ってもらった。

ロシアやイギリスなど6か国で教育を受ける

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電通 キリーロバ・ナージャ氏。

電通 クリエーティブ・ディレクターのキリーロバ・ナージャ氏は、旧ソ連のレニングラードに生まれ、両親の転勤について、ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダの6か国で教育を受けたという異色の経歴の持ち主。

電通に入社後、各国での多様な教育についてコラムを連載してキッズデザイン賞を受賞した他、2015年にはコピーライターランキングで世界1位を獲得している。

「小1から大学まで10回以上転校し、小学校の年数は国によって違うので、私は小学校を3回卒業しています。しかもいつも現地校だったので、まず言葉がわからない。言葉がわかったら今度は、前の先生は『これが正しい』と言っているのに、次の先生は正反対のことを言っていたりして、行く先々でまったく違う価値観に遭遇しました」(ナージャ氏)

国によって違う教室の座席や、筆記用具、ランチ、体育の並び方など。

ナージャ氏の経験をもとにした絵本『ナージャの5つのがっこう』(大日本図書)は、「こんな学校もあるんだ!」と、子どもたちの固定観念を覆すものとして評判だ。

産業革命以降の教育様式が覆される時代

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ジャパンタイムズ 末松弥奈子氏。

ジャパンタイムズの末松氏は、子息を小学校3年生からスイスのボーディングスクールに留学させた経験を持つ。スクールに1年間留学させた経験を持つ。そこで、何を育ててもいいガーデンがひとりずつ与えられることや、クラブ活動を学期ごとに変えていいことなど、子どもの興味を満たす教育を通して、自分が受けた過去の教育との違いを実感したという。

私たちが受けている教育は、実はイギリスから輸入されたものだってご存知ですか? かつてはヨーロッパも農業国で、天候に合わせて暮らしていました。ところが産業革命によって工業化が始まったので、毎日、同じ時間に工場に行って、同じ作業を粛々とできる人をたくさん育てないといけなくなりました。それが、大きな教室に集まって限られた時間で授業をする、今の教育プログラムのベースなのです」(末松氏)

しかしこれからは、AIやロボティクスの進化により、そうした画一的な作業ではなく、よりクリエイティブで、人間にしかできない能力が求められていく。だからこそ、教育も大きな変革期を迎えている。

日本の教育は決して遅れてはいない

ここで指摘されたのは、「日本の教育が世界に対して遅れている」と考える必要はない、ということ。たとえば、OECDによる15歳の子どもを対象とした世界共通テストでは、日本は最低でも世界5位から6位という高い結果を出している。

「日本の義務教育は本当にレベルが高いです。さらに、外国人からは『なんで日本はこんなに街が清潔なの?』と驚きますよね。それは、教室で掃除をし、片付けをするということが教育の中にあるから。そうした日本の教育のよさは、世界でとても評価されています」(末松氏)

いいところを残しつつ、新しいものにチャレンジしていく。そして日本の教育の場合、課題は「自分が何を考え、それをどう表現するのか、そしてどう違いを受け入れるか」。そこさえフォーカスできればいいのではないかと末松氏は指摘する。

世界で注目されるデンマークの教育システム

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CINRA 杉浦太一氏。

こうした現状のなかで、世界では新しい教育も出てきている。まずは、カルチャーメディアの運営などを手がけるCINRAの杉浦太一氏が、デンマークの例を紹介した。

「デンマークには『フォルケホイスコーレ』という仕組みがあり、それは高校卒業後、数か月から1年ほど、音楽や料理、スポーツなど専門分野を学ぶことができる“寄り道”のような学校です。その後、大学に行くか、就職するかは自由。デンマーク人は無料で受講できるというのも魅力です」(杉浦氏)

即戦力をオンラインで育てるミネルヴァ大学

次に、ナージャ氏の元に来た2人のインターン生の母校、ミネルヴァ大学について。2014年に創立された大学で、校舎を持たず、テストも行わずに講義はすべてオンラインで行われる。学生は寮で共同生活を送り、4年間で7都市を移動しながら現地の企業、行政機関、NPOと協働して進めるプロジェクトを通して課題解決の手法を学ぶ。そのレベルは「ハーバード以上」といわれ、世界から注目される大学だ。

「ミネルヴァ大学では、従来の大学のように知識を教えるだけでなく、社会で役立つスキルを教えることによって、即戦力になる人材を育てています。次世代のリーダーを生み出すために、何を専攻してもクリティカルシンキング、クリエイティブシンキング、コミュニケーション、インタラクションの4つが身につけられるようになっているのです」(ナージャ氏)

オランダ発の新機軸「イエナプラン」

世界共通の大学入学資格となる国際バカロレアや、モンテッソーリ教育シュタイナー教育を取り入れる教育機関は日本でも増えている。もう一つ、新しい取り組みとして、オランダの「イエナプラン」が注目されつつある、と末松氏。

「社会に出たときには、同じ年齢だけのチーム編成ってほとんどないですよね。だから、学年をミックスしようというのがイエナプランです。たとえば1年生から3年生、4年生から5年生が一緒に学ぶことによって、1年生でもすごく算数に興味があったら、3年生が自分のレベルまで教えてあげることができる。教えることによって、自分の学びを確実にする。そうした多様な学びを実施するイエナプランの学校が、長野県や広島県で出始めています」(末松氏)

思春期の若者に「人生を変える瞬間」を

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スピーカーの3人も、今、未来の教育のための取り組みを進めている。杉浦氏は、思考力や判断力を高め、子どもたちの「人生を変える瞬間」を作りたいと、アーティストや起業家、ビジネスリーダー、研究者など「自分の人生を楽しんでいる大人」たちを招いたオンラインスクール「Inspire Highをスタートさせた。

「13歳から19歳限定なのですが、この時期が実は脳内可塑性といって、脳が一番、変化する時期だということが科学的に証明されています。このときにどんな経験をしたかで、その人の人生のスタンスが変わるのです。そうした大切な時期に、どういうインスピレーションを受けられるか、というのがとても重要だと思っています」(杉浦氏)

アプリを通して第一線で活躍するさまざまな大人と出会い、世界のおもしろさと自分らしい生き方を見つける。ただ講義をするだけでなく、フィードバックも受けることができるという。

クリエイティビティを養うアクティブラーニング

ナージャ氏は現在、「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」 という組織に所属し、さまざまなプロジェクトを担当している。自身の経験から、「答えのない問題や、クリエイティブ教育みたいなものは、大学生頃になって取り組む人が多いですが、もっと小さい、6、7歳の頃にそれに気づけたら子どもたちの選択肢が広がると思い、そういう子ども向けのプログラムを展開しています」という。

ナージャ氏によると、日本の子どもたちにどこの小学校に行きたいか、と聞くと、小学校1~2年生までは9割の子が日本の小学校を選ぶという。しかし高学年になると、多くの子どもが、教室にソファがあってリラックスできるアメリカや、グループでわいわい議論するイギリスの学校を選ぶ。

「その間に何が起こっているのかわかりませんが、私が子どもの頃に転校によって強制的にいろんな学び方を身につけたように、子どもたちが、自分に合う学びとはどんな学びなのかに気づき、その中でクリエイティビティをもっていろんなことができるようになるといいなと思っています」(ナージャ氏)

そうしたクリエイティビティは子どもだけでなく、教員にも求められていて、教員に刺激を与えるようなプロジェクトを用意することも必要だ、と続ける。

日本ならではのボーディングスクールを創立

末松氏は、2020年4月、広島県に全寮制のインターナショナルスクールをオープンさせる。

「海外のボーディングスクールでは、漢字を学びきれないのが残念なところ。そこで、日本ならではのきちんとした漢字の教育、道徳の教育を行いつつ、ほかのカリキュラムを英語で実施するイマージョン教育の学校です。過去とこれからの教育で最も違うのは情報量。さまざまな教育が生まれ、それを知ることができる中で、何を選んでいくかということが新しいチャレンジだと思っています」(末松氏)

過去の教育が間違っているというのではなく、時代に応じて、教育はこれだけ変貌している。

未来の日本の行く先を知る手がかりとして、また、卒業生たちが社会に出たとき、考え方のギャップに戸惑わないためにも、私たちも教育の変化について知っておいたほうがよさそうだ。

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MASHING UP vol.3

社会が変わり、教育(常識)はどう変わるのか

撮影/TAWARA(magNese)

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中島理恵
ライター・エディター。埼玉県出身、広島県在住。編集プロダクション、出版社勤務を経てフリーランスへ。旅、食、建築、インテリア、ビジネス、育児、動物など多岐にわたる記事の執筆・編集、翻訳などを手がける。3児の母。

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